はじめに

天皇陛下の即位で皇居周辺をニュースなどで目にする機会が多い令和元年。緑豊かで広く抜けたその先に見えるのは、都心のビル群。新旧入り混じっているけれど、やっぱり高度成長期に建てられたビルはかっこいい! 皇居周り、北の丸公園近辺のいいビルをご紹介します。少し気が早いけど、靖国神社への初詣や一般参賀の帰りにビルさんぽをしてみては?

Text&Photo: 西村依莉 皇居のほとりに輝き建つ、白い2塔 パレスサイドビル

皇居のほとりに輝き建つ、白い2塔 パレスサイドビル

1966年竣工の巨大なパレスサイドビルは、毎日新聞社の東京本社も入居しているため、地下に印刷工場(現在は別の印刷工場が稼働中)を備えています。竹橋駅と直結なので誰もが気軽に入れて、テナントの飲食店でランチがてら、飲み会がてら、いろんなディテールをじっくり見られるのが嬉しい。まず、建物の両サイド、対になって建つ白い円筒コア(建物の中央部の階段やエレベーター、トイレなど、共同部分の集まっている場所のこと)が素敵。 アルミ鋳物のルーバーをあしらった窓の几帳面なグリッド(直線が縦横に規則正しく並んだ構造のもの)感もかっこいいし、外壁の一部にはパレスサイドビル用に開発した特殊レンガを使用していて、見る人を飽きさせません。 円筒部分の丸いエレベーターホールは宇宙ステーションさながら。 1階と地下を結ぶ階段は手すり周りのデザインが煌めく銀河のようでクール。内観の素晴らしいディテールは拙著(共著)『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(大福書林)でじっくりご紹介しているので、ぜひご一読を。


◆パレスサイドビル
住所:千代田区一ツ橋1-1-1
電話:03-3213-4321
休館日:日曜・祝日 全面六芒星にくり抜かれた圧巻の外観 科学技術館

全面六芒星にくり抜かれた圧巻の外観 科学技術館

日本武道館のそばにある科学技術館。日本武道館もかっこいい建物だと思うのですが、誰しも一度は何かで見ているはずなので割愛(見ていないなら科学技術館と合わせて入念にチェックを)。 1961年に竣工されたこの建物の最大の特徴は、全面を覆う六芒星モチーフのプレキャスコンクリート工法(コンクリート部材が運搬可能な大きさであらかじめ工場においてつくられる工法のこと)のファサード。 設計した平山嵩氏のアイデアで、階数などの全貌を隠すことでより大きく見せるという効果を狙ってのこと。上から見ると、ただの四角い建物ではなく、5棟の建物が放射状に建てられているので、ぜひ中に入って構造の面白さを確認していただきたい! 中の展示は童心に帰って楽しめるものばかりです。このビルは1979年に公開された沢田研二さん主演の『太陽を盗んだ男』の最後の見せ場の舞台にもなっていて、沢田研二さんと菅原文太さんが対峙して死闘を繰り広げた重要な場所です。ちなみに『シン・ゴジラ』のロケでも使われているので、映画ファンの間ではちょっとした聖地。中の展示も楽しいので、親子でもデートでも楽しめます。


◆科学技術館
住所:千代田区北の丸公園2-1
電話:03-3212-8544
営業時間:9:30〜16:50(入館は16:00まで)
定休日:不定休(詳しくは科学技術館休館日カレンダーを参照) 塔屋とタイルづかいにも注目 九段ビル

塔屋とタイルづかいにも注目 九段ビル

靖国神社の前に佇む九段ビルは、まず階段室の塔屋(建物の屋上から突きだした部分のこと)のロゴが気になります。これはビルのオーナー・日建の社章。ファサードの庇は、このモダンなハニカム(正六角形を隙間なく並べた構造のこと)モチーフの社章を半分にしてくっつけているようなデザイン。 極端にせり出した台形の庇がかっこいい! 写真には写っていませんが、タイルづかいの腰壁がアクセントになっていて、重厚さを加えています。 特筆すべきは入り口の壁のタイル。大小様々なサイズの青い濃淡が美しく、赤いタイルを挿し色にしたセンスに思わず唸ります。実はこのタイル、国会図書館にも同じものが使われていて、貼り方が少々異なるので見比べると楽しい。このビルは、ビルオーナーの祖父、松井金蔵氏と前川國男設計事務所の田中誠氏の共同設計ということですが、田中氏は国会図書館の設計も手がけているため、そのつながりで同じタイルが使われているのでしょう。1階と2階には民藝の器を扱う『暮らしのうつわ 花田』が。伝統技法を駆使したかっこいいものばかりなので、ビルともども眼福です。買い物がてらビル見を堪能するのもいいですね。


◆九段ビル
住所:千代田区九段南2-2-5

◆暮らしのうつわ 花田
場所:九段ビル1、2階
電話:03-3262-0669
営業時間:月曜〜土曜10:30〜19:00、祝祭日11:00〜18:30
定休日:日曜、年末年始

おわりに

今回は竹橋駅で降りて、北の丸公園を経て靖国神社方面へ抜けるコースをイメージしてご紹介しました。九段界隈は目まぐるしく新しいビルが建っていて、そんな変化に負けじと健気に以前からの佇まいを守っているビルを見つけると嬉しくなります。古くてもきれいに手入れをされたビルが多く見られるのもこのエリアの特徴だと思います。靖国神社から飯田橋方面へ抜ける際に見られるテツゲンビルもフランク・ロイド・ライト的な窓やどっしりとしたフォルムがかっこいいので併せてチェックしてください。


◆西村依莉(にしむら・えり)
フリーランスの編集者・ライター。東京ビルさんぽメンバー。ファッション誌・ライフスタイル誌を中心に活動しつつ、高度経済成長期のステキな建築や街の風景を日々記録している。グラフィック社から『足の下のステキな床』『キャバレー、ダンスホール 20世紀の夜』(共著)、大福書林から『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』(東京ビルさんぽ)が発売中。






情報提供元:旅色プラス
記事名:「今見るべき! 高度経済成長期生まれな皇居周辺の“いいビル”【連載第5回】