*12:30JST スカラ Research Memo(10):2024年6月期は売上増とコスト削減効果により営業利益で2.5倍増を目指す ■今後の見通し

1. 2024年6月期の業績見通し
スカラ<4845>の2024年6月期連結業績は売上収益で前期比1.2%増の12,800百万円、営業利益で同150.4%増の650百万円、税引前利益で同165.1%増の620百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益で420百万円(前期は218百万円の損失)を計画している。売上高はエッグによる全国旅行支援事業に関連した売上が同事業の終了に伴う1,089百万円の減少(一部保守サービスは残る)があるものの、その他既存事業の増収によりカバーする。人材・教育事業やEC事業の2ケタ成長が続くほか、エッグを除くIT/AI/IoT/DX事業や保険事業、投資・インキュベーション事業も増収を見込んでいる。利益面では、これら既存事業の増収効果に加えて、前期に負担増となった共創案件の開発コストや保険事業の構造改革費用等が減少することから大幅増益となる見通し。なお、全国旅行支援事業関連については利益率が低いため、利益へのマイナス影響は小さいようだ。

IT/AI/IoT/DX事業では、共創案件となる「スマートヘルスケアプラットフォーム」や「U-メディカルサポート」「施設予約システム」の展開が注目されるほか、超高齢化社会が進む中で需要拡大が見込まれるフレイル早期発見システム※も注目される。エッグが鳥取県米子市から介護予防事業向けシステムとして受注しており、その他の自治体向けへの広がりが期待される。契約者は自治体となるため予算次第となるものの、同サービスの導入によって「健康寿命の延伸」と「社会保障費の削減」につながる効果が期待できることから、高齢者の多い自治体で今後普及していく可能性は十分あると弊社では見ている。

※パソコンやタブレット端末を使って簡単な設問に回答することでフレイル(健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態)の早期発見が可能となるクラウドサービス。


その他、自治体との共創案件として、2023年5月にスカラパートナーズと岡山県津山市、津山商工会議所、西日本電信電話(株)(NTT西日本)岡山支店、アデコ(株)、AKKODiSコンサルティング(株)、(株)IRODORIの7者が津山市の産業活性化と関係人口の創出を目指し、連携協定を締結したことを発表した(期間は2023年5月22日~2026年3月31日(予定))。津山市が課題として抱えるICT分野をはじめとした労働力不足に対して、域外のIT企業を誘致するワーケーション事業を推進する。スカラパートナーズでは域外企業誘致のためのワーケーションの企画・運営を担当する。

また、同年7月にはデータ連携基盤によるAI分析を行うアレグロスマート(株)との共創により、地域課題の解決策を社会実装するデータビジネスを推進することを発表した。具体的には、アレグロスマートの提供するデータオーケストレーション基盤「Newtroid」を活用して、自治体が抱える社会課題(少子高齢化、人口減少、社会保障関係費の増加)に対して、データを起点に自治体職員等サービス利用者らがノーコードで仮説立案、データ解析、可視化できる環境を最短4週間で構築するコンサルティング及びシステム構築サービスの提供を開始した。今後の展開としては、ふるさと納税システムを全国658の自治体に導入した実績を持つエッグのネットワークを活用し、フレイル早期発見システムと合わせて提案することで、地域の「健康寿命延伸」と「医療・介護費の削減」への貢献を目指す。

人材・教育事業では、新たにキャリア採用支援サービスを開始した。従来は学生向けを対象としてきたが、社会人にも範囲を広げることで一段の事業規模拡大を目指す。また、「さいたまブロンコス」のファンクラブサイトでは会員向けに、スポーツチームの運営に参加できるNFTサービス(NFTを購入することで様々な特典を受けられるサービス)や、NFTを活用したファンタジースポーツ※の開発・運営を予定している。スポーツ領域で蓄積したNFTサービスの運用ノウハウを、将来的に社会解決型事業等の他の領域へと横展開していく考えだ。

※現実世界に実在する選手からドリームチームを編成して各試合、シーズンを通してポイントを競い合うシュミレーションゲーム。


EC事業では、業務効率の向上に向けてトレーディングカードの検品工程でAIを活用すべく現在、メーカーと共同開発を進めているほか、リアル店舗の探索も進めている。また、保険事業では新商品の開発だけでなく、将来的にはペット関連で保険以外の金融サービスを展開していくことも視野に入れている。

投資・インキュベーション事業においては引き続き「逆プロポ」を通じた共創案件の獲得に注力する。また、海外での事業展開も進めている。なお、投資事業に関しては現在、戦略の見直しを進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 スカラ Research Memo(10):2024年6月期は売上増とコスト削減効果により営業利益で2.5倍増を目指す