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新型フェアレディZを見てみる:火曜カーデザイン特集(連休企画・先行掲載)


フェアレディZが見たくてたまらずに、横浜みなとみらい21地区にある「ニッサン パビリオン」にZ PROTOを見に行った。もちろん現状を鑑みると、密になる移動はお勧めできないが、一般公開は10月4日までなので、興味のある方はタイミングを見て訪問されることをご提案したい。平日は比較的空いているようだ。

実際に見ると実に低い! 

昭和の時代、カメラマンはかなり低いアングルから車を撮った。それは低いほうがカッコよく撮れたから、今は全高が高くなり低く撮ってもあまりカッコよくないが、久しぶりにカメラマンが路面ギリギリかた撮ったワンショット。低いアングルが、カッコよさにつながるのだ。

ところで写真で公開された印象のなかで、最もネガな感じで批評されているのが大きく四角いフロントのインテークだ。あまりに大きく、不恰好なのではないか? ということだ。


しかし実際に見ていると、それはまったく気にならない。というのは、フロントノーズはかなり低く、先端は膝の高さ程度。その下にグリルがあるので立った目線では、グリルの存在はほとんど意識されないことになる。

こちらが立った目線で撮ったアングル。ノーズ先端の高さは膝一程度しかなく、四角いグリルはその下に位置する。

ようやく会えたZを目の前にして、最初に思ったのは「低い!」ということだ。前述のように膝の高さにあるノーズ先端。その先端につく新しいNISSANエンブレムは、クローム仕立て。ここには残念ながら、ちょっと失望。クルマとしてのバランスは絶妙だが、新しさはない。


あの新ロゴが掲げられたときの高揚感、エンブレムをどういう造形でトライしてくれるのか? といった気持ちにはまだ答えてもらえなかった(本音を言えば、エッジの鋭い型押しでの表現くらいのことを希望していたいだが、それは叶わなかった…)。


また、冒頭のグリルについても単に四角というのではなく、Zは基本的に直線などをはじめとしたシンブルなラインで構成されている。グリルの左右ラインはボンネットのオープニングラインにつながるものとなっているなど、きっちりとしたラインのなかで成り立っている。これは初代から持ち合わせたグラフィックであり、また単に情感だけに走らない、冷静でジオメトリックな構成要素として、極めて重要な側面でもあるようだ。

グリルの左右はボンネットのオープニングラインにつながる。実にジオメトリックな造形を象徴する部分。

見たことがないフェンダーに上がってくるキャラクターライン

フロントからゆっくりとサイドに回ると、徐々に見えてくるのがフェンダーを分断して斜めに下がっていく折り目。これはボディサイドのキャラクターラインになっていく。フェンダー上部からのラインの発祥は目立たないのではあるが、あまりに大胆な考え方だ。サイドビューだけで見れば、リヤに下がっていく典型的な初代Zらしい、さらに言えばスポーツカーらしい合理的なプロポーションに貢献するラインだ。プロポーションの狙いを整理する上で素晴らしいラインだが、その先端がフロントフェンダーに上がってくるとは、大胆すぎる。



サイドからのキャラクターラインが、うっすらとフェンダーに上がってきて消えるのがわかるだろうか。

普通は全体を意識して、キャラクターラインの全体を下げてフロントのホイールアーチに刺さって消えていくとか、角度を水平に近く変えてせめてヘッドライト上端を狙う、などフェンダーのなめらかな面には干渉させないのが一般的だ。




しかし、それをやらなかったのはすごい。このラインは消えながらも先端のNISSANのエンブレムに向かっていく、というストーリーのようだが。

キャラクターラインの流れ方と、リヤフェンダーの造形に注目。ドアハンドルが造形を統括するひとつのポイント起点。

普通は全体を意識して、キャラクターラインの全体を下げてフロントのホイールアーチに刺さって消えていくとか、角度を水平に近く変えてせめてヘッドライト上端を狙う、などフェンダーのなめらかな面には干渉させないのが一般的だ。




しかし、それをやらなかったのはすごい。このラインは消えながらも先端のNISSANのエンブレムに向かっていく、というストーリーのようだが。

キャビンエリアを示す前後に伸びるクロームライン

ウインドウ上端のクロームラインが印象的。またリヤゲート開口幅はサイズのわりに伝統的に大きいのがZの特徴。新型でもクロームライン外側から開くようだ。

フェンダーからリヤピラーへ。小さな面だが、デザイナーやモデラーの思いが熱く伝わる部分。

そして、日本刀を意識したという、ウインドウラインに走らせたクロームシルバーのアクセント。アリアにも用いられているもので、ルーフをブラック化するには良いラインとなる上に、ブラックアウト化によって全高をさらに低く見せることができるようだ。


リヤに回ってわかるのが、ブラックアウトがマットではなく艶のあるブラックである理由だ。それはスモークガラスと一体化させる意図もあるように感じられる。さらに、ウインドウ上端に走らせたクロームラインが、アリア同様にキャビンエリアをその前後長で定義していることもわかる。サイドウインドウと併せたブラック化で、キャビン部分をキャノピー状に表現しているのが共通項だ。


この手法によって、ウインドウの形状に左右されずにキャビン部分を表現できる。それによってボディ造形との分離を自在に行なうことができるようだ。




新型Zの場合、リヤゲートのウインドウは歴代Zのなかでは比較的短めの上下長となるが、その違和感を払拭する効果もあるようだ。もしブラックアウトのルーフ&リヤゲートがボディ同色であったら、狙った造形とはちょっと異なる印象を与えるかもしれない。現状ではコンビの仕様のみだが、もし同色バージョンがあるのならば、ぜひそのバランスを見てみたい。


リヤウインドウ下からテールエンドまでの面の流れは、ブラックアウトされなければ相当に叙情的でロマンチックな面を見せているはず、と勝手に思い込んでいるので……。

リヤランプとその造形に宿るZらしさ

リヤパネル一体化が4代までのZのスタイル。新型でもこのスタイルを復活させたようだが、どれだけサイドに回り込むのかが、大きなポイントとなったはずだ。

そして最後にお伝えしたいのが、リヤコンビランプの形状だ。これもZにとっては象徴的。リヤエリアを独立したパネル化として、そこにランプ類を配列するというZスタイル。歴代Zでは、左右に回り込ませない流儀が続いたが、4代目のZ32あたりで少しずつ回り込むようになり、それ以後は左右が別れることになった。




明らかにZ32を意識したデザインだが、どれだけ左右に回り込ませるかは非常に苦労しただろう。大きく回り込ませると、もはやZには見えなくなってしまうはず。初代や2代目の叙情的なフェンダーラインを活かすには、できるだけフェンダーサイドには干渉したくないところだと思う。


他方で、できるだけ下げたリヤ部分を、よりキュートに見せるのは小さなリヤコンビランプだ。その苦心が、細く長いリヤランプを生んだのだと思う。




新型フェアレディZは、最新のデザインを纏いながら、じっくり見れば作り手の熱量をすごく感じる形だ。そのなかには、軽量化やローコスト化からの提案も多く含まれたものではあるが、それは初代からして持った、同じ苦悩を生きてきている。だからこそ、北米では「ポルシェの半分の値段で、同等のパフォーマンス」と言わしめた。


社内的命題にきっちり答えながらも、骨格の魂を持ち続けて生まれるのが日本的デザインなのだと思う。そんな実感を、今もしっかりと受け止めさせてくれたのが、この新型Zだ。

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