ゴールデンウィークも今日がいよいよ最終日。明日から日常に戻る方も多いと思いますが、おつかれ気味の方は、今日はしっかり休んで、明日に備えてくださいね。

さてさて、太めのもっちり麺に、トマトケチャップの濃厚な風味、具はソーセージにピーマン……といえば「ナポリタン」。西日本などにお住まいの皆さんは、もしかしたら「イタリアン」という呼び名でおなじみかもしれません。喫茶店や洋食屋さん、おうちの定番メニューとして、そして最近では専門店が登場するなど注目を集めているのは、皆さんご存じのとおりです。

ニッポンの洋食シリーズ、今回はナポリタンにまつわるお話をお届けします。

どこか懐かしい味わいが人気のナポリタン


まずは「ナポリタン」発祥のエピソードをおさらい

ナポリタンが考案されたことで有名なのが、横浜にある老舗ホテル「ホテルニューグランド」。

第二次大戦に日本が敗戦したことで、同ホテルは1945年から1952年までアメリカ軍に接収されていました。その当時、ホテルの厨房でアメリカ軍が軍用食として、トマトケチャップを使ったスパゲティを調理していたのだそうです。

戦前から、ヨーロッパ由来の本格的な洋食の伝統を持っていたホテルニューグランド。トマトソース作りのノウハウももちろん持っていました。

「ケチャップで作るより、もっと美味しいものを作れますよ」と考案されたのが、生のトマトを使用し、ハムやマッシュルーム、玉ねぎ、ニンニクなどの具材とオリーブオイルで炒めたソース。これを、ゆでてから数時間冷まし、もっちりさせたスパゲティと絡めて「ナポリタン」が誕生したというわけです。命名の由来は、昔ナポリの屋台で売っていたトマト仕立てのパスタにちなんだと伝えられています。


なぜ、ゆでたスパゲティを冷ましてから使う?

この「ゆでたスパゲティを冷まして置く」やり方、現代の私たちにとってはちょっと不思議に思えますが、当時はポピュラーなやり方だったそうです。そして、実は現代でも意外とこうやってパスタを食べている地域が多いとも言われます。

アメリカの場合、缶詰のパスタが普及していて「歯ごたえのないパスタ」を食べ慣れた人が多かったことが、パスタをゆで置く習慣につながったという話もあります。また、ゆで置きすることで生まれるもっちりした食感が、日本の食文化にマッチしていた、という説もあります。

ともあれ、これらの理由によりナポリタンといえば「ゆで置きしたパスタを使う」ことが当たり前になっていったのです。

スパゲティ缶詰が、ゆで置きの由来?


いまや百花繚乱? 「ご当地ナポリタン」文化

こうして誕生したナポリタンは、「進駐軍文化」に興味津々だった一般市民、そして全国の喫茶店などにまたたくまに広まりました。このあたりのいきさつは、以前にご紹介した「プリンアラモード」(同じくホテルニューグランドが発祥)に通じるところがあります。少し前まで戦争の相手だった、そして今は自国を占領している相手国の文化が、ある種「熱狂的に」受け入れられ、全国に広まっていく……その空気感は、どんなものだったのでしょう。

当時は生のトマトなど手に入りにくかった時代。ホテルで考案されたのは生のトマトを使ったレシピでしたが、一般家庭や喫茶店では、まるで先祖返り(?)したかのように、トマトケチャップが代用品として使われました。そうするうちに、「ナポリタン=トマトケチャップを使うもの」として定番化していったのです。

そしていまや、ナポリタンの世界は百花繚乱。

名古屋など中部地方でおなじみの「鉄板ナポリタン」、焼きそば麺やちゃんぽん麺、沖縄そばの麺など地域色の強い麺を使用した「地ナポ」など、個性ゆたかなナポリタンが登場し、それぞれ独自の進化を続けています。

次にナポリタンを食べる時は、その誕生の背景や、全国に広まったいきさつなどを想像しながら味わってみてくださいね。

参考:小市和雄監修「横浜謎解き散歩-開港・文明開化・中華街から戦争遺跡・ナポリタン・サッカーの神様まで-」(中経出版)

イートナポ「日本全国懐かしくておいしい!ナポリタン大図鑑」(中経出版)

生のトマトを使う? ケチャップを使う?

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 【ニッポンの洋食シリーズ】なぜ全国に伝播した? 昔懐かしナポリタン