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内燃機関超基礎講座 | ツインスクロール・ターボ ひとつのターボチャージャーで最大限の効果を狙う


今回のテーマは「ツインスクロール・ターボ Twin Scroll Turbocharger」。ご存知の通り、「ツイン」は「ターボチャージャー」にかかるわけではないので、ツインターボとは違う。さて、ツインスクロールターボとは?

ツインスクロールターボの排気マニフォールドの図解。1/4番と2/3番に分離することで排ガスの干渉を避ける構造にしている。(FIGURE:BMW)

 ターボチャージャーがエンジンからの排気を利用してタービンを回転させる以上、その効率はエンジン回転数に依存する。回転数が少なければ排気が少ないため大きなタービンを回すだけのエネルギーが足りず、回転数が大きければ小さなタービンでは容量不足なうえ排圧が高くなってエンジン自体の効率さえ落ちてしまう。常時高回転で回すことが前提のチューニング用タービンならば大きなタービンを付ければ済むが、負荷変動の大きな一般の乗用車用ではそうはいかない。最高出力ありきの大きなタービンは無駄であり、ターボラグの原因となる。


 タービンの大小の他にターボの効率を変える方法もある。タービンへ排気が入る開口部の最小断面径「A」とその中心からタービン中心間の距離「R」の比率を「A/R」と呼び、数値が小さいほどレスポンス重視、大きいほど出力重視という指標となる。A/Rをフラップで可変としてターボの働きに過渡特性を持たせたのがVG(可変ジオメトリー)ターボで、ディーゼルエンジンではもはや主流といってもよい技法であるが、ガソリンエンジンでは耐熱性の問題から採用が難しい。だから、タービンをふたつ設けてそれぞれ半分の排気量ずつを負担するツインターボが、高性能なガソリンエンジンでは一般的となった。


 高価なターボチャージャーをふたつ使うのはコストに見合わないと判断された場合は、ターボチャージャーではなく排気管側にフラップを設け、低回転では排気流路を絞って流速を上げ、高回転では排気をそのままターボに導くツインスクロール型の過給システムが使われるようになった。

スバルのツインスクロールターボ | 水平対向4気筒では片バンクのクランク位相が180度になって排気干渉の原因となる。対向するバンク同士の排気管をまとめるべきなのだが、ターボと排気管のレイアウトスペースをひねり出すのはひと苦労。

 ツインスクロールは、4気筒エンジンにおける、タービンホイールを上手に回すための手段でもある。一般的に直列4気筒エンジンでは1-3-4-2番気筒という点火順序をとる。これは1サイクルにおける等間隔点火の実現と振動の低減を図るため。この点火順序とすると排気マニフォールドの中で排ガスの流れが干渉し、スムーズに流れなくなってしまう。1番気筒が排ガスを送り出した180度CA後に3番気筒、その180度CA後に2番……という具合である。そこで、排気マニフォールドを1/4番と2/3番というふたつのグループに分ける。すると、1番気筒が排ガスを送り出した後に次にその管を排ガスが通るのは360度CA後の4番気筒、2/3番グループでも同様の状態となり、管内の排ガスの渋滞が起きにくくなるのだ。




 ツインスクロールターボというとふたつの流路を持つタービンハウジングに目が向きがちだが、排気マニフォールドの分岐管こそに妙があると思う。なお、過給はともなわないものの、同様に排ガスの渋滞を起きにくくし、シリンダー内の掃気(排ガスをスムーズに抜くことで新気の流入も促されること)も狙ったのが、マツダのSKYACTIV-Gで有名になった4-2-1排気マニフォールドである。




 ターボ車では、排気エネルギーを最大限に使えるよう排気ポートからタービンまでを最短距離で結ぶことが望ましい。昨今では吸気ポートまで一体となったごく短い管長の排気管まで使われるようになったが、こうすると排気管長さが各気筒で揃わないことで排気干渉が起きる。エンジン効率低下はもちろんタービン圧力も間欠となるため、干渉が出ないようタービン入り口を単純に2系統に分けた方式は厳密には「ツインエントリー・ターボ」として、フラップ制御式とは区別する場合もあるので、注意が必要である。


 V型エンジンでは排気が左右方向に分かれるため、ターボも片バンクずつのツインとすることがほとんどだが、排気をバンク間の内側に向けることで、ひとつのタービンで賄う例が欧州では増えている。こうすることでクロスプレーンV8の排気干渉も防ぐことができる。V6の60度バンクではそもそも吸気のレイアウトが難しいジレンマもあることから、日米でもバンク間排気V型の例が出てくる可能性もある。

BMW 4.4ℓV8 S63型のツインスクロールターボ

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