スバルの主力車種、レヴォーグが初めてのフルモデルチェンジを迎えることとなった。プラットフォーム、エンジン、アイサイトなど、すべてが刷新された入魂の1台だ。その進化のほどを、旧モデルと比較しながら探ってみよう。

新型は全長と全幅をわずかに拡大。デザインはキープコンセプト

2020年10月15日に正式発表予定の新型レヴォーグ。

旧型レヴォーグは2014年に登場。2017年に大幅改良を行なった。

まずは、サイズの比較から。旧型は、北米市場からの要求に応えるべくレガシィが大型化したため、日本の環境でも扱いやすいサイズであることを重視。全長4690mmとホイールベース265mmは、それぞれレガシィ(五代目)よりも100mm短いものだ。一方、全幅1780mmはレガシィと同一だったのだが、これはレガシィのユーザーから全幅の広さに対する不満がほとんどなかったためだ。




一方、新型のボディサイズは全長4755mm(従来型比+65mm)、ホイールベース2670mm(同+20mm)、全幅1795mm(同+15mm)。わずかに大型化されたものの、依然として日本でも取り回しのしやすいサイズをキープしていると言えるだろう。また、前後席間は+25mm、前席左右間は+20mmとそれぞれ拡大されており、特に後席足元の余裕が増えているのはうれしいポイントだ。




なお、全高は旧型の標準グレードは1500mm、STI Sportは1490mmだったが、新型では全グレードが1500mmとなっている。

新型レヴォーグ(STI Sport) 全長×全幅×全高:4755mm×1795mm×1500mm ホイールベース:2670mm

旧型レヴォーグ(STI Sport EyeSight) 全長×全幅×全高:4690mm×1780mm×1490mm ホイールベース:2650mm

新型のデザインは、正常進化と言える。旧型のイメージを継承しながら、よりシャープさを増した印象だ。旧型はウェッジの効いた前傾基調のデザインが特徴だったが、新型はさらにそれを強めることで躍動感を表現。また、ヘキサゴングリルの立体感も前後フェンダーの張り出し感も、新型ではより強調されているように見える。

新型のフロントマスクで目を引くのは、ターンランプとポジションランプが一体となったヘッドライトだ。普段はポジションランプとして白く点灯しているが、右左折時などでウインカーを操作するとターンランプとしてオレンジに点滅するというもので、なかなかスタイリッシュな印象をだ。

新型レヴォーグのヘッドライトは、ターンランプとポジションランプが一体式となっている。
旧型レヴォーグのヘッドライト。Cシェイプのポジションランプとウインカーは別体式。

大型液晶ディプレイを採用して先進的なインテリアに

キープコンセプトのエクステリアに対して、インテリアはガラリと変貌を遂げた。上級グレード(アイサイトX搭載車)にはセンターに11.6インチの縦型液晶ディスプレイが配置され、メーターも12.3インチの液晶ディスプレイとなった。物理ボタンは極めて少なくなり、多くの操作はセンターディスプレイをタッチして行う。旧型はアナログ2眼メーターで、車両情報を知るのはメーター中央部とセンターコンソール最上部の小さな液晶ディスプレイが頼りだったのだから、隔世の感がある。

新型レヴォーグのアイサイトX搭載車には、センター部とメーター部の大型ディスプレイが備わる。

旧型レヴォーグは、センターコンソール上部とメーター中央部に小型液晶ディスプレイを配置。

新型レヴォーグの液晶メーター。写真の2眼タイプの他、地図やアイサイトの状態を表示可能。
旧型レヴォーグはアナログ式2眼メーターで、中央に液晶ディスプレイを採用する。

プラットフォーム&エンジンは刷新。走り&燃費性能の進化を実現

プラットフォームは新型で一新された。旧型は四代目インプレッサのプラットフォームがベースだが、フロント周りをWRXと共用、リヤ周りは専用設計としていた。一方、新型は五代目(現行型)インプレッサから導入が始まったスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用し、さらにフルインナーフレーム構造化や構造用接着剤の範囲拡大などを実施。ボディのねじり剛性は従来型に対して、44%も向上しているという。

新型レヴォーグは、フルインナーフレーム化されたスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用。

旧型レヴォーグは新環状力骨格ボディをベースに、高張力鋼板の採用拡大などにより高強度と軽量化の両立を図った。

エンジンは、旧型が2.0Lターボ(FA20)と1.6Lターボ(FB16)の2本立てだったが、新型では1.8Lターボ(CB18)に一本化された。CB18型エンジンは新開発されたもので、FB型よりもロングストローク化が図られている一方で、リーン燃焼を取り入れているのが特徴。最高出力177ps、最大トルク300Nmを発生し、JC08モード燃費は16.6km/Lというスペックで、FB16型と比較すると、それぞれ+7ps、+50Nm、+0.6km/Lほど上回っている。また、全長が約40mm短縮されたのもCB18型のトピックだ。

新型レヴォーグのCB18型エンジン。

■新型レヴォーグのエンジン


1.8L水平対向4気筒DOHC直噴ターボ


・エンジン型式:CB18


・排気量:1795cc


・ボア×ストローク:80.6×88.0mm


・圧縮比:10.4


・最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm


・最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm


・JC08モード燃費:16.5km/L〜16.6km/L


・WLTCモード燃費:13.6km/L〜13.7km/L




■旧型レヴォーグのエンジン


1.6L水平対向4気筒DOHC直噴ターボ


・エンジン型式:FB16


・排気量:1599cc


・ボア×ストローク:78.8×82.0mm


・圧縮比:11.0


・最高出力:170ps(125kW)/4800-5600rpm


・最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1800-4800rpm


・JC08モード燃費:16.0km/L




2.0L水平対向4気筒DOHC直噴ターボ


・エンジン型式:FA20


・排気量:1998cc


・ボア×ストローク:86.0×86.0mm


・圧縮比:10.6


・最高出力:300ps(221kW)/5600rpm


・最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpm


・JC08モード燃費:13.2km/L

トランスミッションは新旧ともにリニアトロニックCVTを採用するが、新型では部品の8割が刷新されている。バリエーターのプーリーとチェーン両面を強化することで、レシオカバレッジは6.3から8.1に拡大。これにより発進加速性能が向上し、新型の0-30km/h加速は2.2秒と、旧型(1.6L車)より12%速くなった。また、レシオカバレッジの拡大は高速巡航時のエンジン低回転化により燃費向上にも貢献している。

