2023年4月5日
早稲田大学
慶應義塾大学

本発表の詳細は、早稲田大学のホームページをご覧ください。
https://www.waseda.jp/top/news/88967

■発表のポイント
・次世代コンピューティングの一つである量子インスパイアード技術※1「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer」※2(以下、「デジタルアニーラ」)を用いた、固体表面への分子吸着の予測に世界で初めて成功
・組合せ爆発を起こさずに分子の吸着配位を高速に探索する新手法を開発
・分子配置の組合せが多い複合材料などにおいて、正確かつ高速に最適な配置を予測することが可能に

早稲田大学大学院先進理工学研究科博士1年の三瓶 大志(さんぺい ひろし)氏・七種 紘規(さえぐさ こうき)氏ならびに同大理工学術院の関根 泰(せきね やすし)教授らの研究グループは、慶應義塾大学理工学部の田中 宗(たなか しゅう)准教授、ENEOS株式会社とともに、次世代コンピューティングの一つであるアニーリング方式に属する富士通株式会社の量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を用いて、固体表面への分子吸着を予測することに成功しました。量子インスパイアード技術を固体表面への分子吸着予測に活用する取り組みは世界初となります。

今回、「デジタルアニーラ」を用いて、組合せ爆発を起こさずに吸着配位を高速に探索する新しい方法を開発しました。本手法では、特に多くの分子が吸着している領域において、従来法よりもはるかに高速に、安定な分子配置を発見できることがわかりました。一例として、従来は38601秒かかっていた16分子の吸着の予測を、準備時間(1回のみ必要)2154秒と、「デジタルアニーラ」による計算132秒だけで完了でき、圧倒的な高速性を示すことができました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202304034542-O1-o64083w5

また、得られた結果を株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社が共同で設立した株式会社Preferred Computational Chemistryが提供する汎用原子レベルシミュレータMatlantisで解析した結果、本手法による予測が正しいことがわかりました。この手法により、特に分子配置の組合せが多い複合材料や大規模モデリングにおいて、正確かつ高速に最適な配置を予測することが可能になります。

本研究成果は、2023年3月27日(現地時間)にアメリカ化学会の『JACS Au』のオンライン版で公開されました。

※1 量子インスパイアード技術
量子現象に着想を得たコンピューティング技術で、現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい「組合せ最適化問題」を高速で解く技術

※2 Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer(デジタルアニーラ)
現在の汎用コンピュータでは解くことが困難な組合せ最適化問題を高速に解く富士通独自の量子インスパイアード技術。https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/index.html

【論文情報】
雑誌名:JACS Au
論文名:Quantum Annealing Boosts Prediction of Multimolecular Adsorption on Solid Surfaces Avoiding Combinatorial Explosion
DOI:10.1021/jacsau.3c00018

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 世界初 次世代コンピューティングにより固体表面への分子吸着予測に成功