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“マッキナとクルマは別物” トヨタ・ヤリスと乗り比べてみたフィアット・パンダの『価値』 同条件で燃費を計ったら、パンダ、大健闘!


最新のトヨタ・ヤリスとイタリアの愛すべきピッコロ・マッキナ、フィアット・パンダを同日、同コースで比較試乗してみた。見えてきたのは、価値観・クルマ観の違い。燃費はなかなか興味深い結果となった。


TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

フィアット・パンダはツボを押さえている

こうしてみると、やはりパンダは小さい。

 厳密にいえばAセグメントとBセグメントでセグメントの違いはあるけれども、たまたま同じタイミングでフィアット・パンダ(イージー:車両本体価格224万円)とトヨタ・ヤリス(Z:車両本体価格192万6000円)があったので、乗り比べをしてみた。




 交互に乗ってみると、プロダクトとしての出来不出来を論じる前に、イタリアと日本におけるクルマ観の違いに思いを巡らせたくなる。イタリアではクルマをマッキナ(macchina)と呼ぶ。macchinaはもともと「機械」という意味だ。英語でいえばマシン(machine)である。別の表現にアウトモビーレ(automobile)があるが、日本でも自動車よりクルマ(車)のほうが日常的に使われているように、イタリアでクルマといえばマッキナだ。

現行パンダは3代目。デビューは2011年だ。

 話はそれるが(最初からそれているともいえる)、フィアット(FIAT)の車名はFabrica Italiana Automobili Torino(ファブリカ・イタリアーナ・アウトモビーリ・トリノ)の頭文字をつなげたもので、トリノ自動車製造所の意味だ。トヨタも日産も車名にはクルマを使っておらず、自動車を使っている。自動車はフォーマル、クルマはカジュアル。アウトモビーレはフォーマルで、マッキナはカジュアルだ。




 もっと話をそらすと、マッキナ・テレフォニカ(macchina telefonica)といえば電話機だし、マッキナ・フォトグラフィカ(macchina fotografica)といえば写真機(カメラ)だ。英語でソーイング・マシン(sewing machine)といえば布などを縫い合わせる機械を意味するが、それが日本に入ってきてソーイングが外れ、マシンだけが残ってなまった末に「ミシン」になった。イタリアでは「機械」がクルマなのに、日本ではミシンなのがおもしろい。

全長×全幅×全高:3655mm×1645mm×1550mm ホイールベース:2300mm。トヨタ・ヤリスZは 全長×全幅×全高:3940mm×1695mm×1500mm ホイールベース:2550mm

トレッド:F1410mm/R1405mm 乗車定員5名
車重:1070kg 前軸軸重680kg 後軸軸重390kg

 と、そんなことを考えながらパンダに乗った(もちろん、クルマのほうの)。乗ってみれば、クルマではなくマッキナである。生活に密着した機械、あるいは道具だと理解すればいい。イタリアに行って、ちょっと年季の入った二つ星〜三つ星クラスのホテルに投宿し、エレベーターを使うとする。ボタンを押すとギュイーン、ワンワンワンと大仰な音がして人を乗せる箱が動き出したのを知らせ、ガチャン、バチャンと音を立ててドアが開閉し、動き出すときも止まるときもドタン、バタンとしたショックを伴う。




 現地にいれば、そんなものだと思う。音も振動も少ない日本のビジネスホテルのエレベーターを基準に、「これはダメ」だとは思わない。人を載せて階上あるいは階下に運ぶ機械としての役割は充分に果たしている。「それで何か問題が?」と問われれば、「いや、ありません」と答えるしかない。実際のところ、問題はない。むしろ、「なんだかイタリアらしい」と微笑ましくなる。

全幅が1645mmと5ナンバーサイズのヤリス(1695mm)より50mmも狭いから、当然カップルディスタンスも近い。しかし、それが不快かというとそうでもないのが、パンダの魅力だ。

後席はけっして広くはない。
シートはクッションの厚みが心地よく、ずっと座っていたくなるほどだ。
トランスミッションはデュアロジック(DUALOGIC) ATモード付き5速シーケンシャル(5速AMT) 1速:4.100 2速:2.174 3速:1.345 4速:0.974 5速:0.766 後退:3.818 最終減速比:3.867