■新型レヴォーグ


【変速比(第1速〜第8速)】


4.066〜0.503(マニュアルモード時:1速4.066/2速2.600/3速1.827/4速1.377/5速1.061/6速0.836/7速0.668/8速0.599)




■旧型レヴォーグ(1.6L車)


【変速比(第1速〜第6速)】


3.581〜0.570(マニュアルモード時:1速3.560/2速2.255/3速1.655/4速1.201/5速0.887/6速0.616)

サスペンション形式は両車ともにフロントがストラット、リヤがダブルウイッシュボーンを採用。新型はフロントで25%、リヤで5~10%のロングストローク化を行い、乗り心地が向上しているという。また、新型はスバル車で初めて電子制御ダンパーを採用しているのも注目点だ。

新型の最上級グレード「STI Sport」ではドライブモードセレクトが新搭載されている。従来型のSI-DRIVEはエンジン特性を変更するだけだったが、ドライブモードセレクトではそれ以外にも電動パワステ、電制ダンパー、さらにエアコンまで統合制御しているのが特徴だ。なお、新型も「STI Sport」以外のグレード(GTとGT-H)にはIとSの2モードが選べるSI-DRIVEが備わる。

新型レヴォーグのドライブモードセレクト用スイッチ。
旧型レヴォーグのSI DRIVE操作用スイッチ。
ドライブモードセレクトは「Comfort」「Normal」「Sport」「Sport+」のほか、5名分の登録が可能な「Individual」が選択可能。

「アイサイトX」が新登場。渋滞時のドライブがよりイージーに

また、新型では運転支援システム「アイサイト」も大幅な進化を遂げている。ステレオカメラのサプライヤーが日立オートモーティブシステムズからスウェーデンのVeoneer社へと変更になり、広角化を実現。交差点における右左折時の対向車や横断者、自転車に対してもプリクラッシュブレーキが対応するようになった。また、プリクラッシュブレーキでは衝突回避が困難な場合はステアリング制御も併せて行なってくれる。さらに左右に前側方レーダーを追加することで、カメラで見えない前側方から接近する車両の検知も可能としている。

新型レヴォーグのステレオカメラ。旧型よりも目立たなくなった。Veoneer社製。
こちらは旧型レヴォーグのステレオカメラ。日立オートモティブシステムズ製。

そして、新型では上級版といえる「アイサイトX」も新登場。3D高精度地図データと高精度GPS情報を併用しており、渋滞時にステアリングから手を放すことができるハンズオフアシスト機能を実現。また、停車と発進を繰り返す渋滞でスイッチ操作をすることなく走行も可能だ。また、カーブや料金所へ入る前に減速する制御、ウインカー操作で車線変更のアシストを行う機能のほか、ドライバー異常時に減速・停車させる機能が備わっている。

渋滞時の手放し運転が可能となった新型レヴォーグ。ステアリングや加減速の制御は実にスムーズだった。

なお、アイサイトXは通常グレードに対して35万円高で用意される「EX」グレードに搭載されている。アイサイトX搭載車には11.6インチセンター液晶ディスプレイや12.3インチ液晶メーターのほか、「スバルスターリンク」も追加装備される。

スバルスターリンクは、国内初展開となるスバルのコネクティッドサービスだ。エアバッグが作動する事故が発生した際にコールセンターに自動的に通知したり、緊急通知用のSOSボタンやロードサービスなどを手配できるiボタンなどが利用できる。

ちなみに、新型ではサンルーフの設定はなくなったようだ。開放感を味わったり喫煙時の換気に役立つのだが、最近はサンルーフの需要が少なくなってきたという話もあるから、いたしかたないだろう。

旧型から価格アップが抑えられた「STI Sport」がお買い得か!?

なお、新型レヴォーグは3グレード展開で、それぞれにアイサイトX搭載グレード(EX)が35万円高で設定されている。価格は正式発表前のため明らかにされていないが、以下のようなイメージだ。

・GT 約280万円/GT EX 約315万円


・GT-H 約300万円/GT-H EX 約335万円


・STI Sport 約335万円/STI Sport EX 約370万円



※価格は税抜




一方、旧型の1.6Lモデルの主要ラインナップは、以下の通りだった。

・1.6GT EyeSight 265万円


・1.6GT-S EyeSight 285万円


・1.6STI Sport EyeSight 330万円



※価格は税抜




装備差があるため価格の数字だけで優劣を語ることはできないが、性能の進化や装備の充実度を考えると、新型のコストパフォーマンスはかなり高いと言えそうだ。特に電制ダンパーやドライブモードセレクトが備わる「STI Sport」グレードは先代からわずか5万円程度(予想)の価格アップに抑えられているのが魅力的。旧型の1.6Lモデルでは約30%が「STI Sport」だったが、新型ではその割合はさらに高まるかもしれない。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スバル新型レヴォーグ・新旧比較:ボディサイズは? エンジンは? アイサイトは? 6年分の進化を比べてみた