トライアンフブランドの主カテゴリーと言えるモダン・クラシック。伝統的なバーチカルツインエンジンを搭載、懐かしさを漂わすデザインセンスを披露し、今や10機種ものバリエーション展開を誇っている。その中で最も親しみやすい価格でリリースされているのが、このSTREET TWINである。



REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)

PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)

取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン

トライアンフ・ストリートツイン.......1,096,500円

KOROSI RED

JET BLACK.......1,070,000円
MATT IRONSTONE.......1,096,500円

 トライアンフの公式WEBサイトから引用すれば、「新たに誕生した正統派マシン」とある。バイクに対するイメージは人それぞれ、年代によっても様々であろうが、50〜60年代のバイクシーンを牽引してきた、ロードスポーツモデルにおけるスタンダードな姿をそこに見出すことができる。

 ベンチマークとしたのは、1959年のボンネビルだと言う。そのスピリットを継承しながら、現代の最先端テクノロジーを融合させているわけだ。そして自らがそれを正統派モダンクラシックと位置付けている。

 3種類のカラーバリエーションが揃えられているが、そのお値段は、JET BLACKをチョイスすれば1,070,000円で手が届く。同ブランド入門用としても親しみやすい存在なのである。



 ボンネビルも同様だが、筆者にとってこのスタイリングは重量級ロードスポーツ車の王道と言える、いかにもオーソドックスな手法でまとめられている。スチールパイプで枠を成すフレームワークを始め、長めのタンク・シート、エンジン後方に吸気系、前方排気のエキゾーストパイプは美しいカーブを描きながらエンジン前方から下方を通りツインマフラーで締めくくられる。

 フロントフォークは蛇腹のラバーブーツに覆われた正立のテレスコピックタイプで、リヤにはコイルスプリングとダンパーが一体となった2本のショックユニットを採用。

 ライダーは上体の起きた楽な姿勢で乗れ、街中から高速や郊外のワインディングロードまで、どんな場面でも自然体で柔軟に対応できる扱いやすさがある。

 パフォーマンスや機能性に尖った部分のない親しみやすいロードスポーツというイメージである。



 搭載エンジンは、ボア・ストロークが84.6×80mmと言うショートストロークタイプの900cc。圧縮比はやや高めの11.0対1で、最高出力は65PS/7,500rpmを発揮。一方で80Nmの最大トルクを3,800rpmで発生。いかにも柔軟な出力特性が見て取れる。

 しかもそこに組み合わせたトランスミッションは5速。900と言う排気量から容易に想像できるポテンシャルと共に、穏やかで扱いやすい乗り味にも期待値の大きなモデルと言えるのである。

 足回りはフロントに18インチ、リヤに17インチを採用。これはボンネビルT100と同じだが、フロントのジオメトリーは、キャスター/トレールが、ボンネビルの25.5°/105.2mmに対して、ストリートツインは、若干フォークが立てられた25.1°/102.4mmとなっている。

 ほんの僅かな違いで、あくまで傾向論ではあるが、ストリートツインはボンネビルとの対比で、直進安定性よりも、ハンドリングの軽快感を狙って仕上げられた点が特徴である。

 装備内容や選択された部品に贅沢な雰囲気は少ないが、素性の良いベーシックなスポーツモデルとして、非常に良くまとめられている。

車体サイズと重量、そしてエンジン性能の全てが掌握できる。

 昔で言えば間違いなく重量車。今流で言うとアッパーミドルクラスと言うのが正解だろう。筆者にとってその大きさは親しみやすい。試乗車を受け取るとボンネビルの兄弟モデルであることは直ぐに理解できた。

 特に虚飾のない、スッキリしたデザインセンスはむしろ好感触。普段着感覚で乗れる点が、とても良い感じである。車体のサイズと重量も程良さがあり、足つき性もバッチリ。両足は楽に地面を捉えることができ、それら全ての要素が自分の手の内納まる感じである。

 バイクを自由自在に扱いこなす上で、全てを掌握できる程良さはとても魅力的である。 別に油断するわけではないが、余計な緊張感を持たずに、気軽に乗れる。簡単にまたがり楽にスタートできる相棒感覚。サイドスタンドの出し入れも扱いやすい。自分の愛車にするには実に丁度良いと思えてきた。

