デビューから4年が経過したGLC/GLCクーペがビッグマイナーチェンジ。最新のインフォテインメントシステム「MBUX」を導入したほか、48Vマイルドハイブリッドモデルも新たに追加される。今回はAMGモデルを中心にレポートをお伝えしよう。




REPORT◉大谷達也(OTANI Tatsuya)


PHOTO◉Daimler AG




※本記事は『GENROQ』2019年8月号の記事を再編集・再構成したものです。

 マイナーチェンジを受けたメルセデスGLCファミリーの国際試乗会がドイツ・フランクフルト周辺で開催された。




 外観上はフロントマスクが最新の“メルセデス顔”に統一されたほか、「話すクルマ」で話題を呼んだ新インターフェイス“MBUX”が搭載されたが、それ以上に重要なのがパワートレインの刷新である。




 今、ヨーロッパのエミッション規制は大きなうねりを見せている。2年後の2021年にはCO2のメーカー平均を95g/㎞以下とする規制が導入されるが、これをガソリン車の燃費に換算すると24.4㎞/ℓに相当する。単一モデルだけでなく、社内平均でこの数値を達成するのは、プレミアムブランドにとって至難の技というよりもほぼ不可能に近い。さらに測定基準も従来のNEDCからより厳格なWLTPに移行するほか、実際の運転状況も勘案した測定方法のRDEも導入されるなど、自動車メーカーには激しい逆風が吹き荒れている。彼らが電動化を急ぐ最大の理由は、この点にあるといって間違いないだろう。




 GLCのパワープラント刷新も、こうした流れの中に置いて見るとわかりやすい。すなわち、2.0ℓガソリンエンジンはベルト駆動の48マイルドハイブリッドシステムであるBSGを搭載してCO2排出量を削減するとともに、ドライバビリティを改善した。



新型GLCには各種操作をタッチ・コントロールボタンで行えるマルチファンクションステアリングホイールを採用。AMG 63 Sのフロントシートはバケットタイプのためホールド性に優れている。

 一方、これまで排気量2.2ℓだったディーゼルエンジンは98%のパーツを新たに新設計にして排気量2.0ℓに改めるとともに、排ガス後処理装置のSCRを2段階に配置するなどしてエミッションを改善。新規制対応への第一歩を踏み出したのである。この結果、ディーゼルエンジンは20年1月にヨーロッパで導入予定のRDE規制をいちはやくクリアしたという。




 最初に試乗したのは新世代ディーゼルエンジンを積むGLC300d。日本市場にはチューニング違いのGLC220dが導入される見通しだが、基本的な骨格は共通なのでパフォーマンス以外の印象は同じと考えていいだろう。




 フランクフルト周辺の街を走り出してまず感じたのは、エンジンがぐんと静かになったこと。ディーゼル特有の燃焼音が小さくなってキンキン音が目立たなくなったほか、アイドリング時の振動も格段に小さくなっている。聞けば、噴射タイミングの見直しが燃焼音の低減に役立っている可能性があるという。パワーの出方もスムーズで、従来型から大きく進歩したことが実感できた。それとともに印象的だったのはエアサスペンションの仕上がりで、ハーシュネスと呼ばれるゴツゴツ感が大幅に改善された一方でフラット感も増した。新型は日本にもエアサスペンションを導入する可能性があるというので、こちらも楽しみだ。

GLC63 S 4マティック+には510㎰/700Nmを発生するAMG GT譲りの4ℓV8ツインターボエンジンを搭載する。

 続いてステアリングを握ったガソリンモデルのGLC300はBSGのアシストでレスポンスのいいドライバビリティを体感できた。ディーゼルに比べればノイズやバイブレーションは圧倒的に小さく、スムーズなドライビングが楽しめる。また、こちらの足まわりは金属バネ仕様だったが、微振動の吸収性、ハーシュネス、フラット感、ロードノイズといった点ではいずれも現行モデルを上回っているように感じられた。




 フラッグシップのAMG GLC 63 Sはドライブトレインやシャシーの電子デバイスを統合制御するようになったことがニュースで、この結果「より正確なハンドリング」が実現されたという。510㎰のパワーは相変わらず強烈で、定評ある4.0ℓV8ツインターボの鋭いレスポンスにも舌を巻いたが、初期型に比べてゴツゴツ感が多少増えたように思えたのはやや残念。一方でハンドリングはステアリングフィールが良好で安心感が強いものだったことを報告しておきたい。

258㎰/370Nmを発生する2.0ℓ直4を搭載するGLC300と245㎰/500Nmを発生するGLC300dが欧州には設定される。

 最後は燃料電池とPHVを組み合わせたGLC Fセルに短時間試乗した。ガソリンエンジンと組み合わせたPHVと異なり、2つのエネルギー源がともに電気モーターを駆動するGLC Fセルの方式は極めて効率が高い点が特徴。また、メルセデスは素早くパワーが取り出せるEVモードを「パフォーマンス優先」、航続距離の長い燃料電池モードを「巡航用」と明確に位置づけている点も興味深かった。




 GLC Fセルは今回が初めての試乗だったが、パワーの立ち上がり方が比較的穏やかなことを除けばドライバビリティは良好で、アウトバーンを含めて違和感は一切覚えなかった。それとともに、他のメルセデスとインターフェイスが共通で、運転支援装置も充実している点に大きな魅力を感じたが、残念ながら現時点で日本導入の予定はないという。

SPECIFICATIONS


メルセデス・ベンツGLC 300 4マティック〈GLC 300d 4マティック クーペ〉


■ボディサイズ:全長4669〈4742〉×全幅1890×全高1644〈1602〉㎜ ホイールベース:2873㎜


■車両重量:1805〈1875〉㎏


■エンジン:直列4気筒DOHCターボ〈直列4気筒DOHCディーゼルターボ〉 総排気量:1991〈1950〉㏄ 最高出力:190kW(258㎰)/5800~6100rpm〈180kW(245㎰)/4200rpm〉 最大トルク:370Nm(37.7㎏m)/1800~4000rpm〈500Nm(51㎏m)/1600~2400rpm〉


■トランスミッション:9速AT


■駆動方式:AWD


■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク


■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ235/65R17〈235/60R18〉


■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:7.4~7.1〈6.0~5.8〉ℓ/100㎞ CO2排出量:169~162〈159~152〉g/㎞
情報提供元: MotorFan
記事名:「 メルセデス・ベンツGLC試乗記