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純喫茶の名物マスターに会いに行く。難波里奈さんがこよなく愛する都内3店【連載vol.4】




はじめに


例年より凍えるような寒さの日が少ない冬で、あっという間に桜のつぼみも開く季節となりそうなこの頃です。みなさまはいかがお過ごしでしょうか? 風邪やインフルエンザ、花粉に加えて、不安になってしまうニュースも多々ありますが、それぞれが差支えのない範囲でいつも通りの生活を送れるよう、純喫茶でひと息つく時間を作っていきたいものです。

さて、連載最終回は、私の純喫茶好きに拍車をかけた個性的でやさしくて大好きなマスターがいるお店3軒を紹介します。(まだまだ他にも好きな方たちはたくさんいるのですが、特に密接な方たちについて綴ります)

Text&Photo:難波里奈(東京喫茶店研究所二代目所長)
私が純喫茶に夢中になったきっかけのお店「珈琲専門店 エース」(神田)

私が純喫茶に夢中になったきっかけのお店「珈琲専門店 エース」(神田)


1軒目は、「珈琲専門店 エース」。JR神田駅西口を出て2分ほど歩いたところに見えてくる、オレンジ色と白色のファサードが目印です。「世界のコーヒー40種類」と大きく書かれた木の板が表にずらりと並び、扉を開ける前からわくわくした気持ちになれるのです。
※現在「のりトースト」の価格は200円

カラン、と鳴るベルの音と同時に「いらっしゃい!」と声を掛けてくださるのは、だいたい弟の徹夫さん。その声を追いかけるように、カウンターの中から明るく「いらっしゃーい!」と迎えてくださるのが兄の英勝さん。そう、こちらはご兄弟で営むお店なのです。主に調理を担当される英勝さんと、接客・会計・掃除を担当される徹夫さんは息がぴったりで、どんなに混雑していてもそのチームワークの良さで次々とコーヒーやパンメニューが各テーブルに運ばれていくのを見ているだけで惚れ惚れします。
このお店は、私が純喫茶の世界に夢中になったきっかけの一つといっても過言ではありません。楽しい日々も涙が出るような日々もエースと共にあり、私の暮らしはエースの存在なしでは語れない、というほど大切な場所なのです。コーヒーやパンメニューは持ち帰りが可能ですが、せっかくなのでにこやかな清水マスターたちと会話を楽しみながらあたたかなうちにお店でいただくのがおすすめです。
元祖のりトースト(200円)をはじめ、豊富なパンメニューが揃う


◆珈琲専門店 エース
住所:東京都千代田区内神田3-10-6
電話:03-3256-3941
営業時間:月曜~金曜日7:00~18:00、土曜日7:00~14:00
定休日:日曜日・祝日
やさしいマスターについ時間を忘れてしまう「コーヒーの店 ドゥー」(目黒)

やさしいマスターについ時間を忘れてしまう「コーヒーの店 ドゥー」(目黒)


2軒目は、「コーヒーの店 ドゥー」。賑やかな目黒駅前から小道へ入ったところにひっそりと灯りを点すこぢんまりとしたお店。まるで秘密の屋根裏部屋に上がっていくような階段の途中で、誰にも教えたくないような、でも誰かと一緒にこの素敵さを分かち合いたいような、もどかしい気持ちになります。
扉の向こう側には赤と茶を基調としたインテリアのあたたかな空間が広がっていて、カウンターの奥でやさしい表情を浮かべるマスターの嵯峨さんにほっとするのです。にこやかな嵯峨さんと話したい人、透き通ったおいしいコーヒーを飲みたい人、うっとりするような絶品・クロックムッシュを食べたい人……。さまざまな人たちが目指してやってくる店内は、時間帯を問わずいつも満席です。
「ここでコーヒーを飲んだら表情がふわっとゆるむような、そんな瞬間を見られたらうれしいねぇ」とどこまでもやさしい嵯峨さんには、つい悩みを打ち明けたくなってしまうことも。穏やかなペースで相槌を打ってくださるその時間は砂糖を入れたコーヒーよりも甘く、帰る頃にはこわばっていた気持ちもすっかりほどけて自然と笑顔になってしまうのです。カウンターに飾られている一輪挿しは常連さんからの贈り物であることが多いそう。いつも元気をもらっているお礼に今度は花束でも持参しよう、なんて次の訪問を楽しみに思うのです。
コーヒーのほかに、スープとクロックムッシュのセット(700円)が人気


◆コーヒーの店 ドゥー
住所:東京都品川区上大崎2-15-14 高木ビル1F
電話:03-3444-6609
営業時間:月曜~金曜日9:00~20:00、土曜日・日曜日・祝日13:00~19:00
定休日:第2土曜日
“出会わせ上手”な看板マスターがいる「コーヒー&プリン ヘッケルン」(虎ノ門)

“出会わせ上手”な看板マスターがいる「コーヒー&プリン ヘッケルン」(虎ノ門)


3軒目は、「コーヒー&プリン ヘッケルン」。虎ノ門という土地柄、日中は近隣で働くサラリーマンたちで賑わいつつも、名物のジャンボプリンを求めてやってくる若者たちの姿が目立ちます。
その看板メニューと同じくらい人気なのは、どんな肩書きの人がやってきても等しく接してくださる潔さが魅力のマスター、森さん。お店のルールを守らない人がいた時にはびしっと叱る厳しい一面もありますが、それは裏返せばヘッケルンにやって来る人たちを心から大切に思っているからこそ。毎日やって来る人も、数年に一度しか来られない人も、「ここを目指してわざわざ来てくれる人はみんな常連さん!」という信念の通り、初めて訪れた人でも帰る頃には以前からずっと知り合いだったような気にさせてくれるほどフレンドリーに接してくださるのです。
一般的には座りにくいと思われるカウンター席から埋まっていくのも、このお店の特徴です。止まらないおしゃべりと比例するように、森さんの手足はとてもよく動きます。会社員にとって束の間の休息である昼休みに店内が満席となっても決してオーダーを間違えることなく、注文された品をさばきながらも明るく振る舞う器用さはプロのなせる技。そんな森さんのもう一つの顔は“出会わせ上手”。その場にいた人たちが森さんから振られた会話によって自然と友人になり、恋人となり、結婚した人たちもすでに10組以上だそう!
看板メニューの特製ジャンボプリンとコーヒーのセット(700円)


◆コーヒー&プリン ヘッケルン
住所:東京都港区西新橋1-20-11 安藤ビル1S
電話:03-3580-5661
営業時間:月曜~金曜日8:00~19:00、土曜日8:00~17:00
定休日:日曜日・祝日・第2土曜日

おわりに


ご自分の「城」ともいえる大切なお店を昭和の時代から守り続けている純喫茶のマスターたち。それぞれ個性が強いことも多く、慣れるまでは緊張してしまうこともあるかもしれませんが、そのお店を好きな気持ちが伝わる限り、必ず親切に迎え入れてくださいます。自分の暮らす街、たまに訪れる街、行ってみたい街……。みなさんがずっと通いたくなるような、好みのお店に出会えますように!


◆難波里奈
日中は会社員、日暮れから東京喫茶店研究所二代目所長として活動中。自身のブログ『純喫茶コレクション』や著書『純喫茶とあまいもの』(誠文堂新光社)、『クリームソーダ 純喫茶めぐり』(グラフィック社)などにて、これまでに訪れた喫茶店を記録している。





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