結成わずか2年でメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド「ポルカドットスティングレイ」が、国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」が主催する「RAGE Shadowverse Pro League 21-22」の公式テーマソングに「ダイバー」(2021年05月26日に発売した 2nd E.P. 「赤裸々」収録)を提供した。「ファンやクライアントのニーズに応えて結果を出す」=「ニーズ至上主義」を掲げるヴォーカルの雫は、もともとゲーム会社のディレクターを務めていた経歴の持ち主でもあるが、彼女は「ダイバー」をいかに作り上げたのか?また、趣味から始まったバンド活動をビジネスにするまでには、どんな背景があったのか。そして、働くうえで何を大切にしているのか。単独インタビューで忌憚なく語ってもらった(前編)。

◇「ダイバー」誕生の経緯とMV撮影

――「ダイバー」を拝聴して、前向きな気持ちにさせてくれる歌詞に、疾走感のある爽やかなメロディがマッチした素敵な楽曲だと感じました。まずは「ダイバー」が生まれた背景を教えてください。

雫:クライアントさんが「RAGE」さんと「Shadowverse」さんということで、オファーをいただいてから、最初にミーティングをさせていただいて。まずターゲット層、「RAGE」を見ている層、「シャドウバース」をやっている層とか、「歌詞に入れてほしい言葉ありますか?」とか、「この曲のどこをどういう風に使いますか?」というところを、けっこう詳し目にお聞きしました。

しっかり回答をいただけたので、それを100%反映できるように頑張りつつ、個人的にもゲーマーだったりするし、応援ソングなので、夢に向かって頑張っている人全般に響く作りにしたいなと思いました。それで言えば、自分もターゲットなので、私も仕事を頑張ってるから、割と自分にも響くようにというか、私情も入れつつ(笑)。「これ言われたら嬉しいな」「頑張りてえ!」ってなるな、みたいなことも考えながら作りましたね。

――歌詞とメロディを作るうえで、あまり悩むところはなかったですか?

雫:歌詞はそんなに悩まなかったんです。けっこう書きやすくて。私は要望をたくさんもらえた方が書けるから。入れてほしい言葉とかも、すごくたくさんいただけたので。「いっぱい入れますね」って。歌詞はつるっと書けましたね。私はメロディから作るんですけど、疾走感のあるやつが得意(笑)。

しかも、esportsの選手の人たちだとか、esportsの選手を志す人たち、夢に向かって頑張る人たちを鼓舞するビート感ってなったら、「ダンスビートだぜ!」って。ダンスビートの疾走感のあるメロディを作るの、世界で一番得意なので(笑)。すぐできたので、できたメロディーに考えた歌詞を入れるだけってなって。歌はすぐできて、メンバーとアレンジを詰めていく方が大変だったんです。

歌詞が、夢を叶えたくて頑張る人の「やるぞ。できる。自分は」っていう気持ちと「でもちょっと難しいかも。無理かも」みたいなネガティブな気持ち、両方あると思っているから、両方書いていました。「Aメロ暗い、Bメロでちょっと頑張るぞってなって、サビでポジティブになる」みたいな構成にしているから、それの落差を作るっていうのは心掛けたんですけど、落差を付けた過ぎて、最初はAメロのメロディが暗かったんですよ。

あまりポップじゃないメロディを作ろうとしていて。そのメロディをメンバーに持っていったら、うまくアレンジがまとまらなくて。「ここ、ちょっとテンション低すぎでは?流石に」みたいなことをメンバーに言われて。「ああ、分かった。じゃあ作るわ」って、その場で作ったAメロが入っています(笑)。

――MV撮影について、こだわった部分や裏話はありますか?

 雫:撮影が終わって、明日に編集なんですけど、今回はesportsとか「Shadowverse」をリスペクトして、戦うMVにしているんですよね。ガチで戦ってて。アクションを初めてやるから、殺陣師の先生とかに入っていただいて。相手役の、自分と同じくらいの背格好の人を、メンバー分用意して。明日以降の編集で、グリーンを着てやってもらっているから、CGで「シャドウ」=「影の魔物」みたいな風合いになる予定なんですけど、それと殴り合いをするみたいなMVです(笑)。

――ステゴロ(素手の殴り合い)ですか(笑)?おもしろいですね!

