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スタートダッシュがなかなか鋭い、150ccのスクーターです! キムコ・レーシングS150試乗レポ


スクーターレースが盛んな台湾において、打倒シグナスXを旗印に2016年に誕生したのがキムコのレーシングS125であり、今回試乗した150は2017年11月より日本でも販売がスタートした上位モデルだ。世界初となるスチール製のハイドロフォーミング製法によるアンダーボーンフレームに、可変バルブ機構VVCSを採用する149cc空冷SOHC4バルブ単気筒を搭載。加熱する150ccクラスにおいて存在感を放つ健脚スクーターだ。




REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

キムコ・レーシングS150……341,000円

 昨今、150ccクラスの軽二輪スクーターが注目されている。任意保険のファミリーバイク特約が使える125cc以下の原付二種に対し、維持費の面では不利だが、高速道路など自動車専用道路を走れるというのは大きなメリットだ。それに、プラス30cc程度とはいえ、明確に体感できるほど原付二種より動力性能が高いのも魅力だろう。

車体色は写真のブルーのほかに、マットブラック、マットシルバーを用意する。
最大バンク角は40度以上を公称。さらにシングルショック化のためのマウントもあらかじめフレーム側に設けられているなど、台湾のスクーター事情の熱さが分かろうというものだ。


 キムコのレーシングシリーズは、台湾のスクーターレースで圧倒的な強さを誇っていたヤマハのシグナスXに勝つために誕生したという背景があり、最新モデルの〝S〟は2016年の夏にデビューした。日本では先に説明したとおり、125ccを境に法律や保険などが大きく変わるが、台湾では特にそうした区分がなく、150ccモデルはパワーのある上位モデルという存在だ。今回試乗したレーシングS150の場合、125をベースとしつつもボディパネルの一部を専用品に変更したり、キムコ独自の車載ネットワークシステム「noodoe(ヌードー)」を搭載するなどして、よりラグジュアリーな方向へとシフトしている。

ホイールベースは1,270mmで、これはホンダのPCX150(1,315mm)やヤマハのマジェスティS(1,405mm)よりもだいぶ短い。
レーシングS125の上位モデルという位置付けであり、排気量や装備だけでなくスタイリングも微妙に異なるのだ。


フロアボードは足を伸ばしても引いても対応できるように設計されており、ロングランにおける疲労軽減とスポーツ走行時のホールド性を両立。
シート高は790mmで、マジェスティS(795mm)とほぼ同等。身長175cmの私で左右のかかとが楽に接地し、膝も緩やかに曲がるほど足着き性は良好だ。


 またがってみて最初に感じたのは「軽い!」だった。装備重量128kgは、直接のライバルとなりそうなホンダのPCX150(131kg)やヤマハのマジェスティS(145kg)を下回っており、これは大きなアドバンテージと言えるだろう。一方、燃料タンク容量は5.7Lしかなく、PCXの8.0LやマジェSの7.4Lと比べると、1回の給油で巡航できる距離は必然的に短くなる。通勤通学に使うライダーにとって、これはマイナスポイントになりそうだ。

 エンジンを始動し、スロットルを開けてスタートする。最高出力はPCX150やマジェスティSの15psに対し、このレーシングS150は13.8psとやや低いので高をくくっていたが、同等レベルかそれ以上といってもいいほどに発進加速が力強いのだ。よくよく観察すると、クラッチスプリングが強めなのか、メーター読みで常に5000rpm付近でクラッチミートしている。このエンジンはVVCSと呼ばれる可変バルタイ機構を採用しており、6500rpmを境に吸気側がローからハイカムへと切り替わる。つまり、クラッチミートしてすぐにハイカム領域に入っているのだ。加えて、高速道路で最高速をチェックしたところ、メーター読みで100km/hを超えるか超えないかあたりだったので、減速比がローギアード気味という可能性が大きい。つまり、この二つの要素が合わさっての鋭い加速性能と考えられ、事実モトチャンプ誌2020年6月号の実走テストでは、0-100m加速で150ccクラスのトップに輝いている。




 クラッチミートする回転域が高いために微速域でややギクシャクしやすいのと、空冷ゆえにメカノイズが大きめだが、気になったのはその程度。信号待ちでも高速巡航でも体に伝わるエンジンからの微振動は少なく、これならロングツーリングでも疲れにくいだろう。




 ハンドリングは、ホイールサイズが前後とも12インチと小径なため、同社のハイホイールスクーター、ターセリーS150ほど高速安定性に優れるわけではない。だが、街乗りで常用する速度域では変にクイックすぎず、自然な扱いやすさが光る。アンダーボーンフレームの短所として、ステアリングヘッド付近の剛性不足を感じることが多いが、このレーシングS150は一部にハイドロフォーミング製法を採用したフレームにより、芯の強さが十分に伝わってくる。一方、どの速度域でも乗り心地は良好であり、レーシングを名乗っていてもストリートを犠牲にしていない点は好感が持てる。




