株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の工場デジタル化市場を調査し、製造現場におけるIoT活用実態やサービス化する製造業の動向、スマートファクトリー/デジタル工場やCPS/デジタルツインへの取り組みなどを明らかにした。ここでは、工場デジタル化市場規模の予測について、公表する。

1. 市場概況

国内の工場では多くの業種・業態において、生産設備・機器の保全やライン稼働監視などで、IoT/クラウド、AIなどを使った収集データからの異常検知・故障監視、稼働監視/遠隔モニタリング、設備保全の高度化、省エネ用途/エネルギー使用量の見える化といった次世代型のメンテナンス導入が始まっている。さらには外観検査など検品や品質保証、高度な自動化/生産最適化、現場作業者の業務支援/研修・トレーニングといった部分でもIoT活用が広がっている。
背景には、近年、大型の製造装置・生産機械や高額な設備には初めから通信機能(IoT機能)が組み込まれ、業種・業態や企業規模にかかわらず、製造装置・生産機械やユーティリティ設備(電気設備、空調設備、給排水設備など)の稼働監視/遠隔モニタリングなどにIoTを活用する流れが広がりを見せていることがある。これらにより、製造現場ではさまざまなデジタル活用が起こっており、2022年度の国内の工場デジタル化市場規模(ユーザー企業の発注金額ベース)は前年度比101.7%の1兆7,040億円と見込む。

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2.注目トピック~CPS/デジタルツインの動向

工場のデジタル化で今後注目されるのが、モノづくりと親和性の高いITテクノロジーであるCPS(Cyber-Physical System:サイバーフィジカルシステム)やデジタルツインである。 IoTの普及により、様々なデータが収集されてクラウド上に蓄積されることで、CPSやデジタルツインの実現性が促進されることになる。
現状では、多くの計測機器やセンサー類、FAカメラが製造ラインに設置され、様々なデータが収集されている。これらのデータがクラウドに溜まることで、よりCPS/デジタルツインの実現に則した体制につながることになる。CPS/デジタルツインを活用することで、フィジカル空間(実世界)のモニタリングや、その収集・蓄積データに基づいた高精度な、デジタル(サイバー)空間でのシミュレーションが可能になる。例えば、収集・蓄積されたフィジカル空間データから将来の故障や変化を予測したり、膨大なデータや事例の蓄積に基づき、顧客に対して異常原因を分析した結果から対処方法のフィードバックをするといった、通常のメンテナンスサービスとは異なるモノ・コト一体型サービスを提供できる。

また、CPSが実現されると、フィジカル空間とデジタル空間を融合した製品開発や製品改善につながり、業務が効率化され、開発時間が大幅に短縮される。他にも、蓄積されたデータがユーザー企業にとって競争の源泉になるため、競争力の向上につながる。さらに、製品の使い勝手を設計担当にフィードバックすることも、低コストで容易に出来るようになる。 今後は製品販売で収益を得るだけでなく、CPS/デジタルツインを活用したユーザー企業へのサービス提供により対価を得るビジネスモデルに転換する製造業も増えていく。

3.将来展望

今後、国策となった「日の丸半導体」による国内工場新設や半導体生産能力の増強方針の他、急激な円安や経済安全保障、中国で事業を展開するチャイナリスクに対応した「製造業の国内回帰」が追い風となってくる。また、国内の設備投資計画は日銀短観によると強めとなっており、設備投資では製造装置・生産機械向けが主体となるものの、当然、工場向けIT/IoT投資にも波及すると考えられる。2023年度の工場デジタル化市場規模を、前年度比103.4%の1兆7,620億円に拡大すると予測する。

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調査要綱
1.調査期間: 2022年12月~2023年3月
2.調査対象: ITベンダー・SIer、機器・装置メーカー、通信キャリア、ユーザー企業及び系列の情報システム子会社、アプリベンダーなど
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話やアンケートによる調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2023年3月30日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】工場デジタル化市場に関する調査を実施(2023年)~国内製造業では設備保全の高度化/次世代型メンテナンスの導入が進展、2023年度の市場規模は1兆7,620億円を予測~