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旅は、自分にとって快適なものが何かを教えてくれる。映画『Red』三島有紀子監督×映画ソムリエ・東紗友美さん対談




はじめに


最新作『Red』の公開を2月21日に控える映画監督・三島有紀子さんと、以前から親交のあった映画ソムリエの東紗友美さん。1月24日に発売した書籍版「旅色」では2人の“宿映画”対談を掲載していますが、誌面には載せきれなかった面白い話がまだまだたっぷり。世に出さないともったいない! ということで、ここではお2人の旅にまつわる話をお届けします。

取材・文/小林未亜、写真/高嶋佳代、ヘアメイク/市橋由莉香(三島有紀子)、スタイリング/世良啓(東紗友美)
旅の醍醐味はコミュニケーション

旅の醍醐味はコミュニケーション


▲三島有紀子監督(右)と映画ソムリエ・東紗友美さん(左)

東:三島さんは、旅行ではどちらに行かれることが多いですか?

三島:映画祭によんでいただける場所に行くことが多いですね。この間も『幼な子われらに生まれ』が上映されていたイギリスを、列車で縦断しました。街を散歩して、教会も建築も好きなのでふらっと教会に寄って、そこでコーヒーとサンドイッチを食べて、本を読んで……というのが最高に豊かな時間ですね。

東:その土地の空気を感じるような過ごし方なんですね。

三島:観光地に行くと「見た」という経験だけで終わってしまうことが多いのですが、何を見て、何を感じたのかを大事にしたいと思うんです。SNSでも、見たことや感じたことを日記代わりに書いて、心にとどめるようにしています。

東:旅のスケジュールを詰めすぎちゃうと、吸収率が悪い気がしますよね。観光地をまわるよりも、その土地の生活に入って行く方が、現地の肌感を覚えておけるのかもしれません。

三島:自分の映画を上映してくださっている映画館の近くのバーで、お客さんと一緒に飲んだこともあります。夜中の2時くらいからずっと映画の話で盛り上がりました。映画を作っている自分にとって、そういうことがご褒美かなと思うので、映画祭には極力行くようにしているんです。

あとは、自分がその土地でどうしてもやりたいことや好きなことを話すと、いろんな情報を教えてくれるんですよね。台湾に行った時は、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』という映画が好きでロケ場所に行きたいと言っていたら、「コンサートのシーンのロケ場所が近くにあるよ」と教えてくれて。早起きして行きました(笑)。光の入り方がとても美しいところで、お掃除されている女性がいて、いい画だなと思って背姿を動画でずっと撮っていました(笑)。そういう時間がたまらなく好きですね。

東:旅先で「これからここに行くんです」と言うだけで、パンフレットに出ていない情報とかも教えてくれそうですよね。

三島:旅をしたら、いろんな人と話した方が面白いなと思います。道が分からなかったらすぐ聞きますし。イギリスなんて特に男性は紳士に育てられているので、とても丁寧に教えてくれて、ある程度分かるところまで案内してくれたりもするので、みなさんオススメです(笑)。コミュニケーションは旅の醍醐味ですから。

東:みんなしたいことが多すぎるから、同世代の女子の間でも、自分を癒やすことだけを目的にした、“リトリート旅”とかが流行っていて。旅って本来それ自体が目的なのに「癒やすことだけが目的」という名目をつけないと、みんな予定を入れちゃうようになっていますよね。現地を見るとか、その国の空気を感じることを忘れていたなと改めて思いました。

そういえば、雨戸が割れていたペンションとかはよく覚えているのに、いいホテルに泊まったことは不思議と忘れちゃうんですよね。「あの時どこに泊まったっけ?」って。 あれ、何なんでしょう。

三島:困った状態になった方が、人との関わり合いが増えるんですよね。自分ひとりじゃどうにもならないことが増えていくと、お互いに助け合わないと生きていけないので。そういう方がより印象が深く残りますよね。
映画のロケ地巡りを、旅のきっかけに

映画のロケ地巡りを、旅のきっかけに


三島:ロケ地巡りも旅としては面白いですよね。パリに行った時、『ポンヌフの恋人』という映画に出てくるポンヌフ橋に行って、映画の真似して橋をターッて走りました。別に誰も見てないんですけど(笑)。

東:素敵です(笑)!

