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【207馬力】街で不要の超絶スペック、BMW・S1000RRで市街地&郊外をインプレッション。


11年前にセンセーショナルなデビューを飾ったBMW・S1000RR。熟成に熟成を重ねて2019年にフルモデルチェンジを決行。5代目となった当モデルは多方面からの評判がすこぶる高い。そのスーパースポーツを長年BMWに親しんできたライダーが満を持して試乗レポート! とは言っても公道オンリーなので普段使いでの情報としてお役立てくださいませ!!




REPORT●川越 憲(KAWAGOE Ken)


PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)

BMW・S1000RR……2,313,000円〜

試乗車は上級版のMパッケージ(+40万7000円)。カーボンホイールなどを採用し、通常版よりも約3.5kg軽量化されている。カラバリはレーシングレッドとホッケンハイム・シルバー・メタリック(+2万円)の計3色展開。

 BMW初のスーパースポーツ、S1000RRは、2009年にレース(WSB)で好成績を収めた後に、2010年に市販されるという経歴を持つ異色の一台で、発売当時はひどく衝撃を受けたものだ。当時、筆者はバイク雑誌の企画でスーパースポーツ(以下、SS)対決と称し、国内4メーカーのフラッグシップSSとS1000RRを比較試乗したことがある。私的に「サーキットでの速さは、もはやライダーの腕次第である」という結論にいたった。

初代S1000RR(2009年)

 というのも、レースにおいては車両の〝力”というのは大きなウェイトを占めるが、このS1000RRのスゴイところは、日本の4メーカーが長年かけて培ってきた領域に、発売されたばかりのマシンがいきなり肩を並べてしまったことにある。それまでフラットツインエンジン最速のR1200SSも速いマシンだったが、レースなどでは国産4気筒SSに対して絶対的なパワーとフレームワークで後塵を拝していたことは否めなかった。

 一方、S1000RRはアルミツインスパーフレームに直4エンジンを搭載し、サスペンションはフロントにテレスコピック、リヤにリンク式モノサスを採用。湾曲したスイングアームやチェーンドライブなど、国産SSと同等の仕様で登場したのだが、パワー、軽さ、操安性など、全ての面で国産SSを凌駕するパフォーマンスを持っていたのだ!


 国産SSは試行錯誤を繰り返して熟成を重ねて「国産の敵は国産でしかありえない」と言われる性能を獲得してきた。それだけに、BMWの本気(マジ)は恐ろしいと実感したのである。

 そのS1000RRも発売から10年を経過し、エンジンや電子制御サスペンションなど、各部の熟成をはかり5代目を迎えた。先代は排ガス規制の適合などでカタログスペックの変更はなかったが、今回試乗する5代目は初のフルモデルチェンジとなっている。


 フロントマスクが左右対称となったエクステリアをはじめ、大きな変更点としてはエンジンに可変バルブ機構「BMW Shift Cam(シフトカム)」を採用し、最高出力は207psにアップ。もちろん、フレームも完全新設計だ。試乗したMパッケージはカーボンホイールや軽量リチウムイオンバッテリーを採用し、車重は196.5kgに抑えられている。この仕様を聞いてワクワクしないライダーがいるだろうか!?


 さらに、試乗車はオプションの「HPモータースポーツ」という、Mパッケージ専用カラーを纏っており、BMWのワークスレーサーを思わせるこのスタイルはプレミアム度も満点!

 エンジンをスタートさせると、ハイパワーマシンらしい迫力の重低音が響く。このサウンドを聞いただけでは、数々のバイクを乗りこなしてきたベテランライダーであってもBMWとは思わないほど自然なもの。またがってみると、シートがほとんど沈み込まず、身長182cmの筆者でさえしっかりと両足が着かないが、SSの中では標準的と言える。発進はアイドリングでゆっくりとクラッチをつなぐ。すると、スロットル操作は必要ないくらいスルスルゥ~っと加速していく。筆者が普段乗っているのは、旧型フラットツインエンジンを積んだR1150GSなので、S1000RRの低回転から溢れる怒涛のトルクに緊張が隠せない。


 回転計のメモリは1万6000rpmまで刻まれ、レッドゾーンは1万4000rpmに設定。しかし、街中では6000rpmも回せば十分。シフトカム機構の高速カムシャフトに切り替わる9000rpm以上の回転数を使う機会は、公道ではほぼないだろう。