 パンダも同じだ。ヤリスに比べて静かかと問われれば、静かではないし、振動は大きいし、5速マニュアルトランスミッションのクラッチの断接と変速操作を自動化したAMTを採用しているせいで、発進から巡航速度に至るまでの加速時にギクシャクした動きが出る。減速時も同様だ。だが、クルマという機械としての機能に不足はない。




 前席のシートは座面のクッションがやけにたっぷりしているのに感心した。ホテルで重要なのはエレベーターが静かでショックが少ないことではなく、ベッドの寝心地がいいかどうかだ。その意味で、フィアット・パンダはツボを押さえている。よくできた日本製プロダクトの最新例であるヤリスとパンダを定量的に比較して○×を付ければ、大差を付けてヤリスの勝利になるだろう。だが、それだけでパンダを価値なしとは判断できない。

 マッキナとクルマは別物なのだ。塵ひとつ落ちていないスーパーマーケットの果物コーナーに行儀良く並んでいるスイカがヤリスなら、パンダは畑に面した道路脇にある小屋で無造作に並べられたスイカである(例えなので、メロンでもトマトでもいい)。都会的かそうでないか、大量生産的か手工業的か、洗練されているか、そんなこと気にしていないかの違いだ。どちらにも価値や魅力はあるいし、好みの問題である。

左のヤリスは1.5ℓ直列3気筒DOHC自然吸気、右のパンダは0.9ℓ直列2気筒SOHCターボ。パワーユニットの「個性」はパンダが際立つ。

 技術の視点を付け加えておくと、パンダは世にも珍しい0.9ℓ・2気筒ターボエンジンを搭載している。排気量が0.9ℓなら3気筒にするのが一般的だが、燃焼効率向上や機械損失低減の観点で2気筒にした。引き換えにトルク変動による振動の問題は出るが(実際、シーンによってはなかなか派手に出る)、振動には目をつむって効率を重視し、量産化した。大英断だ。日本ではダイハツが軽自動車向けに2気筒を検討したが、量産化に至らなかったのは振動の問題がクリアできなかったからだろう。細かいことにうるさい日本のユーザーのことを考えれば妥当な判断である。

エンジン形式:直列2気筒SOHC エンジン型式:312A2 排気量:875cc ボア×ストローク:80.5mm×86.0mm 圧縮比:10.0 最高出力:85ps(63kW)/5500rpm 最大トルク:145Nm/1900rpm 過給機: ターボチャージャー 燃料供給:PFI 使用燃料:ハイオク 燃料タンク容量:37ℓ

 TWINAIR(ツインエア)と呼ぶこのエンジンは、油圧を使って吸気側のバルブリフトとタイミングを自在に制御するMULTIAIR(マルチエア)も採用している。フィアット・パンダは大らかに見えて、その実先進的な技術を搭載したマッキナなのである。望外に燃費がいいのは、優秀なツインエアのおかげだ。

(編集部)


 首都高湾岸線大井PAでパンダとヤリスのトリップメーターをリセット。そこから、湾岸線〜横浜横須賀道路・佐原IC〜国道134号線で城ヶ島まで走り、復路は国道134号線〜逗葉新道〜横浜横須賀道路・逗子IC〜横浜新道〜第三京浜・都筑PAまで約100km走行した。




フィアット・パンダeasyのモード燃費は


JC08モード燃費:18.4km/ℓ




ヤリスZのモード燃費は


WLTCモード燃費:21.6km/ℓ


 市街地モード16.1km/ℓ


 郊外モード22.9km/ℓ


 高速道路モード24.3km/ℓ




 実走行の燃費は、次の通りだった。




走行距離:98.7km


平均速度:35km/h




パンダが17.7km/ℓ


ヤリスが18.4km/ℓ




 パンダの健闘が光るが、パンダの燃料はプレミアムであることに注意が必要だ。

フィアット・パンダ Easy


全長×全幅×全高:3655mm×1645mm×1550mm


ホイールベース:2300mm


車重:1070kg


サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式


エンジン形式:直列2気筒SOHC


エンジン型式:312A2


排気量:875cc


ボア×ストローク:80.5mm×86.0mm


圧縮比:10.0


最高出力:85ps(63kW)/5500rpm


最大トルク:145Nm/1900rpm


過給機: ターボチャージャー


燃料供給:PFI


使用燃料:ハイオク


燃料タンク容量:37ℓ




JC08モード燃費:18.4km/ℓ


車両価格○224万円

※画像ギャリーに、ヤリスとパンダの比較写真を掲載しています。画像ギャラリーへは画像をクリックするとリンクします。

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