 さて、キムコ独自の車載ネットワークシステム「noodoe」について。通常であれば「スマホとつなげますよ」程度の説明で済ませるのだが、1週間ほど使ってみたところ、その便利さにハマってしまい、別記事で紹介することにした。これは専用アプリの内容をメーターに表示するもので、各種SNSの更新通知や不在着信通知などが分かるほか、特に私が便利だと感じたのは専用のナビゲーションシステムだ。




 noodoeを採用するのは、日本のラインナップではフラッグシップのAK550のほかにこのレーシングS150だけであり、キムコの力の入れようが伝わってくる。しかも、この便利なデバイスを標準装備しながら、価格はPCX150(383,900円)やマジェスティS(379,500円)よりも安い341,000円だ。キムコのスクーターにおけるテクノロジーは世界トップクラスであり、カワサキやBMWが技術提携するほどのメーカーだ。検討する価値は大いにあるだろう。

ディテール解説

バトルアックスと名付けられた空冷SOHC4バルブ単気筒は、レーシングS125のボアφ54mmに対し、φ59mmに拡大してして排気量を124.8ccから149ccにアップ。さらに6500rpmを境に吸気側のカムをローからハイへと切り替える可変バブルタイミング機構VVCS(バリアブル・バルブリフト・コントロール・システム)を追加。水冷勢をしのぐ加速性能と低燃費の両立に成功している。
シートレールにT.H.F.(チューブ・ハイドロ・フォーミング)技術を採用し、その一部をデザインの一部に採り入れている。剛性バランスの最適化によりレーシングS125に対して1.9kgもの軽量化を達成。さらにタンデムステップステーやステムの見直しにより、車両全体では3.1kgも軽くなっている。


ペタルタイプのフローティングディスクを採用。キャリパーのマウントピッチはブレンボの4ピストンキャリパーがボルトオンでインストールできるよう65mmとなっている。
φ25.4mmピストン採用のキャリパーとφ200mmソリッドディスクを組み合わせたリヤブレーキ。ABSや前後連動システムなどは非採用。


人間工学に基づいてデザインされたシート。滑り止め効果のある表皮やクッション性の高いウレタンが採用されている。
ユニットスイングのピボットはこれまでの上吊式から下吊式とし、さらにリヤショックを高角度配置とすることで、低振動化やコーナリング性能などを向上。プリロードは5段階に調整可能だ。


XLサイズのフルフェイスヘルメットが収納できるとのアナウンス。撮影時に試したアライのVZ-RAM(オープンフェイス)の59-60サイズでは、ディフューザー干渉し、シートを閉じることができなかった。なお、ピボット部の左右にヘルメットホルダーを装備。
イグニッションキーの横に携帯電話の充電用USBポートを設置。電圧が12Vを下回ると短絡保護回路が起動し、通電が停止する仕組みだ。


キムコ独自の車載ネットワークシステム「noodoe」の表示画面をセンターにレイアウトしたメーターパネル。これについては別の記事で詳しく紹介する。バーグラフ式のタコメーターが左右にあるのがユニークだ。
凝ったデザインのミラーステーやメッキのバーエンドなど、所有欲を満たしてくれる工夫が随所に。フロントポケットやコンビニフックなど使い勝手も優秀だ。


ヘッドライトユニットはレーシングS125と共通だが、フロントカバーはより複雑なマルチレイヤーとなっている。好みに合わせて交換も容易とのこと。
テールランプのデザインもレーシングS125を踏襲するが、リヤフェンダーを含めて周辺の造型は150専用となっており、しっかりと差別化が図られている。


レーシングS150 主要諸元

エンジンタイプ:空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒 VVCS


インジェクション:KEIHINフューエルインジェクション


総排気量:149cc


内径×行程(mm):φ59×54.5


圧縮比:10.4:1


最高出力:10.1kW(13.8ps)/7,500rpm


変速機型式:CVT


始動方式:セルフ式


装備重量:128kg


全長×全幅×全高:1855mm×750mm×1100mm


シート高:790mm


軸距:1270mm


燃料タンク容量:5.7リットル


タイヤ(前):110/70-12


タイヤ(後):120/70-12


ホイール:アルミニウム


サスペンション形式(前):φ33mmテレスコピック式


サスペンション形式(後):5段階調整式ツインショック


エンジン懸架方式:水平下懸架


ブレーキ形式(前):240mmフローティングぺタルディスク


ブレーキ形式(後):200mmディスク


キャリパー(前):ピンスライドφ27mm×2ピストン


キャリパー(後):ピンスライドφ25.4mm×2ピストン


カラーラインナップ:ブルー、マットブラック、マットシルバー


メーカー保証:3年保証(距離無制限)


生産地:台湾

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