先週、世界一早く1-3月期のGDPを発表した中国は、統計始まって以来のマイナス成長に見舞われました。しかし、足元では、逆に、急回復の兆しも見えつつあります。

先週末、贅沢品のLVMHは、「ルイ・ヴィトン」ブランドの中国の4月の売上が前年同期比50%増の勢いだと発表しました。化粧品のロレアルも中国部門が持ち直しているとしています。コロナ後の節約志向を懸念する声も多い中で、贅沢品のリバウンドがこれだけ強いとは意外です。

同じく先週、複数の中国メディアが、「デジタル人民元」が来月にもローンチされそうだと報じました。デジタル人民元の使用方法を書いたモバイル画面のスクリーンショットもネットにアップされました。新型コロナで動きが鈍る先進諸国を横目に、中国がまたも先行しそうです。

最後に、新興国への影響拡大の動きも注目です。新型コロナで新興諸国の財政は窮地に追い込まれつつあり、一帯一路構想下で中国から融資を受けた国の約2割が財政難に陥っているとする見方もあります。かつて中国は、融資の担保としてスリランカの港湾を取得しました。今後も新興国の資産を中国が獲得したり政治的な影響を受けるようなケースが増えるかもしれません。更に、新規の支援資金についても、厳しい財政規律を強いるIMFよりも中国に頼る国も出るかもしれません。

今回のコロナは、中国にとっては、災い転じて他国を出し抜く好機になるかもしれません。日本企業は、政治的な不透明感が強い中国市場への投資は難しいと口を揃えます。しかし、早晩中国のGDPは米国を抜いて世界一となるでしょう。コロナ禍はそのタイミングを早めるかもしれません。中国の成長をいかにして取り込むかは、これまで以上に大きな課題となりそうです。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:4/20配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】新型コロナ猛威の陰で、中国躍進の可能性(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)