 

 エンジンを始動するとアイドリングは900rpm程で安定。なかなか落ち着きのある回転フィーリングは大人びた感触。そして出力特性は実用シーンにとても良く合う。

 5速トランスミッションとの相性が良く、ギヤレシオのセッティングも素晴らしい。簡単に解説するとワイドレシオとエンジンの出力特性とのマッチングが良い。もっと言うとより大きな排気量のエンジンに乗っているかの様なおおらかな気分で走れる。

 中低速域のトルクが十分なので、スロットルを大きく開ける必要はなく、常に余裕綽々な走りが楽しめる。それでいて、右手をワイドオープンすると、軽やかで十分逞しい吹け上がりを示すと共に、伸びを待つ心地よい加速フィーリングが楽しめ、各ギヤで引っ張って行く時の感覚が気持ち良いのである。

 ちなみにローギヤで5,000rpm回した時の速度は60km/h。5速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は、3,200rpmだった。120km/hクルージングの場合でも約3,800rpmで走れてしまう感覚は、やはりクラスを超えるゆとりが楽しめる。

 スロットルレスポンスは決して乱暴ではなく、軽やかさと逞しさを合わせ持つ感じ。市街地はもちろん、登りのワインディングロードでも各コーナーをグイグイと立ち上がれる底力は十分。高速でのゆとりも申し分無く、ライディングポジションの良さも相まってタンデムツーリングも快適にこなせそう。

 その総合的な乗り味は、日本の交通環境にも相性が良く、ある種万能なスポーツモデルと言える。どんな場面でもトルクに不足は感じられない。レスポンスに穏やかさもあるエンジンはとても扱いやすいからである。

 そんな扱いやすさ故、あまりその必要性は感じられかったが、ライディングモードは通常のロードの他により穏やかに駆動力制御されるレインモードも選択可能。ウェット路面でも安心感は高い。

 ハンドリングも軽快かつ素直な扱いやすさが目立つ。前後ブレーキも同様に扱いやすく、自然な乗り味に好感が持てるものだった。

 あえてボンネビルと比較すると、エンジンこそノーマルながら、ちょっとスプリンター的に軽いチューニングを施されたモデルのように軽快な雰囲気がある。

 また、全体的な見た目としてリーズナブルなモデルであることは理解できるが、決して安っぽくは無い。その割に親しみやすい価格設定には、改めてお買い得感の高いバイクであることに気付くのだ。

 普段使いにもまるでストレスを感じない気軽さは足代わりから、様々なツーリングまでフルに使い倒せる感覚。良い意味でとても無難なチョイスである。

 これを愛用し尽くしたオーナーが、何かプラスαを望む時は、自由にカスタムを楽しむのも良いだろう。

 自分好みに仕立てて行くベースモデルしても、長く付き合える賢い選択肢のひとつになることは間違いと思えた。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高は760mm、乾燥重量は200kgを切るレベルにあり、直感的にほど良いスケールの大き過ぎない車格感が好印象。ご覧の通り両足はベッタリと地面を捉えることができる。

ディテール解説

ヘッドランプハウスはブラックアウトされた丸型を採用、シングルメーターと共にシンプルで普通なデザインに仕上げられている。ヘッドランプは60/55WのH4ハロゲンランプを使用。ウインカーは10Wバルブだ。

18インチのキャストホイールには110/90サイズのピレリ製ファントム・スポーツコンプを履く。インナーチューブがラバーブーツでカバーされたフロントフォークはφ41mmの正立式KYB製。フローティングマウントされたφ310mmのシングルローターにはブレンボ製対向4ピストン油圧キャリパーを採用。

空冷の様な冷却フィンがデザインされているバーチカルツインエンジンはショートストロークタイプの水冷SOHC8バルブ。クランクは位相された270°タイプが採用されている。

スタンダードスポーツに相応しい左右にセパレートされたツインマフラーを装備。エキゾーストパイプはクレードルに添わせてスマートに導かれ、マフラーは軽く跳ねあげられてフィニッシュする。

