新型コロナウイルス対策で導入され、大量の在庫が問題となった布マスク「アベノマスク」をめぐり、政府の要請に応じて再配布を希望したものの、受け取れないケースが相次いでいることが12日、分かった。所管する厚生労働省が募集時に示していなかった理由で一部を除外しながら、対象者に通知しておらず、問い合わせが多数寄せられているという。 厚労省が再配布の希望者を募ったのは昨年12月下旬からの約1カ月間。在庫約7100万枚に対し、約2億9000万枚分(約37万件)の申し込みがあり、大半の希望に添えない見通しの中、4月から配送を開始した。 この過程で厚労省は、申請時に「リメークや海外送付のため」と明記されていた約3600件(約1200万枚分)を除外した。しかし、発表や連絡をしなかったため、うち約2800件分の申請者は除外されたことを確認できない状態で、同省に問い合わせや苦情が多数寄せられているという。 厚労省は送付がほぼ完了した6月末ごろ、ホームページ上で、「国内でマスクとして活用することが明確な配布希望を優先することとなり、それ以外の申し出については、配布対象外とした」と掲載した。除外例として「ガーゼとして使用」「海外に配布」などを挙げた。 一方で、政府は届け先不在などから最終的に約30万枚が余ったとした上で、「再資源化による処理を行った」とする答弁書を決定している。 東京都世田谷区議の女性は母親と一緒にタオルに仕立てようと、100枚分申し込んだが音沙汰がなかった。「備考欄に『手芸、加工用に使用』と正直に書いたから、はじかれたのか」とため息をつく。 その上で「新たな基準を設けたのなら連絡すべきだ。一方で30万枚も処分しており、国民の善意を踏みにじる行為だと思う」と憤った。 厚労省は「目的外使用の申し込みを除外したことは、ホームページでお知らせしている」としている。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕政府が配布した布マスク「アベノマスク」=2020年4月21日