果物やワイン、富士山から湧き出る美味しいお水など多くの名産を持つ山梨県。そんな恵まれた自然環境のもと、高品質なブランドづくりだけでなく、SDGsの実現にむけた施策や県オリジナルの品種の開発、食の安心・安全のためのアクション、サスティナブルな活動など様々な取り組みを「おいしい未来へ やまなし」という名のもと行い、全国に先駆けて実施することで今、他県からも注目されている。今回、実際に山梨を訪れその取り組みを見せてもらい味わってきた。

先ず訪れたのは甲斐市にある「黒富士農場」。鶏がストレスなく過ごせるように平飼いで飼育するアニマルウェルフェアを行なっている養鶏場だ。アニマルウェルフェアとは快適性に配慮した家畜の飼育管理のことで山梨県は全国初の独自の認証制度を創設した。

EUやアメリカなどではケージフリー化が進んでいる。日本は遅れをとっていて未だに95%程が従来型ケージとなっていて、養鶏業界の今後はケージフリーが進む変革期を迎えることになる。そのような中、先駆けて行なっているのが「黒富士農場」だ。3代続く養鶏農場には現在7万頭の鶏がいて18棟のなか15棟の鶏が平飼いされている。今後は徐々に全ての鶏をケージフリーにする意向だ。

鶏舎の中にはこのような鶏糞と茶殻を混ぜたものが敷かれていて、糞が勝手に分解されることで掃除要らずになる。また病気の元となる細菌、匂いの抑制にも繋がる。

鶏と人が安心して食べられるものをと「黒富士農場」は遺伝子組み換え食品を使わないなど大豆やとうもろこしを主原料とした有機飼料を導入。またオーガニックラインではオーガニックの餌を使用している。飼料の90%は外注となるが、残りの10%がここで作られ、基本的には食品リサイクルのエコフィードを活用。おからや、米糠がメインで企業が商品を作る中で出た捨ててしまう資源を活用して混ぜたものだ。これをすることで資源の循環にも繋がる。もちろんこの資源は遺伝子組み換えは行われておらず、しっかりとチェックされている。

平飼いで育った鶏による新鮮な卵やオーガニック飼料を食べて育った鶏によるオーガニック卵、そしてバウムクーヘンや燻製卵など様々な商品が販売されていて、「黒富士農場」は山梨県内に3か所の直営店「たまご村」も経営している。(参照:http://www.kurofuji.com)

続いて向かったのは四季折々の花々を楽しめるガーデンもある「ハイジの村」(北社市)。ここでは館内にあるレストランで特別に山梨の名産を使ったコース料理をいただいた。

山梨県ブランド銘柄の甲州ワインビーフのポシェや甲州地どりのディアブルとのコラボレーションなど山梨の名産品を使った豪華な料理が登場。更には山梨県の素材を使用した川越シェフ考案の「やまなしナポリタン」も味わった。

山の幸のイメージが強いが、「富士の介」というキングサーモンとニジマスを交配した山梨オリジナルの魚もあり、そちらのミ・キュイなども料理に並び、臭みもなく淡白で美味しかった。

ミネラルウォーター生産量全国1位の豊富な水が育む山梨の逸品といえばワインは欠かせない。今回はこの料理に合うマスカット・ベーリーAの赤ワインや白の甲州ワインが用意されマリアージュを味わった。

続いて訪れたのは年に1万2千本のワインを造るワイン通にも愛されるブテックワイナリー「ドメーヌヒデ」(南アルプス市)。代表が全国46カ所の果樹畑に水をまき、最も水はけのいい土地として選んだ土地だ。このような土地は葡萄が病気になりにくく、地中深くに葡萄の根が行き渡り、高級なワインが生まれるとされている。

代表は環境活動にも興味を持ち、畑には化学肥料を使っていない。更には世界の土壌の表層の炭素量を年間に0.4%(4パーミル)の増加をさせれば、人間の経済活動によって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにすることができるという考え方に基づく国際的な取り組み「4パーミル・イニシアチブ」にも賛同し、地球温暖化対策などに繋がるアクションを取り入れている。その一つとしては畑から集めた枝を炭化させその炭を土壌に投入しているものだ。そのことにより土壌に炭素を貯留することが可能となり微生物の働きを活性化させるなど土壌改良もある。更にワインの搾り粕を畑に戻すなどしてワイン堆肥によるボタニカル(植物由来)循環型農業のモデルを完成させた。

今回はオレンジのような酸味もあるさっぱりとしたピノ・ノワールの他にジビエに合う赤ワイン「ぶち」などをジビエと共にいただいた。

山梨県は安全・安心なジビエを目指し、県独自の「やまなしジビエ認証制度」を創設し、鹿肉のやまなしジビエの認証を行なっているほど鹿肉の名産地。今回は特別にワイナリーで焼きたての新鮮な鹿肉のソーセジやロースなどのジビエが振る舞われ、こちらでもマリアージュを楽しんだ。臭みもなく、ロースは意外にも柔らかいので驚くほど食べやすい。脂肪が少ないヘルシーな鹿肉だが、ソーセージは程よいジューシーさもありお酒のおつまみにぴったりだ。小鹿を1本、削ぎ落としながら焼いたお肉は新鮮だからこそ素材の味が引き立ち塩胡椒のシンプルな味付けでも楽しめる。この日はなかなか食べることができない貴重部位の胸骨回りのお肉が振る舞われるなど、ジビエの新たな魅力に出会えた。山梨県内では認証を受けたジビエ料理が食べられる店舗も多々ある。(参照: https://www.pref.yamanashi.jp/nou-han/gibier/gibier_fair2020.html )

「ドメーヌヒデ」からや移動中も富士山がくっきりと眺められ、天気がいい日は雄大な自然を見渡せる。そんな雄大な自然で育った山梨の食や全国で先駆けて行われているサスティナブルな活動は今まで知らない新たな山梨の魅力に繋がりそうだ。

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 平飼い卵やワイン、ジビエと山梨県の新たな食の魅力に迫る!サスティナブルで安心安全な食への取り組み「おいしい未来へ やまなし」