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変わる総火演 対中国鮮明に 富士の麓が沖縄の島



陸上自衛隊が毎年8月に開催している「富士総合火力演習(総火演)」。近年、情勢の変化によって演習プログラムが大きく変化しており、2015年度の演習内容も、その意味でさらに進んだものになっていました。

「沖縄県の架空の島」になった富士の麓

 2015年8月23日(日)、陸上自衛隊主宰の「富士総合火力演習(総火演)」が、静岡県東富士演習場・畑岡地区において実施されました。

 自衛隊は例年、親交を兼ね在日大使館付き駐在武官を招待しており、今年も多数の国の軍人が演習を視察しています。しかし在日中国大使館付き駐在武官だけは、演習の内容を事前に知っていたに違いないにせよ、その内心はあまり愉快ではなかったかもしれません。

 近年、総火演の演習プログラムが大きく様変わりしつつあります。2000年代頃までは単に演習場の地形に敵が侵攻し、それを撃破するという状況によって行われていました。ところが2012年以降は、「島嶼防衛」を想定する演習が行われるようになっています。

 そして今年は東富士演習場を沖縄県の「架空の島」に見立て、その島に対して外国の本格的な侵略行為が開始されたという状況が設定されました。「侵略」した外国が名指しされることはなかったにせよ、これは言うまでもなく強く中国を意識したものです。

 総火演は年に1度8月末に実施される、国民の理解を深めることを目的とした実弾演習です。演習とはいえ実際は「ショー」としての色合いが強く、各種兵器や隊員らによって「劇」を演じていると表現したほうが、その本質を捉えているといえるでしょう。

 さしずめ今年の総火演の劇題は「統合機動防衛力」でした。中国の侵略があった場合に陸海空自衛隊はいかに相互に連携した作戦(統合運用)を行い、航空機動力を発揮し、どのように中国軍を撃退するのか、その基本戦略を国民の前で展示したのです。

ゲスト扱いではなくなった空自戦闘機の意味

 演習のシナリオは、まず空海から我が国に接近する敵部隊を海上および沿岸において撃破する、という状況から開始されました。12式地対艦誘導弾や航空自衛隊のF-2戦闘機による対艦ミサイルの模擬発射(射程の問題から実弾は射撃できない)が行われるとともに、次いで島嶼部に着上陸した敵部隊に対し、陸自部隊がレーザー照準を行い、F-2戦闘機がレーザー誘導爆弾を模擬投下しました。

 これまでも空自戦闘機は総火演に参加してはいたものの、ほとんどゲスト扱いに過ぎませんでした。しかし今年は陸空が連携し誘導爆弾による攻撃を実施しており、統合運用の重要性をアピールしました。

 敵部隊着上陸後は内部への侵攻を食い止めるために、UH-1J「ヒューイ」、UH-60J「ブラックホーク」、CH-47J/A「チヌーク」といった各種汎用・輸送ヘリコプターが隊員や物資を演習場内に展開させます。島嶼部においては陸上から接近できないため、海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦や輸送艦を拠点とした航空機の活用が不可欠です。

 その後、輸送艦からLCAC(エア・クッション型揚陸艇)等で揚陸したと想定した74式戦車、90式戦車、10式戦車、89式装甲戦闘車、そしてFH70 155mmりゅう弾砲、99式自走155mmりゅう弾砲、203mm自走りゅう弾砲などによって敵を制圧・撃破し、最後に敵部隊へ対し突撃を行う戦果拡張を実施。演習は終了となりました。

総火演に「オスプレイ」が登場した意味

 演習終了後には、陸上自衛隊が導入を予定しているV-22「オスプレイ」(米海兵隊のMV-22B)が飛行展示を実施。また「オスプレイ」と同時に導入されるAAV-7水陸両用装甲車も映像のみながら紹介されており、これらの新兵器が新たに編成される予定の上陸戦専門部隊「水陸機動団」において、重要な役割を担うであろうことが示唆されました。

 第1回目の総火演は、米ソ冷戦時代の1961(昭和36)年に行われました。当時の日本の国防は北海道防衛を主眼としていましたが、五十余年の年月を経てソ連は崩壊。昨今、中国の膨張によって国際情勢は大きく変化しました。

 21世紀の新しい国際情勢に対応すべく、来年以降の総火演演習プログラムもまた、対中国を意識しつつ大きく変移していくことになるでしょう。

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