サンさんは2年前から「ファッション・グランマ」というグループに参加している。北京の街中をキャットウオークに変えるサンさんらの1分動画とライブ配信に、ファン数百万人が引き付けられている。
エレガントな装いに加え、結婚や愛、人生についての深い知恵を織り交ぜて発信し、今や中国の経済とオンライン文化において不可欠な世代となりつつある。
「若いファンは、おしゃれで楽しい毎日を送っている私たちおばあちゃんを見て、年を取るのが怖くなくなったと言っています」とサンさん。
急速に高齢化が進む中国。政府は引退生活を送る数千万人をどう養うかという大きな問題に直面している。
だがこれは同時に、財政的余裕を持ちつつ老いを迎え、テクノロジーの商機を利用できる高齢者にとってはチャンスとなっている。
そうした高齢者は長寿と娯楽、さまざまな商品を追い求め、みんなと同じようにスマートフォンにくぎ付けになっている。高齢者の年間消費は数十兆円に上ると推計されている。
「ファッション・グランマ」の主要メンバーは、50代後半から70代半ばまでの23人。自分たちが提供する動画のポップアップ広告やライブ配信の製品販売で収入を得ている。エージェントによると、配信開始から1分以内に200個売れた商品もある。
動画は「美は若者だけのものではありません」とか「高齢者だってすてきに暮らせるのです!」といった、視聴者を元気づけるメッセージも発している。
時には家庭内暴力を非難するなど、シリアスなメッセージもある。ある動画では、店の中で恋人の女性をたたこうとした男性の腕を怒った高齢の女性がつかみ、警備員に店から引きずり出すよう合図する。画面には「家庭内暴力は違法です」と文字が現れ、さらに「恥ずべき行為」だと続く。
■「何でも知っている」
1960年代に生まれた中国人は、男性60歳、女性55歳の定年年齢に達する世代だ。毛沢東時代の文化大革命後に高等教育の機会が広がった最初の世代となる。
「この年齢層は(上の世代よりも)裕福で高学歴です」と語るのは、高齢インフルエンサーのソーシャルメディア運営を支援する「北京ダーマテクノロジーカンパニー」のビアン・チャンヨン最高責任者だ。
「そのおかげで、ネットコンテンツから収益を上げる可能性が広がり、質も向上している」と同氏は言う。
さらにビアン氏によると、新型コロナウイルスの流行で、買い物や娯楽を追い求める高齢者のインターネット利用が加速した。
自らの動画チャンネルを持つ「おばあちゃん」ことルアン・ヤキンさん(58)は、「iPhone」を使って、600万人を超えるファンに北京の歴史や文化を案内している。
「年寄りは何も知らないと若い人は思い込んでいるでしょうけれど」とルアンさん。「実際は何でも知っていますよ」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/06/02-13:59)
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記事名:「 中国の高齢インフルエンサー、SNSで大活躍 」