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内燃機関超基礎講座 | 2ストロークエンジンの構造、4ストとどう違うか


4ストに対する「2スト」。何が2なのか。乗用車用エンジンとはどこが違うのか。

 ご存じのように2020年7月現在、少なくとも日欧米の市販乗用車においては全数が4ストロークサイクル(4T)エンジンを採用している。二輪車ではかつて、小排気量車を中心に2ストロークサイクル(2T)エンジンが大勢を占めていたが排ガス規制に対応できず、現在の搭載車種はごく少数にとどまる。




 2Tエンジンは、下のイラストのようにクランクシャフト1回転で1回の燃焼になるため、排気行程の最後は吸気行程と重なり、吸い込んだ新気で燃焼済みガスを押し出す。圧縮行程は吸気ポートと排気ポートの両方が閉じる位置までピストンが上昇してから始まる。4Tエンジンが燃焼室とシリンダーというひとつの部屋で仕事をしているのに対し、2Tエンジンはクランクケースにおいても仕事をし、吸気/圧縮/膨張/排気の各行程が同時並行になされているところに特徴がある。一見すると合理的だが排気に燃料が混ざってしまい排出ガス性能が悪化する欠点がある。

 2Tエンジンの動きを追ってみよう。エンジン各部はシリンダーおよびクランクケースにガス流出のための穴=ポートが穿たれている。そのポートへ/ポートからのガス流入/排出をコントロールするのは、シリンダーにおいてはピストンの側壁、クランクケースにおいては負圧によるリードバルブの開閉が担う。

 掃気というプロセスは近年4Tエンジンにおいても重要になっている現象で、出力と効率を得るためにシリンダー内の排ガスを極力追い出し、新気を充填することを指す。2Tエンジンの場合は排ガスを追い出すための排気ポートは先述のようにピストン壁面で開閉する構造。上の図は下死点からピストンが上昇し始める状態で、排気ポートは全開の状態にある。同時に掃気ポートも全開の状態にあり、「燃焼を終えて外へ出たがっている排ガス」と「クランクケース内で圧縮されやっと掃気ポートという出口を見つけた混合気」が勢いよくシリンダー内で交換されている。




 お察しのように、シリンダーにおけるポートの位置と形状によって、混合気/排ガスをいつどれだけ流入/排出するかを決めることができる。2Tエンジンにとってのカムプロファイルと言えるだろう。

 上はピストンがもうすぐ上死点に達する状態。シリンダー/燃焼室では混合気が圧縮されているのと同時に、ピストン下側のクランクケースを含む空間は負圧になり、すると吸気ポートに設けられたワンウェイのリードバルブが開いて新気(多くの場合はキャブレターからの混合気)を吸い込む。




 本図は「クランクケースリードバルブ式」と呼ばれる方式で、ほかにもシリンダーに吸気ポートを直接設ける「ピストンバルブ式」、クランクに一部切り欠きを設けてその間を吸気工程とする「ロータリーバルブ式」などがある。

 上死点を過ぎピストンが下降し始めたところ。上死点付近でスパークプラグで着火、膨張行程を得るのは4Tエンジンと同様。そのとき腰下では、すでにリードバルブが閉じて混合気で満たされているクランクケース内で圧縮が始まっている。当然、掃気ポートも排気ポートも閉じていなければならない。




 そして、混合気がクランクベアリングやメインベアリングに直接触れている状態にあることも図からご理解いただけるだろう。そのために2Tエンジンでは燃料に潤滑油(エンジンオイル)を混合し、直接潤滑している。あの排ガスの白煙やにおいは、このオイルも燃やしているからである。

 ピストンが下死点に達しようという状態。排気ポートが開き始め、燃焼を終えて行き場を失った排ガスはポートが開くと同時に勢いよくシリンダーの外へ流出する。腰下ではどんどん圧縮される混合気が掃気ポートが開くのを待ち受けている状態にある。




 2Tエンジンの難しいところは、先述のように排ガス中に一部未燃焼の混合気が混じってしまうこと。じつはその未燃焼ガスを一部シリンダー内に戻し再燃焼させることも2Tエンジンの特質である。その役目を担うのが、胃袋のような格好をしたチャンバーと呼ばれる排気管構造。どこを膨らませるか、どれだけ膨らませるかでその戻り量とタイミングをコントロールしている。

エンジンの周りをのたうちまわるような排気管「チャンバー」の様子。(PHOTO:YAMAHA)

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