スチール製角パイプのスイングアームに、KYB製ツインショックを合わせたオーソドックスなリヤサスペンション。黒いコイルスプリングはダブルピッチタイプを採用。

リヤブレーキはφ255mmのシングルディスクローターにNISSIN製2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーを装備。ピレリ製ファントム・スポーツコンプのラジアルタイヤを履く。

スポーティなデザインのパイプバーハンドルはブラックアウトされたテーパードタイプ。クランプの左右は一体を成し、そのブリッジ部にはブランド名が刻まれている。

扱いやすいハンドル左側スイッチ。ベストポジションにある赤いスイッチはホーンボタン。上はプッシュキャンセル式ウインカースイッチ。さらに上の丸いiスイッチはスクロールボタンで、メーター内の液晶表示をコントロールできる。右の丸スイッチはMODEボタンで、ロードとレインのライディングモード切り替え用。ディマースイッチは人差し指で扱う。
ハンドル右側は赤いスイッチが二つ。シーソー式スイッチはエンジンキルスイッチと始動用のセルスタータースイッチを兼ねている。下の三角ボタンはハザードランプ点灯用スイッチだ。
シンプルで見やすいシングルメーターだが、表示内容はなかなか豊富。200km/hスケールの速度計はアナログ式。タコメーターは液晶デジタル表示される。燃料計の上方にはギヤポジションインジケーターも装備。ライディングモードは文字表記される。

一体式のダブルシートはクッション厚がやや薄いように見えるが、ステッチがあしらわれたスエード調表皮の採用等、なかなか上質な仕上がりを披露している。
車体左側、サイドカバー後方のキーロックを解錠するとシートは簡単に脱着できる。ほぼストレートに伸びるシートレール。バッテリー他の電装部品が納められている。
シートエンドとショートフェンダーを組み合わせたリヤビュー。テール/ストップランプはLED式だが、クリアレンズのウインカーには10Wのオレンジバルブが使用されている。

ツインエンジン車スポーツモデルとしていかにもオーソドックスなフォルムである。

◼️主要諸元◼️

エンジンタイプ:水冷並列2気筒SOHC 8バルブ 270°クランク

排気量:900cc

ボア・ストローク:84.6×80mm

圧縮比:11.0:1

最高出力:65PS(47.8kW)/7500rpm

最大トルク:80Nm/3800rpm

吸気システム:ライドバイワイヤ、マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射

排気システム:2-INTO-2 エグゾーストシステム(ブラシ仕上げ)

駆動方式:Oリングチェーン

クラッチ:湿式多板式アシスト付

トランスミッション:5速

一次減速比:1,257(93/74)

二次減速比:2,412(41/17)

ギヤ比:

1速:3.500(49/14)

2速:2.500(45/18)

3速:1.850(37/20)

4速:1.480(37/25)

5速:1.296(35/27)



フレーム:鋼管製クレードル

スイングアーム:鋼管製両持ちタイプ

ホイール(前/後):鋳造アルミ合金、マルチスポーク、18x2.75インチ / 鋳造アルミ合金、マルチスポーク、17x4.25インチ

タイヤ(前/後):100/90-18 / 150/70R-17

サスペンション(前/後): KYB製φ41mmフォーク/ KYB製ツインショック、プリロード調整機能

ホイールトラベル(前/後):120mm / 120mm

ブレーキ(前/後):φ 310mmシングルフローティングディスク、Brembo製対向4ピストンキャリパー、ABS / φ255mmシングルディスク、Nissin製2ピストンフローティングキャリパー、ABS



全幅:785mm

全高:1114mm (除くミラー)

シート高:760mm

ホイールベース:1415mm

キャスター:25.1 º

トレール:102,4mm

車両重量(乾燥):210kg(198Kg)

燃料タンク容量:12.0L

⚫️試乗後の一言!

車格とパフォーマンス、心身に馴染むそのフィット感が素晴らしい。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 これぞモーターサイクルだ!と唸らせる正統派、トライアンフ・ストリートツインに試乗