2022年度の「世界自然写真大賞(World Nature Photography Awards:WNPA)」の受賞作品が発表されました。

WNPAは”世界最高の自然写真”を決めるコンテストで、今年で4度目の開催となります。

1年の間に世界中から応募された数千点の作品から、最も印象的な自然写真を部門ごとに3つ選出し(金・銀・銅メダル)、また全作品でのグランプリも決定します。

さて、今年のグランプリに輝いたのはどんな作品でしょうか?

部門別の受賞作品と合わせて紹介していきます。

目次

  • 2022年度「世界自然写真大賞」のグランプリは?

2022年度「世界自然写真大賞」のグランプリは?

今年のグランプリに輝いたのは、ドイツのイェンス・カルマン(Jens Cullmann)氏が撮影した「Danger in the mud」でした。

この作品は、アフリカ南部のジンバブエ共和国にあるマナプールズ国立公園(Mana Pools National Park)で撮影されたワニの写真です。

Credit: Jens Cullmann/WNPA(2023)

カルマン氏いわく、同公園にある最も大きなため池が長期の干ばつで乾燥し、一面が泥になっていたときに撮影したものだという。

同地は乾季になると気温が45度にもなり、ワニは冷えた泥の中に身を埋めて体温を下げようとします。

また体内に脂肪を蓄えておくことで、1カ月間も何も食べずに生き延びることが可能です。

このプロセスは「冬眠(hibernation)」に対して「夏眠(aestivation)」と呼ばれます。

ひび割れた泥の中にらんらんと光る黄色い瞳がとても不気味な一枚です。

哺乳類(Mammals)部門

続いて、哺乳類部門の金メダルを受賞したのは、日本の写真家であるオガタ・ヒデトシ氏(Facebook)が撮影した「Playgroup」です。

こちらは瀬戸内海に浮かぶ淡路島にて、授乳期に6頭のニホンザル(学名:Macaca fuscata)が身を寄せ合う様子で、めったに遭遇できない光景だといいます。

Credit: Hidetoshi Ogata/WNPA(2023)

最初に母ザルとその赤ちゃんが互いに抱き合い、そこに集まるように他の仲間も抱擁を始めるという。

ときには30匹以上のニホンザルが一堂に会し、グルーミング(毛繕い)や抱擁行動を行うそうです。

なんとも心温まるひととき…

両生類・爬虫類(Amphibians and reptiles)部門

両生類・爬虫類部門の金メダルは、こちらも日本出身の写真家であるイクマ・ノリヒロ氏が撮影した「Ride on you」です。

ここでは北陸〜紀伊半島にかけて生息するナガレヒキガエル(学名:Bufo torrenticola)のつがいが背中に乗って、とてつもなく長いヒモ状の卵塊を見つめる姿が捉えられています。

Credit: Norihiro Ikuma/WNPA(2023)

場所は三重県の尾鷲(おわせ)市にある山の中で、産卵の時期にだけ川に降りてくる貴重な瞬間とのこと。

ヒモ上の卵塊には約2500個の卵が入っているという。

わが子の誕生を待ち遠しく思っているのでしょうか?

節足動物(Invertebrates)部門

節足動物部門の金メダルは、スペインの写真家であるハビエル・ヘランツ・カセラス(Javier Herranz Casellas)氏による「The ghost of the rocks」です。

こちらはスペインに属するラ・ゴメラ島で撮影されたアカテガニ(学名:Grapsus adscensionis)が岩場で餌を探しているときの様子。

Credit: Javier Herranz Casellas/WNPA(2023)

白い煙のようなものは岩の上を滑るように流れる海水で、それがカニを包む薄膜のようになっています。

まさにタイトル通り、”岩場に現れた幽霊(The ghost of the rocks)”のようです。

自然芸術(Nature art)部門

自然芸術部門の金メダルに輝いたのは、イスラエルの写真家であるトム・シュレシンガー(Tom Shlesinger)氏が撮影した「Underwater colorful snowstorm」です。

こちらは海底のサンゴが新たな命を生み出そうとする幻想的な瞬間を捉えた奇跡の一枚です。

Credit: Tom Shlesinger/WNPA(2023)

サンゴは写真のように、多くの個体が卵と精子をいっせいに放出して、それらが海中で受精し、新たな生命として海底に着生します。

しかしサンゴの産卵は、年に一度、特定の月、特定の日の夜のわずか数分の間に行われるので、産卵の瞬間を捉えるのは至難の業とされています。

忍耐強く自然を見つめる者だけが、この瞬間に立ち会えるのです。

人と自然(People and nature)部門

人と自然部門の金メダルは、ノルウェーの写真家であるヴァージル・レグリオーニ(Virgil Reglioni)氏が撮影した「The guts」です。

これは約30メートルの深さがある氷河の中から満点の星空を捉えた一枚です。

Credit: Virgil Reglioni/WNPA(2023)

レグリオーニ氏いわく「この写真の目的は、自分の限界に挑戦して、限られた人しか体験できない夜の世界を写真に収めること」だったという。

「この暗い氷河の怪物の中に入り込むほど、恐怖が湧き上がってくると共に素晴らしい気分に包まれた」と話しています。

地球の景色と環境(Planet Earth’s landscapes and environments)部門

地球の景色と環境部門では、アメリカの写真家であるジェイク・モッシャー(Jake Mosher)氏の「The Grand Tetons」が金メダルに輝きました。

このファンタジー世界のような絶景は、米ワイオミング州にある標高4197メートルの山「グランド・ティトン(Grand Teton)」にかかる天の川を撮影したものです。

Credit: Jake Mosher/WNPA(2023)

モッシャー氏は2021年6月17日に、グランド・ティトンの手前にある標高3400メートルの山に登って撮影に挑んだという。

さらに予想外なことに、天の川の下、地平線の向こうから緑色に輝く「大気光(airglow)」が現れました。

大気光は、地球の大気が起こす弱い発光現象であり、オーロラとは違います。

氏は「グランド・ティトンの景色は過去に何万回となく撮影されていますが、その中でも特別な一枚になりました」と話しています。

生息地の動物(Animals in their habitat)部門

最後に紹介するのは、生息地の動物部門で金メダルに輝いた「The world is mine」です。

こちらはアラブ首長国連邦の写真家であるサッシャ・フォンセカ(Sascha Fonseca)氏による一枚で、ヒマラヤ山脈の高地に現れたユキヒョウ(学名:Panthera uncia)を写しています。

Credit: Sascha Fonseca/WNPA(2023)

この写真は、ヒマラヤ山脈にかかるインド北部のラダック地方の高山地帯で、約3年に及ぶデジタル一眼レフカメラでの撮影プロジェクトで捉えられました。

ユキヒョウは野生のネコ科動物の中で最も撮影が難しい動物の一種として有名です。

人に対して警戒心が強く、今回も現地にセットした無人カメラで偶然に撮影されました。

銀世界を闊歩するユキヒョウの姿は、息を呑むほどの神々しさです。

この他にも数多くの素晴らしい作品が紹介されています。

各部門の銀メダルと銅メダルと合わせて、すべての受賞作品がこちら(Our 2022 winners:WNPA)からご覧いただけます。

全ての画像を見る

参考文献

A creepy crocodile and glacial ‘guts’among stunning winners from nature photography competition https://www.livescience.com/a-creepy-crocodile-and-glacial-guts-among-stunning-winners-from-nature-photography-competition Our 2022 winners(WNPA) https://www.worldnaturephotographyawards.com/winners-2022
情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 2022年度の「世界自然写真大賞」のグランプリ作品が決定!