■鮮明になりつつある中国の供給過剰感

中国はこれまで、膨大な労働力人口と安い人件費によって、世界中の製造業の製造拠点として経済発展をとげてきた。しかし、「世界の工場」といわれた中国国内の賃金水準は年々上昇しており、製造業のコスト増が顕著になっている。そのうえ、環境問題や食品衛生、知的財産の流出といったリスクがクローズアップされ、さらに不安定な人民元の存在もあって、生産拠点としての中国に対する需要低下の懸念が高まっている。


さらには、習近平政権が掲げた「中国の夢」に端を発する対外強硬路線で生じた地政学上のさまざまな軋轢、そして各国が進めるリスクヘッジであるチャイナプラス1政策が、それに拍車をかけている面も否定できない。


加えて、預金や貸出を主として、中国からの資金流出は加速している。中国経済悪化を懸念した金融機関のロールオーバーや新規貸出の減少、個人の資金流出が増加しているのだ。また、2008年に政府が実施した4兆元の景気刺激策を引き金に、国内の供給過剰感が鮮明となっており、今後どこかの時点で資本ストック調整が大規模に生じる見込みだ。

■進まない消費主導の成長への転換


これまでの中国の高成長は、一貫して投資が主導してきた。しかしそうした投資主導型の成長が足元では限界に達しており、個人消費主導型の成長モデルへの転換が期待されている。また、格差是正のための労働分配率の向上や、企業優遇施策の見直し、さらなる投資抑制の実施など、基本的な構造改革を推進していくことが重要と指摘されている。


しかし、これらは決して容易なことではない。


その背景には社会保障制度への不安や、資金の流動性への制約といった問題がある。社会保障への不安から、個人の資金は貯蓄や現金の形で留保される傾向が強くなり、消費へと回りにくい。


さらに、現状では個人での資金の借入は困難なため、生涯所得に見合った消費より少ない額しか消費できない、というのが中国の現実なのだ。


中国当局はこうした状況を真摯に直視し、解決策を模索していくべきであるはずなのだが、そうした動きはなかなか見えてこない。

■中国政府が発表する統計は信憑性に欠ける

誤解を恐れずに言うならば、経済減速の事実を隠蔽するような動きすら感じられる。それが如実に表れているのが、GDPや外貨準備、個人消費といった、政府発表の数字の信憑性の低さである。

中国国内でも「景気対策で最後に頼りになる官庁はどこか」という問いに対して、「財政省でも中国人民銀行(中央銀行)でもなく、数字をいじれる国家統計局だ」と、笑えない笑い話が流布しているという。

フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議では、中国経済の実態を明らかにするために、これら政府発表の数値について、継続した検証を行っている。本文は一部、『中国経済崩壊のシナリオ』(フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議 著)より抜粋した。書籍では詳細な検証内容を紹介している。

■フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコIR取締役COO 中川博貴
シークエッジグループ代表 白井一成

【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済では第4次産業革命にともなうイノベーションが日本経済にもたらす影響なども考察している。



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情報提供元: FISCO
記事名:「 なぜ中国経済は崩壊の危機を迎えているのか【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】