 コーナリングは、立ち気味のキャスター角により非常に旋回性能が高いのだが、慣れないうちはシート高824mmの高い位置から倒し込んでいくことに勇気が必要。しかし、乗り込んでいくうちに、前後タイヤの接地感が高く、限界が極めて高いことを肌で感じられる。そうなれば、相当に攻め込んでいけるだろう。身体を伏せると、フロントフォークの延長戦上に頭が置けるので前輪に荷重が掛けやすく、ブレーキタッチがダイレクトなのでフロントのグリップをコントロールしやすいのも特筆点だ。


 数時間乗っていると、先代モデルより乗りやすいと思えるようになった。もちろん、トラクションコントロールや電子サスなどで、ライダーが気付かないうちにマシンがカバーしてくれる面も大きく影響しているのだろう。


 秀逸だったのが「shiftアシストコントロール機構」だ。先代から装備された機構ではあるが、パーツ自体が刷新されてギアのつながりが各段にスムーズになっていた。クラッチは発進時と停止時以外に使うことがなく普通に走ることが可能。それほど自然なシフトアップ&ダウンをバイクが行ってくれているのだ。限界スピードで試したわけではないが、この機構はコンマ1秒を争うサーキットでも有効なのではないだろうか。

 そして、最高出力が207psとなったエンジンだが、カタログ公表値の最高時速305km/hという数値は決して大げさではないはず。アイドリング発進からシフトカムが切り替わる9000rpm以上までスムーズに回り、溢れんばかりのトルクを発揮するが、1万rpmから上の回転数がもっとパワフルになる。その回転数で6速に入れられるステージは、ストレートが長く視界の広いサーキットでしかありえない。とにかく恐ろしく速いはずで、常人の目と身体では怒涛の加速についていけないかもしれない。


 もっとも、仮にサーキットを走ったとしても、筆者の腕ではS1000RRのポテンシャルの全てを引きだすことはさすがに難しいため、真相は憶測で申し訳ない。腕に自信のあるライダーはこのスーパースポーツの本領はぜひサーキットで体験してほしい!などと、昔のゲーム攻略本みたいな締めでお茶をにごすとしよう(笑)。

●足つきチェック(ライダー身長182cm)





 ブーツを履いているから見た目は不安なさそうだが、身長182cm体重70kgの筆者で、かかとが大きく浮いてしまう。先代モデルよりハンドルがライダー側に近付いたようで自然に前傾姿勢がとれるため、ポジションはコンパクトに感じる。一旦走り出してしまえば、スポーツ走行をするのにベストポジションと言えるだろう。


 今回の試乗では試していないが、スイングアームのピボット位置を変更できるMシャシーキットを装備しており、リヤサスペンションの車高調整機構と合わせて、自分に合ったポジションや乗り味を探る楽しみもある。

●ディテール解説

4ピストンのラジアルマウントキャリパーはHAYES(ヘイズ)製を採用。φ320mmダブルディスクとの組み合わせは申し分なしのストッピングパワーを発揮!

Mパッケージモデルは専用の“Mカーボンホイール”を装備する。車重はもちろん、バネ下重量の軽減にも大きく貢献。

リヤブレーキはφ220mmシングルディスクと、ブレンボ製1ポットフローティングキャリパーのコンビ。フロントと同じくリヤホイールもカーボン製だ。

フロントマスクは先代までのアシンメトリー形状から、左右対称型のデザインとなった。ヘッドライトはLED化とともに小型化され、ウインカーがミラー一体型となったため、よりソリッドな顔つきに! ちなみにウインカーにはオートキャンセラーが追加されている。

ナンバープレートホルダーにLEDウインカーを配置。テールランプはLEDウインカー内に収められ、リヤビューがさらに先鋭化された。ウインカーとテールランプを一体化することで、サーキットでの保安部品の着脱が大幅に簡略化された。



倒立式のテレスコピック式フォークは先代のザックス製からマルゾッキ製に変更。太さはφ46mm→φ45mmへと細身になった。左側フロントフォークの電子制御システム「DDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)」が伸び側・縮み側も調整し、速度や路面状況に応じて最適な車体姿勢を作り出す。右側フロントフォークはスプリングを内蔵したセパレート方式でプリロード調整も右側のみで行う。

フロントと同じく電子制御システム「DDC」が伸び側・縮み側のダンピングを調整。エンジンの熱の影響を受けにくくするため、ボトムリンク式からアッパーリンク式に変更された。ストローク量を増やしつつスプリングレートを低めに設定することで、しなやかで初期動作から理想的な減衰圧を生み出せるようになった。

新たに可変バルブ機構「BMW Shift Cam(シフトカム)」を搭載しながら、車両重量は約4kgの軽量化に成功! 排気量やボア×ストロークは先代と同じだが、最高出力は199ps→207psへ8psアップ。最大トルクは先代と同じ113Nmだが、発生回転数を1万500rpm→1万1000rpmへと微変動してトルクカーブを適正化している。

