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トヨタ・グランエース 「最高のおもてなし」を目指した国産フルサイズ豪華ワゴンの走りは、ビッグサイズの小回り性は? VIP送迎車としての資質をチェック


豪華な2列目石をそのまま3列目にも……という室内の充実ぶりが話題に上がるグランエース。その対象は、パーソナルユースと言うよりむしろプロユースに向けられている。それでも走りは同乗者が十分にくつろげるよう、相当なレベルに磨き上げられているのだ。




REPORT●高平 高輝(TAKAHIRA Koki)


PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)

そのボディサイズにまず圧倒される

 実物は想像以上の存在感である。全長5.3m、全幅・全高ともにほぼ2mというグランエースの巨体を前にすると、さすがに圧倒されるが、最初に感じたのは現在静かなブームになっているキャンピングカーのベース車両として打ってつけではないかということだ。実際聞くところによれば、2019年の東京モーターショーでのお披露目の後、キャンピングカーメーカーからの引き合いが相次いだという。日本車ベースのキャンパーは、これまでは事実上ハイエースかダイナなどのトラックをベース車両としてキャビンを架装するタイプしかなかったが、そこにさらに大きなボディで快適性をも重視した、しかも最新のクリーンディーゼルエンジンを搭載したミニバンが登場したのだからキャンパー関係者が色めき立つのも当然だ。




 ただし、新型グランエースの目的はあくまで送迎車ユースだと開発陣は言う。6名または8名分の豪華なシートが装備されていることからもそれは明らかだ。トヨタにはこのセグメントの絶対王者たるアルファード/ヴェルファイアがあるが、あちらは家族持ちのオーナードライバー用、こちらは基本的に法人向けという棲み分けがあるらしい。事実、昨年12月半ばの発売から1ヵ月あまりの間に950台もの受注があったというが(「年間」の販売目標は600台!)、そのうちおよそ7割が法人からのオーダーだという。それでも装備を簡略化したバン仕様の要望が今後も寄せられるはずである.




 グランエースには6人乗りの「プレミアム」と8人乗りの「G」のふたつのグレードが用意されているが、基本メカニズムや装備に違いはなく、シート配列とシートそのものが異なるだけ。「プレミアム」は2×3列の6人乗りで、後席4名分のシートはすべて独立したいわゆるキャプテンシートで電動式リクライニングやオットマン、シートヒーターも標準装備されるエグゼクティブパワーシートだ。シートベルトも椅子に内蔵されており一脚あたりの重量は約25㎏に達するという。




 一方8人乗りの「G」は2×4列シート配列。2列目シートは「プレミアム」と同じくエグゼクティブパワーシートだが、3列目はマニュアル式のキャプテンシート、さらに4列目はベンチタイプのチップアップシートとなる。これは、使用しない場合には座面クッションをV字型に跳ね上げて(チップアップ)前方に移動させることでラゲッジスペースを拡大できるシートのことである。




 同じ室内スペースに3列と4列シートだから、乗員に与えられるスペースは当然大きく異なる。6人乗り「プレミアム」の2列目、3列目シートは文字通り、贅沢なファーストクラスシートのようだ。どんな基準でも余裕たっぷり、2列目のオットマンをすべて展開し、シートバックを寝かせてフルフラットに近い状態にすると、さすがに3列目の余裕はなくなるが、そこまでの状態はまず考えられないだろう。「プレミアム」の場合は、2/3列目シートを前後ゆとりある間隔で並べても、背後の荷室には大型スーツケースを4個縦に並べて積めるスペースがある。




 同じ空間にもう1列のシートを据え付けるわけだから8人乗りの「G」ではそうもいかない。リヤ区画に6名がフルに乗車しようとすると、各シートの膝前のスペースは必要十分ギリギリとなり、特に3列目と4列目は足を組む余裕などはない。またその場合は、ラゲッジスペースもミニマムで人数分の大型スーツケースなどはとても無理だ。やはり普段は最後列シートをチップアップして6人乗りとして使用し、いざという時だけ8人乗りとするのが妥当な使い方だろう。VIP送迎用として使うなら普通に考えれば6人乗りだろう。実際に、既に受注している1000台弱の7割が「プレミアム」を選択しているのだという。




 それにしてもなぜこのタイミングでグランエースというフルサイズワゴンを投入したのか、アルファード/ヴェルファイアでは物足りない人が増えたわけでもない。あちらは依然としてトヨタ最高級ミニバンの位置を占めるという。実は海外向けのハイエースがちょうど一年ほど前にモデルチェンジして新型に生まれ変わったという事情がある。新型は衝突安全性などへの対応からセミボンネット型となったが、それを機に国内市場にも豪華で大型のワゴンを導入したいと計画していたという。


 


