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デジタルルームミラーのメリット/デメリット——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第58弾


最近、流行の兆しのある装備として、デジタル式のルームミラーがある。リヤガラス上部に設置したカメラの映像を、ルームミラーに設置した液晶ディスプレイに映し出す装置だ。今回は、この技術の特質について、考察してみたい。


TEXT;安藤 眞(ANDO Makoto)

 まずはメリットから列挙してみよう。



①後方視界を遮られることがない。


 カメラはリヤガラスより後ろを映すため、荷物や乗員、ボディのピラー類によって後方視界を遮られることがない。視野角はカメラの画角によって決まるため、より広い視界が得られる。



②ボディデザインの自由度が高まる。


 視野角がリヤガラスの面積に依存しないため、リヤデッキを高くしたり、後方に向けて絞り込んだデザインも可能になる。



③体格の異なるドライバーが共用しても、角度の微調整をする必要がない。


 デジタルミラーの映像は、テレビやスマホの画面と同じように、観る角度が変わっても映し出される画像の向きは変化しない。だからドライバーの体格が異なっても、角度を微調整する必要がない。



④暗所性能を高めれば、暗い環境でも光学ミラーより明るく見える。


 デジカメでISO感度を高めると、夜でも昼間のように撮れるのと同じで、夜間でも明るい映像を見ることができる。

(PHOTO:HONDA)

 続いてデメリットを挙げてみよう。コストがかかるとか電力消費があるとか、当たり前の話は割愛する。



①焦点距離が液晶面になるため、目のピント合わせ(焦点追従)が遅れる。


 これは特に、加齢によって焦点調節機能が衰え始めた(僕のような)ドライバーにはゆゆしき問題。光学式ミラーの場合、焦点距離は実像と同じになるため、前方を注視した状態からルームミラーに視線を移しても、焦点距離はほぼ同じでピントが合う。一方でデジタルミラーは、焦点を液晶面に合わせる必要があるため、前方から視点を移したり、ドアミラー〜ルームミラーと連続して視線移動をした場合、焦点距離の移動量が大きく、瞬時には追従できないことも少なくない。実際に使用してみても、最初はピントが合わずにクルマ酔いのような状態になった。慣れるにつれて、ピントの合う速さは上がってきたが、それでも光学ミラー同等にはならないし、焦点調整する筋肉の稼働が大きいことも明確に感じられた(たぶん疲労が蓄積する)。



②ダイナミックレンジが人の目より狭い。


 ダイナミックレンジとは、対応可能な明暗差のこと。デジカメで写真を撮ると、露出が暗いところに引っ張られて明るい部分が白飛びしたり(晴天時に遠くにある雪山を撮ればわかる)、逆に明るいところに引っ張られて暗い部分が潰れてしまったり(海バックの逆光で人物写真を撮ればわかる)。これを克服するために、露出違いの複数の画像を合成する技術が使われているが、まだ人の目には及んでいない。



③フリッカーが出る製品がある。


 デジタルミラーは、静止画を連続撮影したものをパラパラ漫画のように再生して動画化しているため、細かく点滅を繰り返しているLEDランプは消灯時の画像が挟まることがあり、明るさがちらつく“フリッカー現象”を生じることがある。前方を注視していても、視野角内にあるデジタルミラーでこれが強く出ると、後続車がウィンカーを出したかと錯覚することがあり、確認に気を取られてしまう。最近、日産がキックスに搭載したデジタルミラーには、これを解消する技術が採用されたので、いずれ改善に向かうと思うが。

Honda eのサイドミラー。カメラを備えるだけなのでこれだけ小さくなる。(PHOTO:HONDA)

サイドカメラの画像はダッシュボード端部にモニター出力として表示。サイドミラーによる死角がなくなる。(ILLUST:HONDA)

 デメリットのうち、後者のふたつは技術開発によってカバーされていくと思うが、焦点距離について対応するのは難しそう。特に、フロントガラスの傾斜が強いデザインのモデルは、ルームミラーの位置がドライバーに近くなり、それに応じて焦点距離も近くなるから、目の負担はより大きくなる。


 デジタル映像ならディスプレイの設置場所はどこでも良いのだから、光学式ミラーとは分離してしまい、ダッシュボードの奥のほうに付けるとか、必要なときだけ呼び出して、マルチインフォメーションディスプレイに表示させるとか、新たな表示方法を考えたほうが良いのではないかと思う。


 いずれにしても、選択を考えているなら、少し長い時間試乗して(できれば暗い場所も走っておきたい)、自分の感覚に合うかどうか、よく確認してから判断したほうがいい。

レクサスESのデジタルアウターミラー。量産車で世界初採用である。(PHOTO:LEXUS)

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