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予算300万で中古車を買う:ジャガーXJに見る大人の嗜み


300万円で購入できる輸入車として、ジャガーXJを推すというのはどうだろうか、と考えた。しかしそれは、決して万人に対して良い選択とは言えないと思う。ただし、自分個人にとって事あるごとに受けていたジャガーの感触は、思い出として封印してしまうには、どうしても惜しい存在でもある。できれば、いつかはジャガーに、との思いは未だに心のどこかに棘(とげ)のようにささっている。

いくつかのタイミングで直面したジャガーらしさ

雑誌編集者としてXJに触れたのは、初代XJシリーズ3から。スチールの部品を様々に組み合わせて構成されドアの“ガシャリ”と開く触感は、機械式時計のように今でも忘れられず、室内に漂うコノリーレザーの香りがジャガーの世界を開いた。低いシートに滑り込むと、まっすぐ前方に足を投げ出すシートポジションが特徴で、まさにスポーツカー由来の奥深い世界を感じることとなったのを覚えている。

初代ジャガーXJ。上がシリーズIで、下がシリーズII(日本仕様,1975年撮影)。この伸びやかさも堪らない魅力。

その後、多くの取材に供したのはXJ40。ジャガー広報の小石原さんは、このモデルをいつも“角目”と呼んでいた。


ジャガーXJは、新しい、古いにかかわらず、常に一定の空気感をその室内に漂わせていたように思う。




そんなジャガーXJも次はEVへとの準備が整ったというが、内燃機関の最終モデルとなるのが、現行モデルでもあるX351系だ。そんなモデルながら、検索してみるとなんと300万円で買えるモデルが登場し始めていた。




そんなことで、ここではXJ351系モデルの紹介をしたいのだが、2009年に自分自身がカースタイリングで紹介記事を書いていたので、ここでは当時の自分にその解説を任せたいと思う……。

2009年のカースタイリング誌より ”魅惑的なジャガーXJ解説”

当時の発表会場より

2009年7月9日、ロンドン、チェルシー地区のコンテンポラリーアート美術館でジャガーの新型XJが発表された。XJとしては4代目。XFよりもさらに立体的となったノーズの造形や、細長い涙滴状のサイドウィンドウ・グラフィックが特徴を与えている。1968年に発表されたオリジナルのXJや1959年にそれまでのサルーンの改良型として登場したMK2などからインスピレーションを得ているという。




●XFと共通性のあるグリル




かつてXFが発表されたときに、デザイン・ディレクターのイアン・カラムは「ジャガーにはこれまで伝統的に継承してきた固有のグリル・デザインはない」と語っていた。確かにそうして見ると、歴代の様々なジャガーには共通するグリルはないようにも見える。




しかし新型XJでは、グリルから造形されたダイナミックなボディをイメージさせ、その点ではXFに共通しさらにそのイメージを強調している。両車のヘッドライトの造形テーマは異なるものの、多くの人が同じブランドの車でありことは理解できる“顔”であることは間違いない。少なくともセダンには共通するグリル・テーマが生まれつつあると見ることもできそうだ。




サイドに回ると、もっとも驚かされるのはめっきモールのみが残された細いDピラーだ。傾斜のきつくなったリアピラー周辺の後方視界を確保するために思い切って細いピラーを採用したのか? と思えばそうではなく、ピラー部分がリヤウィンドウのラインでブラックアウトされたものだ。




ピラーレスのイメージから、ルーフを浮かせて見せて軽快感を印象付けているという。ピラーをブラックアウトして隠すヒドゥン・ピラーという手法は珍しくないが、加えてめっきモールによりウィンドウ・グラフィックをしっかり残すという手法は珍しい。


 また、全車にグラス・ルーフを採用。室内を明るくして、開放感を与えている。さらにルーフのグラス化は、低全高にも貢献するという。

● 完全なバーチャル・メーターを採用 




室内で特徴的なのは、メーターパネルに12.3インチの液晶スクリーンを採用している点だ。3連メーターは液晶に映し出されたもので、機械式メーターは存在しない。状況によって必要な情報をタコメーターに代えて表示するなど、重要な情報を見やすくできる点が液晶モニター表示の特徴だ。また変速タイミングやサスペンション設定など、走行性能を総合的にスポーティに設定できるダイナミック・モードに設定すれば、メーターの文字が赤色表示となりギヤ・ポジション・インジケーターが強調表示される。




ボディは先代同様にアルミニウム構造を持ち、航空宇宙技術を応用したリベットと接着加工を採用している。競合車にたいして150kgの軽量化を実現したうえ、ボディの約50%をリサイクル原料から製造している。さらに将来的には75%にまで引き上げる準備がすでに整っているという。


(カースタイリング2009より)

カラム氏が語るジャガー像の中心へ

上)独特であり、しとやかなデザインテイストを持つXJ。特にリヤピラーのブラックアウトは賛否両論。 左)長年ジャガーのデザイン・ディレクションを担ったイアン・カラム氏。

デザイン的に賛否はあろうとも、イアン・カラムさんが、“これがXJだ!”というのならば、そこにはなんの疑問もない。カラム氏はジャガーの多くの伝統を打ち破ってきたが、それは形の話であって、テイストはつねにジャガーそのものに間違いなかった。むしろ凝り固まった形に固執することの方が、方向性を失わせる、そう語っているかのようだ。


現に2018年に発表されたEV専用モデルのIペイスは、完全にジャガーの空を打ち破りながらも、ジャガーらしさを湛え、拡張するに余りあるモデルとなった。




発表当時、新型のXJ351に乗り込むと、足を投げ出す運転姿勢に、コノリーレザーの香りもそのまま。割と多用されるメッキパーツの雰囲気は、自分の記憶にあったXJシリーズ3のあの時代にまで戻ってしまうような、不思議な感覚さえも与えてくれた。


しかし前を見れば、そこにあるのはフル液晶のディスプレイ。この前衛と伝統のバランス、あるいは共存こそが、UKらしさをより深めてくれた……。






こんな話をするのもなんだが、自分自身、生粋のプジョーオーナーでもあるので、個人的にこんなにジャガーXJの話をするのは、かなりの浮気な感じだ。しかし、雨のヒースローに置いておくのは、やはりプジョーよりジャガーXJの方だろう。そんな魅力的なシーンが、しっかり浮かんでくるのもXJらしさだ。プジョーとジャガーの世界観は大きく異なる上、決して両者ともダンディズムを代表するハードさはないのだが、大人の嗜みとしてジャガーXJはその極みにある。


そんな車をいつかは持ちたいと思っているのだが、このXJは自分が選ぶだけでは不足で、車から選ばれるものでもあるということは、付け足しておかなければならない。


そんなオーラを兼ね備えた車も、今や希少な存在かもしれない。

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