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高速の暫定2車線、解消進むか しかし残る問題も



安全性などに懸念がある高速道路の「暫定2車線区間」。その解消が今後、手続きの改正により進展するかもしれません。しかし、問題が解決されるわけではなさそうです。

簡単になる高速道路の拡幅

 先日、私(清水草一)は東九州道の「確定2車線区間」について記事を書きましたが、それにタイミングを合わせたかのように、この2015年9月1日(火)、国土交通省がひとつの報道発表を行いました。タイトルは「高速自動車国道法施行令の一部を改正する政令案等の整備に関するパブリックコメントについて」です。

 その内容は、私も指摘したように、「現状の暫定2車線には安全性、走行性、災害時の対応、積雪時の狭隘性など様々な問題があるので、車線数の増加をもっと機動的に行うようにする」というもので、具体的には、今年の10月上旬からは「国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)の議を経ずに拡幅を可能にする方針」であり、それについての意見を募集(パブリックコメント)いたします、という内容でした。

 役人用語の羅列で、理解が難しいかと思いますが、要点はこうです。

 これまで高速道路の建設は、拡幅も含めて、「国幹会議」(国会議員および有識者合計20名で構成)という仰々しいものを通過しないとできませんでした。もちろんNEXCOが自主的に「ここを通したい」とか「ここを広げたい」と思ってもそれは認められておらず、お上から指示されたこと以外はほとんど何もできない、召使いに近い立場でした。

 しかし今後は、暫定2車線から4車線への拡幅に関しては、国幹会議を通さずにやってもいいよ、となりそうです。それでも第三者委員会の議論や国交省からの提示は経なければなりませんが、手続き的には以前より簡単になります。

 ここで疑問が生じます。「じゃ、NEXCO側は拡幅したがるのか?」と。

 現在、暫定2車線の区間は、そのほとんどが過疎路線で交通量はまばら。そんなところを拡幅したって、交通量は大して増えません。拡幅に要する建設費はほとんど回収不能。わざわざそんなことをやる民間企業はあり得ないはずです。

 が、私はそうでもないとにらんでいます。なぜなら、NEXCOは一応株式会社とはいえ、出資は全額国(株主は財務大臣1名)。前述のように国の召使いだからです。

 NEXCOの事業形態では、高速道路の料金収入を増やしても、建設費の返済(正確には高速道路の賃借料)に回されてしまって利益は増えません。建設費を予定よりコストダウンできた場合、それについてのインセンティブは出ますが、経営は現在安定しており、債務返済は順調に進んでいます。NEXCOにとって高速道路の建設は、損得を超えた天命のようなものになっています。

拡幅される路線はどこ?

 NEXCOには、採算の取れない路線を「建設しない」という拒否権は与えられていますが、かつての日本道路公団時代同様、「造らない」という選択肢は思考回路にないようです。むしろ自分のナワバリを増やしたいという役人的な方向性が強く残っており、同時に“高速道路屋”としての誇りや執念もあります。

 たとえばNEXCO西日本は、新名神のなかで唯一の建設凍結区間だった大津~神戸間について、「危機管理の点からも絶対に必要な道路。当然着工しないといけない」と建設を強く望み、2012年に凍結が解除されて事業認可に至りました。建設費は1兆円近くに達し、単独事業としては到底採算は取れませんが、国の危機管理を持ち出して建設を望むのは、まさに役人の発想です。

 会社の事業としてはペイしなくても、国家にとってプラスなら造る。それを“親方日の丸”と呼ぶか“高速道路屋の誇り”と呼ぶかは人それぞれでしょうが、いちドライバーとしては、高速道路はないよりあった方がいいに決まってますから、ありがたい情熱ではあります。

 では、どんな路線が拡幅されるのでしょう。前提として、費用便益比や混雑度が高い路線からでしょうから、大都市近郊の観光路線は最有力です。

 関東では館山道の君津以南の拡幅が望まれますが、ここはすでに4車線化が決定済み(君津~富津竹岡間)。関西では舞鶴若狭道の舞鶴西以東(舞鶴西以西は拡幅決定済み)や阪和道(御坊以南。そのほかは拡幅決定済み)でしょうか。常磐道、磐越道、岡山道、米子道なども可能性は高いと思います。

 しかし問題は、ここからも取り残されるであろう過疎路線たちです。

 国交省も指摘しているように、暫定2車線区間は、安全性を始めとして問題が多すぎます。まずは暫定2車線区間の利用価値の低さを認めて料金を半額以下に下げ、それでも利用が低迷する路線は、「当面2車線区間」とでもして中央にコンクリートウォールを設け、反対車線への飛び出しによる正面衝突事故を防ぐべきではないでしょうか。

 半永久的な暫定2車線はもうヤメにして、やるのかやらないのか、路線ごとにある程度はっきりさせるべきだと考えますが、今回、それについての言及がなかったのは残念です。

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