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「カンガルールート」の名が無くなる? 豪州〜欧州間直行便、ついに就航【さかいもとみの旅力養成講座】



ロンドン・ヒースロー空港に到着した豪州パース発直行便の初便(カンタス航空提供)


皆さんこんにちは、トラベルライターのさかいもとみです。桜前線北上中の頃、いかがお過ごしですか。ゴールデンウィークの旅の予定はそろそろ決まりましたか?



さて、今回は3月下旬に飛び始めた「オーストラリア〜イギリス間の直行便就航」についてお話ししましょう。この二国間を結ぶ航空路は、相互に移民が多く、家族訪問などの行き来が盛んで、まるで国内線のように高い需要があります。ところが、飛行機の性能に限界があって、これまでは無着陸で飛ぶことができませんでした。



そうした中、今年(2018年)の夏ダイヤから念願の直行便がオーストラリア西部のパースとイギリスのロンドンとを結ぶこととなりました。オーストラリアのマスコミ各社は、「とうとうロンドンへ夢の直行便が実現」と大きく取り上げています。


昔は7カ所を経由、所要4日間!



1947〜56年に使われていたロッキード・コンステレーション。豪州からロンドンへ片道4日かかったという(カンタス航空提供)


では、直行便以前のオーストラリア〜イギリス間のフライト事情について背景を述べてみましょう。



第二次大戦終了してまもなくの1947年のこと、この路線で初めて民間航空便が飛び始めました。飛行機が「飛んでは止まり」を繰り返す状況を見立て、オーストラリアと欧州を結ぶ便は「カンガルールート」と呼ばれるようになりました。



当時はまだ民間用のジェット機が生まれる前であったころから、プロペラ機が何度も寄港して給油しながら先へ進んだといいます。途中降機地は全部で7カ所、シドニーからロンドンまではなんと4日間もかかりました。



その後、ジェット機が誕生、さらに大量輸送が可能となったボーイング747「ジャンボ」が投入され、経由地は2回に減り、より快適な旅が楽しめるようになりました。しかし、依然として直行便で飛べるようになるには、それなりの技術の進歩を待たねばなりませんでした。



今回の直行便就航を機に、カンタス航空はさらに「シドニー〜ロンドン間の無着陸直行化」を目指し、二大航空機メーカーに機材の開発を行うよう呼びかけています。もし、直行便化が積極的に進めば、「カンガルールート」という単語が消えてしまうのかもしれません。


各社入り乱れ大混戦のカンガルールート


エミレーツ航空 搭乗記 エコノミークラス

オーストラリアから欧州へ行くのに、直行便が物理的に飛ばせない、となるとどこかで給油、もしくは乗り換えをしなければなりません。そこで航空各社はどこか適当な経由地を作って、運航を行なっているわけです。



オーストラリア〜イギリス間は長年にわたって、双方のフラッグキャリアであるカンタス航空とブリティッシュ・エアウェイズが英連邦のシンガポールを経由地にして、大量のフライトを飛ばしていました。ブリティッシュ・エアウェイズの一部の便は、かつて英領だった香港を経由したりもしていました。



そこへ割って入ったのが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイをハブとするエミレーツ航空でした。カンタスとオーストラリア線、イギリス線でそれぞれ共同運航(コードシェア)契約を締結、乗り継ぎ地をシンガポールからドバイに引っ張り込み、さらにブリティッシュ・エアウェイズとの提携を打ち切らせるという大勝負に出ました。折しもエミレーツ航空は、二階建てのエアバスA380型機を大量投入し、「一度はあの巨大機に乗りたい」と思う旅行客を一気に取り込んだのです。



ところがこのオーストラリア〜イギリス線での需要を満たすには、カンタス航空+エミレーツ航空連合だけでは不十分で、シンガポール航空やマレーシア航空、タイ航空といった東南アジア各社のほか、エミレーツ航空と常に競争関係にあるアブダビベースのエティハド航空やカタール航空などがシェア争いに参戦。さらに、キャセイパシフィック航空や比較的運航経費が安いとされる中国各社、ベトナム航空までも入り乱れる大混戦となっています。ちなみにロンドンでは全日空(ANA)が日本経由のシドニー往復を販売していますが、やや遠回りになることから残念ながらそれほど活発に使われている感じがしません。



カンタス航空(チャンギ国際空港)

なお、カンタス航空はこの夏ダイヤから、ロンドン線の運航についてシンガポール経由のルートに戻しています。これにあたり、シンガポール政府観光局、チャンギ国際空港の3者は、3年間に渡るマーケティングパートナーシップ契約を締結し、カンタス航空の利用を促進する活動に取り組みます。カンタスグループのアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は、「シンガポールはカンタス航空にとって、オーストラリア以外で最大のハブになる。」と話しており、経由地を戻すにあたって、多くの駆け引きがあった可能性もあるでしょう。ちなみに引き続き、エミレーツ航空のドバイ経由便は運航されています。


直行便の所要時間はなんと17時間超


今回就航した、パース〜ロンドン間の無着陸直行便は飛行距離15,000キロあまり、所要時間は17時間を超えます。



「そんなに長く飛ぶんだったら、映画がいっぱい観られていいなあ!」と思う人がいるかもしれません。計算上は17時間あれば、ハリーポッターの全7作品も一気に観られます。



しかし、ロンドン行きは離陸から着陸まで一度も機外にお日様の光を見ることができず、ただただ真っ暗な中(しかもほとんどが海の上)をひたすら飛び続けます。そして「いつ寝ていつ起きて良いのか」と悩んだ末に、なんと早朝5時過ぎにロンドン到着と、その後の日程を考えるとちょっと気重です。





カンタス航空もそういった悩みを考えたのか、パース空港にはロンドン線利用者のうち、ビジネスクラス利用者や上級会員が利用できる乗り継ぎ専用のラウンジをオープンしており、パースから出発する人のみならず、ロンドンから到着する人も利用できます。パース〜ロンドン線に投入するボーイング787-9型機は236人乗りで、仮に往復ともに満席だとしても472人しか乗客はいないことになります。一方でラウンジの席数は141席であることから、そういった高頻度利用者は最大でも約3割と見込んでいると推察できます。





ちなみにラウンジでは、季節のメニューや様々なビュッフェ、バリスタによるコーヒーサービスなどを提供するほか、オープンテラスでは地元の精肉店の上質なソーセージ、マッシュルーム、軸付きとうもろこしなどのバーベキューを楽しむこともできます。さらにチャールズ・パーキンス・センターとシドニー大学は共同で、エアライン初となる体内時計を調整するための明るい照明を活用した時差ぼけ対策を開発し、トイレやリフレッシュゾーンに取り入れたという。呼吸やストレッチの無料のレッスンも行っています。


「念願の直行便」とはいえ、長すぎるのもどうかと思いませんか?


「15時間以上ゆっくり休める」と考えると、日々忙しい人にとってはこんな幸せなことはありませんが、どちらかといえば「体力の限界に挑戦」という気がしなくもないです。日本〜欧州間には、ちょうど良いタイミングで中休みできるフィンランドのヘルシンキ経由なんていうチョイスがありますし、ダークホース的存在としてはLOTポーランド航空でポーランドのワルシャワ経由といったルートも使えます。体力と時間、行き先、あるいは乗り継ぎの利便性(そして、何よりも価格?)など総合的に検討して、より便利でコストパフォーマンスの良いフライトを探してみたいものですね!



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