北西部ペシャワルの雑踏でカーンさんが望むのは、喜劇王チャップリンのものまねが、悪名高い混沌(こんとん)としたこの街の住民にちょっとした喜びをもたらすことだ。
チャップリンのトレードマーク的なキャラクターのものまねをしようと思ったのは、病気療養中にビデオで伝説的映画『チャップリンの失恋』を見たことがきっかけだった。
「新型コロナウイルスの流行を忘れるために、チャーリーのように演じて、幸せを広げなければと思った」とカーンさんはAFPに語った。
チャップリンの格好をして、通り過ぎるリキシャ(三輪タクシー)に飛び乗ったり、地元の店主らの邪魔をしたり、時には手にしたステッキで見物人を打ったりする。ガニ股で街をすり歩いていると、ファンに囲まれ、一緒に自撮りをせがまれることもよくある。
「みんなを笑わせ、幸せにし、悲しみを忘れさせたい」
カーンさんの思いは伝わった。
パキスタンで絶大な人気を誇る動画投稿アプリ「ティックトック」へのドタバタ喜劇の投稿は、わずか2か月で85万人のフォロワーと、数百万の「いいね」を獲得した。
しかし、カーンさんもいつも笑っていられるわけではない。パキスタンの多くの人と同じように、新型コロナの影響で経済が悪化し、フルタイムの職に就けずにいる。
チャップリンのステッキが新しい目的をくれたと、カーンさんは話す。
「自分の心配事や悲しみを覆い隠す、それがチャップリンのように振る舞う理由だ」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/02/17-14:21)
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記事名:「 悲しみ隠し、みんなに幸せを パキスタン路上のチャップリン 」