雫:そうです(笑)。ガチの喧嘩の殴り合いをしていて。やることは、割と企画した時から、「殴り合い一本でいく」みたいに決めてて。1シチュエーションで、衣裳も1パターン。潔い感じで、殴り合いだけで行くみたいなことを決めていたから、やることはシンプルだったんですけど、シンプルに肉体が辛かったです(笑)。死ぬかと思った(笑)。

廃墟みたいなところで、広くて大暴れできるところを探したんですけど、基本的にきれいな美術とかがちゃんと置いてあるような撮影スタジオって、暴れたらだめじゃないですか。だから、最初から荒れているところにしようと思って(笑)。廃墟に、もっとガチャガチャになるような美術を置いて、そこで殴り合いをしたり、演奏をしたり。演奏、ほとんどしていないですけど(笑)。基本は殴り合いのMVを撮りました(笑)。

「ダイバー」MV 【YouTube URL:https://youtu.be/tI_Qw56S00s】

◇「ニーズ至上主義」

――リスナーのニーズを把握して楽曲を制作されているとのことですが、リスナーのニーズも多種多様かと思います。どのようなバランス感覚でリスナーのニーズをまとめ、形にしていくのでしょう?

雫:数ですね。数で見ています。少数派の意見とかもあるけど、そこを拾おうとしていくとキリがないし、あれもこれもって取り入れるのって限界があるじゃないですか。歌詞にぶれが生じるので。自分のことは絶対に書かないけど、曲ごとに主人公のペルソナがあって、一貫した発言をずっとしているっていうスタイルで書かせていただいているので、ぶれが生じない程度に、多そうな意見を取り入れていくみたいなスタイルでやっているけど、そのスタイルを貫きながら、たくさんの人に届かせていくために、すごく曲に振り幅を設けているという感じです。

たまに、ターゲットをすごく狭くして、狙い撃ちするタイプの曲を書いたりするんです。タイアップのときは、ちょっと厳しいですね(笑)。あんまり尖ったアプローチはできないけど、タイアップがついてない曲だと、先日はメンヘラ向けの曲を書きました。サウンド、超かわいい。声も「そんな声、出したことねえよ」っていうかわいい声を作って出して。tTiktokをやっている層に届けたかったので、そういう振り付けを作ったり。歌詞では、彼氏のことを「殺す」とか言えないけど、「殺す」っていう言葉を使わずに…。

――「殺す」を伝える?

雫:そう。6回くらい、歌詞の中で「あれ」してるんですけど(笑)…っていう、メンヘラの女の子の曲を書いたら、メンヘラの女の子にウケてました(笑)。狙い通り、すごくかわいいメンヘラ女子たちが「これわかる」って言ってました(笑)。嬉しい!

―ニーズを形にしていくプロセスにおいて、メンバーの皆さんにはどんな役割分担があるのでしょうか?

雫:マーケ担当は100%私なので、クライアントさんとお話するなり「次はこういう曲を作ろう」「こういうターゲットにしたいんだよね」みたいなところから。「このターゲット層にウケている曲ってこういう曲だね」とか、「BPMこれくらいで、こういうビートの曲がウケているよね」みたいな分析まで私がやって。

それをどういうフレーズ(筆者注:メロディのひと区切り)に落とし込んでいくかとか、どういうアプローチしたらもっとかっこよくなるかみたいなプレーヤーライクなところって、私には一切ないから、メンバーに引き出しを増やしてもらって。そこはメンバーに頼りきりでやっていますね。メンバーに100%フレーズを任せるくせに、好きとか嫌いとかはめっちゃあるから、メンバーは苦しんでます(笑)。「なんか違うね」「来ないね、そのフレーズは」みたいな言い方をするので、みんな困ってますね(笑)。

――明確に役割が別れているということは、バンドのメンバーとしての信頼関係があるということですよね。

雫:ビジネスパートナーっていう感じではあるんですけど、みんな仲良しって感じではないんです。もう、やり合いですね。苦しめ合いみたいな(笑)。

――レベルの高いものを求め合っているということですよね(笑)。

雫:うちのベース(ウエムラユウキ)が、人がいいタイプなんです。口喧嘩とか全然できないみたいな。でっかい力持ちみたいなタイプなんですけど、いつも標的になってます(笑)。ギター(エジマハルシ)は悪魔みたいな性格なので「ゆうさんビビってるの?」「ゆうさん、こんなこともできないの?」「20分で終わらせるって言ったのに」みたいなことを言われ、苦しみながら。極限に一回立たせて、いいフレーズができるまで搾り取るみたいなことをやってますね。

――いい意味で、追い込み合うというか。

雫:そうですね。私はあまり追い込まれたことないんですけど、追い込まれているメンバーがたくさんいます(笑)。

後編に続く

RAGE Shadowverse Pro League 21-22公式サイト:https://rage-esports.jp/league/sv/

RAGE公式サイト:https://rage-esports.jp/

 

取材・文・撮影:岸豊

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 【マガジンサミット前編】ポルカドットスティングレイ・雫が語る「ニーズ至上主義」