シフトペダルにはshiftアシストコントロール機構を装備。クラッチは発進時と停止時以外に使用することなく、いたって普通に走ることが可能だ。シーソータイプのリンクになり、簡単に逆チェンジに変更できるようになった。

ハンドルは先代モデルから絞り角が緩やかになり、さらに幅広となった。キーレス仕様ではないので、中央からすこし左にずらした位置にメインキーシリンダーを配置している。

メーターは他の新型モデルと同様に6.5インチのTFTディスプレイとなり、画面を切り替えることで表示される情報量が格段に増えた。回転計はエンジンのコンディションでレッドゾーンが変化する。

各種モードの切り替えやクルーズコントロールなどは、左スイッチボックスに集中させている。ジョグダイヤル式のマルチコントローラーを使用して、メーターのTFTディスプレイに表示される画面上で調整する。標準装備のエンジン出力モード「ライディングモードPro」は「レイン」、「ロード」、「ダイナミック」、「レース」の4モードがあり、ABSプロ、トラクション/ウィリーコントロール(DTC)、エンジンブレーキコントロールなど、それぞれのモードに合わせた最適な設定で作動。さらにオプションで「レースプロ」モードが3種追加される。

MパッケージにはMマークの入った特別仕様のシートが装着される。スタンダードより表皮が滑りにくく、クッションは硬質で、よりスポーツライディングに適した作り。タンデムシート下は小物入れスペースがあるが、標準装備のETC2.0車載器が装着されているので余分なモノが入る余裕はあまりない。

■主要諸元■

■車体寸法・重量


全長:2,070 mm


全幅(ミラーを除く):740 mm


全高(ミラーを除く):1,160 mm


シート高:824 mm


インナーレッグ曲線:1,827 mm


車両重量:200 kg (Mパッケージは196.5 kg)


燃料タンク容量:16.5 L(リザーブ約4L)




■エンジン


エンジン型式:水冷並列4気筒4ストロークエンジン4バルブ(チタン製)


ボア×ストローク:80 mm x 49.7 mm


排気量:999 cc


最高出力:152 kW (207 hp) / 13,500 rpm


最大トルク:113 Nm / 11,000 rpm


圧縮比:13.3:1


点火/噴射制御:電子制御インジェクション、可変インテークパイプ長


エミッション制御:クローズドループ制御式触媒コンバーター(EURO4排ガス規制適合)


最高速度:305 km/h


燃料消費率(WMTCモード値クラス3 ※1名乗車時):15.62km/L


燃料種類:無鉛プレミアムガソリン




■電装係


オルタネータ:450 W


バッテリー:12V / 8Ah(メンテナンスフリー)




■パワートランスミッション


クラッチ:湿式多板(アンチホッピング)


ミッション:6速


駆動方式:チェーン式




■車体・サスペンション


フレーム:アルミ合金製ブリッジフレーム


フロントサスペンション:倒立式テレスコピックフォーク(45mm径)、調整式スプリングプリロード、調整式リバウンド/圧縮ダンピング


リヤサスペンション:アルミニウム製ビームスイングアーム、フル フロート Pro、センタースプリングストラット、調整式リバウンド/圧縮ダンピング、プリロード調整機能付き


サスペンサスペンションストローク(フロント/リヤ):120mm/117 mm


軸間距離:1,440 mm


キャスター距離(トレール):93.9 mm


ステアリングヘッド角度:66.9°


ホイールアルミキャストホイール(Mパッケージはカーボンホイール)


ホイールサイズ:


 フロント3.50 - 17"


 リヤ:6.00 - 17"


タイヤサイズ:


 フロント:120/70 ZR 17


 リヤ:190/55 ZR 17(Mパッケージは200/55 ZR 17)


ブレーキ:


 フロント:ツインディスクブレーキ、直径320mm、ラジアル4ピストン固定式キャリパー


 リヤ:シングルディスクブレーキ、直径220mm、1ピストンフローティングキャリパー


ABS:BMW Motorrad Race ABS 、パーシャリーインテグラル

●ライダープロフィール

川越 憲




1967年生まれ。有限会社遊文社・代表取締役にしてバイク誌を中心に活動するフリーライター・編集。現在所有するバイクはBMW R1150GS・BUELL XB9SX・TZR250(1KT)・NSR250R(MC18)etc.。 趣味は草野球、バレーボール、映画鑑賞(16mm映写技師免許所持)。

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