2019年に登場して話題を呼んだC400Xは、BMWのスクーター「Cシリーズ」の第4弾! スパルタン&コンパクトな外観にスポーツバイクを彷彿とさせる装備を持ち合わせ、手頃な排気量から街乗りからツーリングまで幅広くこなしてくれる。日本国内では下火となっているアンダー400ccクラスのスクーターを牽引する存在だ。今回は、往復300kmの日帰りツーリング(雨天走行含む)でイザお試し!



REPORT●川越 憲(KAWAGOE Ken)

PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)

BMW・C400X……865,000 円〜

異形ヘッドライトやスクエア調ボディ、ショートバイザーなどアグレッシブな印象が漂うスタイリング。ボディ色は、アルピン・ホワイト(試乗車)のほか、ブラック・ストーム・メタリック、ゼニス・ブルー・メタリック(+6,000円)の計3カラー展開。

 BMWのスクーター(Cシリーズ)といえば、2012年に登場したC600SPORTやC650GTの大型スクーターの印象が強い。2000年に発売された屋根つきのC1シリーズ(125cc/175cc)もあるが、日本未発売だし、特殊な車両なのでここでは除外しよう。また、2014年に発売された電動スクーターのC Evolutionも大型に入る部類の車格で、BMWのCシリーズは大排気量路線をさらに充実させていくと思われた。

 しかし、次に登場してきたのが2019年1月発売のC400Xというアンダー400㏄のミドルクラスだった。400と命名されてはいるが実際の排気量は349ccである。日本の感覚では中途半端な排気量に思えるが、これは欧州の免許事情(最高出力規制)によるものだろう。

 今回試乗したC400Xの最高出力は25kw(34ps)で、この数値は欧州の免許制度で免許取得後2年間は25kw以下の馬力のバイクしか乗れないことや、保険も25kwを境に料金が上がることが大きい。排気量は関係なく(600cc以上から保険料は大きく上がるが)、欧州ではスクーターとしてコンパクトで扱いやすいエンジンを作る場合に349ccが妥当というわけだ。なお、C400Xをベースにツアラー性能を高め、ラグジュアリー路線に振ったC400GTもリリースされている。

国産アンダー400ccスクーターでC400Xの実質的なライバルに当たるのはバーグマン400だろう。比較的大柄なボディはゆったりとしたポジションが取れ、容量42Lの大きな収納も自慢! 快適な走行性・機能を持ち合わせ、従来のビッグスクらしさを残しつつアップデートさせたハイエンドな一台だ。

 さて、C400Xのライバルとなるのは、日本で買える現行モデルに限定するとスズキバーグマン400のほか、キムコ(台湾)のエキサイティング400i、ダウンタウン350iなどがあげられる。ちなみに、BMWのC650シリーズのエンジンはキムコが供給元だ。筆者は過去にバーグマン400に試乗したことがあるので比較してみると、ポジションは少し大柄で腰高だが、車格は同じくらいか、少しコンパクトに感じられる。ただ、取り回しの段階から、車体や全体の剛性感が高く、一般的なスクーターではなく“モーターサイクル”を扱っていると感じた点で、単純な比較はできないなと思った。懸架方式や駆動方式、フレーム設計などが異なるヤマハTMAX530やアプリリアSRV850並みとはいかないが、一般的なユニットスイング式のスクーターの中ではスポーティな部類に入るだろう。

 走り出してみてもその印象は変わらない。新開発の水冷OHC4バルブ単気筒エンジンは349ccの排気量ならではのトルク厚みがあり、高速道路では6000rpm弱で100km/h巡航をキープできるが、まだまだ伸びていく感触。日本でメジャーな250ccスクーター、いわゆる“ビッグスク”にはない余裕が感じられるのは頼もしい限り! また、駆動系(CVT)のつながりもよく、変速にムラが少ない。ガツンという押し出し感がない分、アクセルをラフに開け閉めできる。低回転域からトップエンドまでシルキーに回ってくれて、欲しい時にしっかりと加速してくれるから乗っていて気持ちが良い。

 エンジンパフォーマンスもさることながら、さらに秀逸なのがブレーキだ。専用開発されたスチール鋼管フレームと、“モーターサイクル感”のある高剛性の前後サスペンションのおかげもあって制動力は文句なし! カッチリと効かせられるダイレクトな操作感とともに大満足の性能だ。試乗時の後半には大雨が降ってきて、濡れた路面でのワインディングも走ったのだが、コントローラブル&ABSのブレーキで不安はなかった。

 駆動レイアウトにユニットスイングを採用する一般的なスクーターは、スロットルのオンオフでリヤに特有の上下動が発生するが、C400Xにはリヤの不快な動きが少ないことも悪天での安心感に貢献! さらに、ASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)と呼ばれるトラクションコントロールシステムが搭載されていることも多大な恩恵があったと思う。

 また、シート下のスペースは、「BMWフレックスケースシステム」と呼ばれ、パッと見たところは底が浅くてさほど容量はなさそうなのだが、ロックを外すと折りたたまれた蛇腹が下に広がる仕組みになっている。下方向に拡張することでフルフェイスヘルメットが収納できるほどのスペースが確保できるというわけだ。なお、蛇腹を広げると下部がタイヤに干渉するので走行中は使用不可。停車時にヘルメットが収納できるアイデアは理にかなっている! 拡張している時はエンジンがかからないから、戻し忘れの心配がないのも嬉しい配慮だ。このギミックによって野暮ったさを払拭し、車体のスタイリッシュを引き立たせることに成功している。