 ご存知のようにハイエースは1967年の発売以来、世界150ヵ国以上の市場でトータル624万台以上が販売されたトヨタの看板車種。世界中で信頼されるトヨタの評判を築いて屋台骨を支えてきた立役者である。その信頼性と耐久性からとりわけ新興国で人気が高く、おかげで一時は最も盗難に遭いやすい車種という有難くない称号を与えられていたほどだ。現在もそれぞれの市場の要求に合わせて、新型(300系)と旧型(200系/04年発売の国内向け現行モデルも同じ)取り混ぜてさまざまなタイプが販売されており、海外向けにはセミボンネット型でも17人乗りで全長6m近いコミューター仕様もラインナップされている。




 ちなみに製造はトヨタ車体が担当するが、コマーシャルビークル系は一年半ほど前から開発も同社が手掛けることになったという。ハイエースはもちろん、ランクルやRAV4などの人気車の生産を多く担当するおかげで現在大忙しのトヨタ車体にとって、グランエースは初の開発製造を一貫して手掛けたモデルということになる。一般のオーナードライバー向けというよりは、あくまでプロフェッショナルユース、扱いに通じた玄人向けという匂いがそこかしこに漂うのはこういった背景があるからだろう。

ワイドかつロングな車内空間を活かしたグランエース。「Premium」「G」ともに2列目はエグゼクティブパワーシートが用意されているが、「Premium」は3列目にも同じシートを備える。日本車指折りの優雅な空間だ。

エグゼクティブパワーシートの背もたれを最大限に倒し、オットマンを上まで上げきると、まるでベッドのような装いに。もちろん走行中にはNGだが。

アルファード並みの回転半径で小回り性良好

 フロントは鼻先が突き出したセミボンネットタイプだが、後ろから見ると真四角に切り立った巨大な箱のようなボディの寸法は、全長5300㎜×全幅1970㎜×全高1990㎜、ホイールベースは3210㎜という堂々たるもの。最低地上高が175㎜と一般的なクルマより高いのは、フロア下にストレートラダーフレームが通っているからだ。そのため乗り込むにはちょっと段差を上る必要がある。グランエースのボディは一応モノコック構造だが、ラダーフレームにそれぞれのピラーが環状構造を形づくっており、そのおかげでこの巨体でもしっかりしている。




 ライバルと目される(というより開発陣もそれをベンチマークとしたらしい)メルセデス・ベンツVクラスには3種類のボディサイズが用意されているが、その最長版エクストラロング仕様は全長5370㎜なので(ハイエースのスーパーロングも全長5380㎜)、それには一歩譲るが、事実上日本で販売されている最大級のミニバンである。もともとの発祥の地であるアメリカではミニバンかもしれないが、さすがに日本では語弊があるのか、メーカー側も「フルサイズワゴン」と称している。それでいながら、思ったよりもずっと取り回しがいいのがグランエースの美点である。エンジン縦置きの後輪駆動車であるためにFWD車よりもステアリングの舵角を大きく取ることが可能で、図体の大きさの割には小回りが利く。FFミニバンだと40°も切れないという前輪タイヤの切れ角はグランエースの場合45°といい、そのおかげで最小回転半径は5.6m。ちなみにアルファード/ヴェルファイアは5.6mまたは5.8m。また全長5235㎜、ホイールベース3125㎜のレクサスLSは2WDが5.6m、AWDは6.0mであることから、なかなかの小回り性であることが分かる。さらにスクエアなボディの見切りも良く、もちろんボディ全周に備わったカメラによってパノラミックビューも確認できる。それでも縦列駐車から出入りする際には、見えない鼻先が気になって慎重になってしまうが、一度やってみるとおお、本当に切れる、と安心するはずだ。




 プロユース前提だな、と感じさせられるのは巨大なリヤゲートドアが手動式であること。半ドア防止のオートクローズ機構は備わっているので、最初はどこかに開閉ボタンがあるのではないかと探したがやはりなかった。身長ほぼ180㎝の私でも手を伸ばしてストラップに何とか届くぐらいなので、背の低いドライバーは苦労することだろう。開発陣のひとりからやっぱり必要ですかね? と訊ねられたが、ライバルと見定めたVクラスは電動開閉だけでなく、ガラスハッチだけを開閉することもできるのだ。

3列目
2列目


3列目
2列目


4列目

「Premium」「G」の各列を、普通に乗れるシート位置に整えた際のクリアランスがこちら。「Premium」の3列目の画像は、何も言わずに見せられたらミニバンの2列目と思えてしまうほど広大な足元空間が広がる。「G」にフル乗車した場合、各列の膝前クリアランスは最小限。シート位置調整を誤ると、足元スペースが足りなくなる列もありそうだ。

