コロナ禍のなか、マスク着用の習慣化をはじめ呼吸器感染対策への意識が大きく変わりました。口と鼻は呼吸器感染対策における第一関門。特に口腔内は細菌やウイルスを防ぐ“水際”として注目されています。

従来のデンタルケアだけでなく感染対策の観点からも口腔ケアの重要性を啓発する「オーラルウェルネス推進委員会」が、先ごろ全国の男女528人を対象に行った「口腔ケアについての意識調査」によると、「自宅以外でも口腔ケアをしている」と回答した人は8割にのぼり、新しい生活様式のなかで口腔ケアへの意識の高まりが推察されました。

また「マスクの習慣化によって自身の口臭が気になるようになったか」という質問においては、31.8%から「気になるようになった」と回答があり、さらに「以前から気になっている」と回答した人は34.3%にのぼったそうです。このことから3人に2人が口臭を気にしており、そのうち約半数がマスクの習慣化によるものだと判明しました。

2人に 1 人が実践中の「歯ブラシで舌をみがく」は NG

ちなみに「口臭の主な原因である“舌の上の汚れ(舌苔)”が気になることがあるか」の質問には約半数が「気になる」と回答。そのケア方法について「歯ブラシで舌をみがくことはあるか?」と質問すると、「みがいている」が半数となり「舌苔が気になる」と回答した割合と近いことからも専門家からは“間違った舌ケア”による影響が示唆されました。

この調査結果をうけ、東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之教授は「舌はとてもデリケートなため、歯ブラシで舌をみがいてしまうと刺激が強く、かえって舌を傷つけ炎症のきっかけになる」と指摘。「舌を傷つけることで感染リスクも上がってしまうので、1日1回を目標に「舌専用ブラシ」を使い、朝か夜の歯みがきの後に行うとよい」とアドバイスをしています。

また、「睡眠中は唾液の分泌が減り口の中の細菌が繁殖しやすいため、起床後に行うと良い」とすすめ、個人差はあるが舌ケアを1日1回行った場合、2週間くらいで舌苔が目立たなくなってくるとしています。

口腔ケアのポイントは「舌」と「唾液」

さらに、上田教授は口臭の原因として “舌の上の汚れ”以外に“唾液不足”をあげており、唾液不足の状態では口腔内の自浄作用が働かず細菌が繫殖しやすくなると説明しています。

唾液の成分は99%が水分で、残り1%のなかに抗菌物質や免疫物質が100種類以上含まれています。例えば細菌やウイルスから身を守る抗体 IgA(免疫グロブリンA)などは、ウイルスなどの働きが抑制し感染症にかかりにくくなる働きをします。

舌苔など口腔内の汚れや異物が多すぎると、このIgAの免疫機構が追い付かなくなるため結果として上気道における感染リスクが高まります。そこで上田教授は、自宅以外でも口腔ケアの対策として“キャンディをなめること”をすすめており、最近の研究ではキャンディをなめると IgA 濃度が通常よりも約 3割高まることがわかっているそうです。

なかでもアロマ成分複合体「DOMAC(ドゥーマック)」という口腔ケア成分には IgA濃度を高め舌苔の細菌数を減少させるといった作用があり、実験ではDOMAC配合のタブレットを7日間摂取することで、舌苔を2 割減少させ舌表面の微生物を4割減らすことが明らかになっています。

図左)一般的なキャンディとDOMAC入りキャンディの IgA濃度変化率の経過。図右)DOMAC入りキャンディを舐めた後の舌苔および舌表面微生物数の変化。

さまざまな外敵が身体に入ってくる口は感染対策の水際。日頃からの正しい口腔内ケアが大切です。また、常にマスクを着用していることで口の渇きを感じている人は、キャンディを携帯し舐めることで唾液分泌を促すこともできます。持ち運びが便利で身近なキャンディで、手軽に口腔ケアできるとあれば嬉しいですね。

日経ヘルス
Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 口臭が気になる人の約半数はマスクの習慣化がきっかけ。感染対策で変わる口腔内ケア最前線