 ビッグスクーターブームは過去のものとなったが、そのおかげで利便性や遠距離も走れるパフォーマンスなど誰もが知るところとなった。400㏄クラスは車体価格もそれなりにするし、車検もあるから下火ではあるものの、パワフルな走りは250㏄以下では得られない優雅さがある。それでいて大型クラスよりコンパクトだから普段使いの足としても有用だ。C400Xのコンセプトは「都会に最適なミドルサイズサイズスクーター」なので、セカンドバイク的な使い方も視野に入れるユーザーにはもってこいだろう。

●足つきチェック(ライダー身長182cm)





シート高は775mmと標準的な数値だが、シートや車体に幅がある分、足着き性は並。身長182cmの筆者なら、シート前方に座れば踵が若干浮き気味になるけれど、両足がしっかり接地する。グリップ位置は一般的な250ccスクーターより高めなのでアップライトなライディングポジションになる。ネックなのはセンタートンネル部分が高めだから跨ぎにくいことだろうか。

●ディテール解説

GS風の左右非対称LEDヘッドライトによって、とくにフェイス周りはスクーターというよりアドベンチャースポーツ色が強い。

ウインドスクリーンは固定式。ツアラーとしてみるとコンパクトだが、シティコミューターと考えるとちょうどいいサイズといえる。サイズ以上に高速道路でのウインドプロテクション効果が高いと感じた。

足周りはフロント15インチ、リヤ14インチの異形サイズ。ブレーキはインドに工場があるBYBRE(バイブレ)製。φ265mmのダブルディスクと4ポットキャリパーの組み合わせで高い制動力を発揮。サスペンションはテレスコピックタイプを採用。

リヤは14インチホイールに150/70のワイドタイヤをセットする。リヤのシングルディスクはフロントと同じφ265mmで1ポットフローティングキャリパーを装備。



メーターは6.5インチフルカラーTFT液晶モニター。スマートフォンをBluthooth接続できるオプション「BMW Motorradコネクティビティ」を追加すると、通話や音楽視聴、ナビなどのアプリが使用できる。

ミドルクラスではまだまだ少ない“キーレスエントリー”。ポケットやバッグに忍ばせておくだけでOKだ。メインキーはプッシュ式で、リヤシートはメインキーをオンの状態でフロント下部のスイッチを押すと開く。ハンドルは広すぎず狭すぎず丁度良いサイズだ。



左スイッチボックスにはメニュー操作ボタンやハザードなどのほか、マルチコントロールパネルを操作するジョグダイヤルを装備。なお、冬場に嬉しいグリップヒーターを標準装備しており、3段階から暖かさを調整できる。右スイッチボックスにはグリップヒーター、シートヒーターのオン/オフスイッチ。

左右のグローブボックスは容量こそ多くはないが使いやすい設計。右側にある12V電源ソケットはスマートフォンなどの充電ができるので日常使いでも役立つ!

前後一体式シートは、ライダー側とパッセンジャー側に段差があり、表皮も滑りにくいから腰周りのホールド性はまずまず。ツートン柄がスポーティなイメージだ。



シート下はヘルメット2個が収納可。前方はオープンフェイス、後方は拡張機能を使ってフルフェイスが入るからタンデムもOK! 停車時のみ下方向に収納スペースが広がる仕組みなので戻し忘れの心配もない。

LEDを採用した小径テールランプやクリアレンズのウインカーなど、リヤビューにクローズアップするとスポーツバイクと変わらない雰囲気が漂う。

トライアングル形状のサイレンサーがカスタム感満点だ! リヤサスはプリロード調整ができる2本仕様で、ストローク量112mmを確保。

センタートンネル部分に給油口を配置。エアプレーンキャップは、小排気量スクーターによくある樹脂カバーに比べて耐久性や高級感が高い。
パッセンジャー用のステップは可倒式を採用。フットボードより踏ん張りが利くので、パッセンジャーもバイクを操る一体感が得やすい。


■主要諸元■

■車体寸法・重量

全長:2,210 mm

全幅(ミラーを除く):780 mm

全高(ミラーを除く):1,310 mm

シート高:775 mm

車両重量:205 kg

燃料タンク容量:12.8 L (リザーブ約4 L)



■エンジン

エンジン型式:水冷4ストローク単気筒・横置

ボア×ストローク:80 mm x 69.6 mm

排気量:349 cc

最高出力:25 kW (34 hp) /7.500 rpm

最大トルク:35 Nm/6.000 rpm

圧縮比:11.5:1

点火/噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム(BMS-KP)



最高速度:139 km/h

燃料消費率(WMTCモード値クラス3 ※1名乗車時):28.57km/L

燃料種類:無鉛レギュラーガソリン



■電装係

オルタネーター:508 W

バッテリー:12 V/9 Ah(メンテナンスフリー)



■パワートランスミッション

クラッチ:遠心式乾式クラッチ

ミッション: CVT

駆動方式:ギアホイールセット



■車体・サスペンション

フレーム:スチールパイプフレーム、アルミダイキャストシャーシ

フロントサスペンション:テレスコピックフロントフォーク(35 mm径)

リヤサスペンション:アルミニウムダブルスイングアーム、ダブルスプリングストラット、プリロード調整機能付き

サスペンションストローク:

 フロント:110mm

 リヤ:112mm

軸間距離:1,565 mm

キャスター:81 mm

ステアリングヘッド角度:63.6°

ホイール:アルミキャストホイール

ホイールサイズ:

 フロント:3.50 x 15""

 リヤ:4.25 x 14""

タイヤサイズ:

 フロント:120/70 15"

 リヤ:150/70 14"

ブレーキ:

 フロント:ダブルディスクブレーキ(265 mm)、4ピストンキャリパー

 リヤ:シングルディスクブレーキ(265 mm)、1ピストンフローティングキャリパー

ABS:BMW Motorrad ABS

情報提供元:MotorFan
記事名:「 スポーティな機能で雨天走行も安心感大!