◆フィボナッチ数列をご存じだろうか。1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377…このような数列である。この数列の特徴は、連続する2つの数の合計が、次の数字になるというものだ。1+2=3、3+5=8、5+8=13のように。そして、フィボナッチ数列の隣り合う数の比は、黄金比1:(1+ルート5)÷2=1.618…に近づいていくということが知られている。55/34=1.617647…、89/55=1.618181…、144/89=1.617877…、233/144=1.618055…、377/233=1.618025…、という具合である。

◆自然界にはこのフィボナッチ数列がよく見られる。木の枝分かれ、ひまわりの種、まつぼっくりの並び方などだ。また、黄金比である1:1.618の比率は最も均整がとれた美しい比率で、従って人間が最も心地よいと感じる比率だという。この黄金比は、古来よりピラミッドやパルテノン神殿のような建造物、ミロのヴィーナスやモナ・リザなど西洋の美術作品に取り入れられてきた。最近ではアップルやグーグルのロゴ・マークにも黄金比が使われている。

◆このフィボナッチ比率や黄金比、相場でもよく使われる。日経平均の史上最高値3万8915円からバブル崩壊後の安値7,054円までの下げ幅に対して、61.8%戻しに当たるのが2万6745円だ。市場ではこの水準がかなり意識されていたが、日経平均はあっさりとこの水準を上回った。さて、ここから先はどうなるだろうか。

◆相場格言に「半値戻しは全値戻し」というのがある。下げ幅の半値戻しを達成したら全値(下げた分すべて)を戻すという意味だ。ところが最近では別の解釈もあって、下げ幅の半値戻しが戻りの全値(=すべて)で戻りもそこまで、という意味にも使われる。「61.8%戻しは全値戻し」という言葉はないが、果たしても戻りもここまでか、あるいは史上最高値まで戻すだろうか。

◆まあ、すぐには判明しないだろう。89年末の史上最高値からリーマン後につけた安値まで20年。その61.8%を11年かけて戻したのだ。ちなみに時間の比率も61%である(下落=230カ月:戻り=141カ月)。そういう歴史的な節目にある相場だ。しばらくはこの水準でステイするだろう。なにしろ黄金比は人間が最も心地よいと感じる比率。相場の落ち着きどころとしても心地よい水準なのかもしれない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:12/7配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【新潮流2.0】:黄金比(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)