三島:2月に公開される映画『Red』は新潟で撮影させていただいたんですが、いい場所なのにあまり知られていないところがあって、そういう所をロケ地に選ぶことが多いですね。映画を見て「いいところだな」と感じていただきたくて。『繕い裁つ人』で中谷美紀さんが演じる市江さんの洋裁店は、川西市の郷土館をお借りして撮影させていただきました。建築として素晴らしいのに、全然人が来なくてつぶされてしまいそうだったそうなんです。でも、あの映画を作って、たくさんの方が来てくださり、保存できるようになったと郷土館の方からお聞きしました。いいものが残るとほんとに嬉しいです。

東:いろんな方の人生を変えてますよね。ほかにも、日本のロケ地でよかった場所はありますか?

三島:自分の作品でたくさんありますが……『しあわせのパン』の洞爺湖もとてもいい場所だと思います。北海道の月浦や洞爺湖には今でも毎年行っているんです。

東:ロケ地巡りがすごく好きなのに、実は、『しあわせのパン』は初めてロケ地巡りに行きたくないと思ったんです。なぜかというと、あの場所に(大泉洋と原田知世が演じる)2人がいなかったら落ち込みそうだなと思って……。そうやって足を踏み出せないくらい、あの2人は実際にいてほしいというか、もう自分の友達のような感覚でもあるというか……それくらい大好きな映画なんです!

三島:うれしいです(笑)。
三島監督が旅に出る理由

三島監督が旅に出る理由


東:今日お話ししたなかで、三島さんと旅がこんなに近い関係にあったというのは発見でした。

三島:小さい頃から、いつ死ぬかわからないと思いながら生きているので、今楽しめているかどうかを大事にしていて。楽しめていないな、不快だなと思ったら、快適な方に向かうようにするんですけど、その方法のひとつが旅です。旅は、自分にとって快適なものが何かを教えてくれると思うんです。頭がまとまらなくなって、どんどん複雑になってしまった時にも、区切りをつけるために生活のサイクルを止めて、さっさとどこかに行っちゃったり。

東:さっさと(笑)。私、月に一度のマッサージでもあまり疲れが取れなくて、結局心が持ち直せてないのかも。だったら思い切って旅に出て、心を洗った方がいいのかもしれませんね。

三島:いろんな情報が入ってきて、みんながいいと言っていると「いいのかもしれない」と思いやすい時代になっています。旅をすると、自分が本当にいいと思うのは何なのかわかる。それは、一番豊かな時間じゃないかなと。

旅に出たら、オススメはiPhoneを旅館に置いていくこと。とりあえず置いて出掛けるというのは、けっこう大事かなと思いますね。

東:撮影することにとらわれて、あとからその場所の広さすら忘れちゃっている自分に驚愕することがありますよね。

三島:旅は、なるべく自分の心で感じることが多い方がいいですよね。
◆三島有紀子監督 最新作『Red』

◆三島有紀子監督 最新作『Red』


監督:三島有紀子 原作:島本理生
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗ほか
配給:日活
2020年2月21日(金)新宿バルト9他全国公開
©2020『Red』製作委員会

◆三島有紀子(みしま・ゆきこ)
『幼な子われらに生まれ』(2017年)で第41回モントリオール世界映画祭審査員特別大賞を受賞。主な監督作は『しあわせのパン』、『繕い裁つ人』、『少女』など。美しい映像と、人生の現実に起こる苦悩や哀しみとのぶつかり合いを浮き彫りにするスタイルの作品が多い。

◆東紗友美(ひがし・さゆみ)
映画ソムリエとしてテレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版で「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」も連載中。

おわりに


三島監督作品への愛を語る東さんを、微笑ましく見守る三島監督。三島監督が話す旅エピソードの数々に、目を輝かせて聞き入る東さん。取材とは思えない、とても幸せな時間が流れていました。書籍版「旅色」では、三島監督の映画『しあわせのパン』や『Red』の話、そして宿映画の魅力について語ってくれているので、そちらもぜひご覧ください!

1月24日(金)発売 書籍版「旅色」の内容はこちらから




映画『Red』主演 夏帆さんインタビュー 月刊旅色 1月号 あの人の旅カルチャー




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