ボディの重さを感じさせず思いのほか軽快に走る

 グランエースのパワーユニットは1GD-FTV型2.8ℓ直列4気筒DOHCディーゼルターボのみ。130kW(177㎰)/3400rpmと450Nm(46.1㎏m)/1600〜2400rpmを発生するこのエンジンは、従来のKD型を引き継ぐ形で15年に登場したトヨタの最新のクリーンディーゼルであり、ハイラックスサーフやランドクルーザー・プラド、ハイエースなどでもお馴染みのユニットだ。酸化触媒にDPR(ディーゼル・パティキュレート・アクティブ・リダクション)触媒、尿素水を噴射するSCR触媒(トヨタのディーゼルエンジンとしては初採用)を直列配置し、NOxをはじめとした排出物を低減。ユーロ6やポスト新長期規制に適応させている。排気量もKD系よりダウンサイジングしながら、出力/トルクを向上させた。これに6速のステップドATを組み合わせる。




 とはいえ、車重は「プレミアム」で2740㎏、8人乗りの「G」では2770㎏に達するせいで、いささかその走りっぷりを心配していたのだが、それはまったく杞憂だった。重量級のモデルをスムーズに動かすために大切なのは、ピークパワーよりも余裕あるトルクが瞬時に立ち上がることだが、さすがはクロスカントリービークルや商用車などの重量級を手掛けてきたトヨタ車体だけに、スムーズなピックアップに加えて6速ATとの相性も文句なし。思った以上に身軽に動き出し、気持ち良くスピードが乗っていく。しかも静かである。ドライバーシートからはディーゼル音は聞こえるが、決してうるさいレベルではなく、2列目のキャプテンシートに座ればまったく聞こえない。パワートレーンが遠いセミボンネット型の上に、エンジンルームとキャビンを隔てるダッシュパネルには制振材を間に挟み込んだサンドイッチ鋼板を採用、さらにホイールハウスやフロアなどにも、吸音材・遮音材をふんだんに奢り、サイドのスライドドアガラスハッチには合わせガラスを採用するなど徹底的に対策した効果だろう。




 また乗り心地の点でも特等席はやはりセカンドあるいはサードシートである。VIP送迎車ではあるが、やたらとフワフワした類の乗り心地ではなく、がっちりフラットで頼もしいタイプだ。フロントサスペンションはマクファーソンストラット式、リヤはトレーリング付のコイルスプリングによるリジッドアクスルだが、入念に対策されているようで商用車のようにラフに撥ねることもなく、むしろアルファード/ヴェルファイアよりもフラットで乗り心地がいいと感じられたぐらいだ。ただし、路面が荒れた個所ではドライバーズシートのフロアにブルブルという振動が伝わることもあったが、それも優先順位をきちんと守っているということかもしれない。




 試乗した日はたまたま風が強く、高速道路上ではふらつくトラックも見掛けたほどだったが、グランエースは満足できる安定性を備えていた。ハンドリングも当然ながら国内向け現行ハイエースとは段違いである。ひとつだけ気になったのは、トヨタ・セーフティ・センスに含まれるいわゆるレーンキープアシストの制御具合である。電動パワーステアリングではないのでステアリング操作を支援する機能はなく、正しくは「レーンデパーチャーアラート」で「ヨーアシスト機能付」というもの。白線を踏みそうになると反対側の車輪にブレーキを掛けることによって車線内に車を引き戻す制御が備わっているのだが、これがいささか煩わしい。首都高速など、コーナー区間で速度を抑制するために二重に白線を引いて車線が狭くなっている場所などでは、頻繫にブレーキが作動するのだ。ワイドなボディゆえ安全性を考慮してのことだろうが、ヨーアシスト機能だけをオフにできるスイッチがあればそんな場面でもより扱いやすいのでは、と感じられた。




 見た目は豪華で、乗っても快適、その上グランエースには働くクルマを長年つくってきた経験が生かされた逞しさも備わっている。個人で買ってモディファイする人がどのぐらいいるか分からないが、その逞しさと頼もしさゆえに大きなサイズのキャンパーに改造するベース車両としてはなおさら魅力的に映るのだ。

最初は大きさに圧倒されるが、いざ動かしてみるとサイズ感はさほど気にならなくなる。操作感はミニバンと言うよりはプロバンに近いが、ストレスを感じるようなものではない。

ご覧のように前輪の切れ角がとても大きく、ホイールベー スが約3.2mあるのに最小回転半径は5.6m。絶対的なボディの大きさはあるが、取り回しは思ったより良好なのだ。

ヒップポイントはかなり高めで、まわりを見下ろすようなドラポジに。センターコンソールのサイズに幅の広さを感じる。ウッド加飾などで商用車的な感覚は皆無。長時間のドライブでも疲労感は少なさそうだ。
車線逸脱警報は、前輪片側に軽くブレーキを掛けて車線内に引き戻そうとする仕組みだ。車幅があるため意外と車線を拾いやすいのと、思いのほか減速Gが掛かるので少し驚く。


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