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BMW X7対Audi Q8 ドイツ製高級SUV対決!


もはやSUVこそがかつてのサルーンと認識されるようになって久しいがBMW初のフルサイズSUV、X7とアウディのフラグシップSUVたるQ8は期待に応える性能とラグジュアリーネスを持っているのか?塩見智が注目のSUV2台に乗り、SUV2020を考えた。




REPORT◉塩見 智(SHIOMI Satoshi)


PHOTO◉平野 陽(HIRANO Akio)




※本記事は『GENROQ』2020年2月号の記事を再編集・再構成したものです。

 たまにはインテリアの話題から始まるインプレッション記事があってもよいはずだ。上下2分割の自動開閉式テールゲートを開けると、BMW X7のインパネまわりがはるか彼方に見える。それもそのはず、このクルマのホイールベースは3105㎜。トヨタ・アルファードのそれよりも105㎜長いのだ(エンジン縦置きと横置きの違いはあるが)。




 3列目を使用しても750ℓのラゲッジスペースが残り、大人2人が十分に座ることが可能な3列目シートがあり、その前の2列目に2座のキャプテンシートが贅沢に配置され、その前にフロントシートがある。どこへ陣取っても長時間を過ごすことができる。これはBMWのやるべき仕事か? という思いがまったくないわけではないが、そういう情緒的なものを排除して純粋に見ると、実に快適なピープルムーバーだ。




 運転席からの眺めはいつものBMWワールドだ。親指の位置にスイッチがずらりと並ぶステアリングホイール、その奥のフルデジタルメーター、中央にモニター、ほとんどの機能はBMWオーナーにとって馴染み深いダイヤルコントローラーで呼び出せるほか、「OK、BMW」と音声で呼びかけてAIのパーソナルアシスタントを起動することもできる。BMWは音声アシスタントを採用しても、インパネに物理的なスイッチを多数残す保守派だが、過渡期にそうすべきと考えているだけで、いずれは減らすのではないか。




 3眼カメラやミリ波レーダーをはじめとするセンサー類が多数備わり、車両の周囲360度を見張ることで、高度な運転支援を実現している。今回、東京都内の山手通りの地下を走る首都高中央環状線で渋滞に見舞われ、ハンズオフ機能が真価を発揮した。前方を注視さえしておけば、手足はフリーだ。慣れていないせいか意外に手のやりどころに困るが、四肢を休めるという意味では実に有効だ。今後利用可能な道路や速度域が広がっていけば、遠出する機会が多いであろうX7のようなクルマのドライバーには必須の機能となるはずだ。

3列目まで快適な空間をもたらす広大な室内。
インテリアトリムはオプションのBMWインディビジュアル・フルレザー・メリノ(55万6000円)。


3.0ℓ直6ディーゼルターボエンジンは驚くほど低い位置にレイアウトされる。
試乗車は22インチ前後異サイズタイヤを装備(24万7000円)。


ACC使用時のハンズフリーをいち早く実現したBMWの積極さに驚くが、もちろん信頼性の高さ故にそれを実現できたことは言うまでもない。

 そんな巨大で快適な移動空間たるX7だが、いざ交通量の少ない道路へ差し掛かれば、きちんとBMWの本質的な魅力が備わっていることを確認できる。それはストレート6エンジンの滑らかな吹け上がり、あり得ないほどの静かさと振動の少なさ、2440㎏をこともなげに力強く加速させるパワーだ。本当にディーゼルエンジンとは思えない。BMWは自動化/電動化においても先頭集団にいるが、ユーザーメリットを無視して内燃機関をないがしろにしたりしない。




 さすがにワインディングロードで右へ左へとステアリングを切って操る喜びは薄い。その気になれば、図体の大きさから想像するよりもずっと俊敏に走り回ることもできないわけではないが、似つかわしくない。大きなサンルーフから陽光が差し込む質の高いインテリアが、上品な運転を心がけるように呼びかけてくる。巨体と巨大なキドニーグリルはこれ以上ないほど威風堂々とした印象を与えるが、それだけにオーナーは走らせ方を考える必要がある。



〈SPECIFICATIONS〉BMW X7 xドライブ35dデザイン・ピュア・エクセレンス


■ボディサイズ:全長5165×全幅2000×全高1835㎜ 


ホイールベース:3105㎜ 


■車両重量:2440㎏ 


■エンジン:直列6気筒DOHCディーゼルターボ 


総排気量:2992㏄ 


最高出力:195kW(265㎰)/4000rpm 


最大トルク:620Nm(63.2㎏m)/2000~2500rpm 


■トランスミッション:8速AT 


■駆動方式:AWD 


■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク 


■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ285/45R21 


■環境性能(WLTCモード) 


燃料消費率:11.4㎞/ℓ 


■車両本体価格:1229万円

 X7とは系統が異なるものの、ブラックアウトされた大きなシングルフレームグリルをもつアウディQ8のフロントマスクもまた、非常に強い存在感を放つ。




 とてつもなく大きなX7と一緒に連れ出したためにアウディQ8を意外に小さいと感じる瞬間が何度かあったが、それは錯覚だ。全長4995㎜、全幅1995㎜、全高1690㎜、ホイールベース2995㎜のクルマが小さいはずがない。ただ実際よりも小さく感じる理由はある。よく走るからだ。




 今回感じたQ8の走りの印象は、このモデルが日本導入された直後のそれとは異なる。あの時の自分のセンサーがおかしかったのか、まだクルマにアタリがついていなかったのかはわからないが、印象の違いは大きく、アタリがつく/つかないでは説明しにくいレベルだった。となると自分がおかしかったことになり、他媒体に書いた以前の原稿について反省している。




 今回、千葉の山道を活発に走らせてみて、前回さほどパワーを感じず不満を覚えた3.0ℓV6スーパーチャージャーエンジンの印象は変わった。必要にして十分以上の力強さを感じた。発進直後に怒涛のトルクがあふれだすのではなく、回転を上げるにつれてリニアに力強さが増していく印象。コーナーの連続でアクセルペダルの踏み具合によってエンジンのトルクを出し入れする作業を、楽しいと感じさせてくれた。

試乗車はアルカンターラ/レザー製のスポーツシートを装備。
水平基調のすっきりしたインパネはアウディの最新のデザイン言語だ。


無償オプションの5ツインアーム22インチアルミホイールにコンチネンタル・スポーツコンタクト6の組み合わで装着されていた。


電子制御式エアサスペンションによって車高は大きく変わる。ダイナミックモードを選択するとSUVとは思えないほど車高が下がる。

 エンジンの魅力を感じることができたのは、山道を走らせる価値があるハンドリングが備わっているからだ。コーナーでの安定感が素晴らしい。荷重がかかる外側のサスペンションは瞬時にしっかりかためられ、少なめのロールで安定した車両の姿勢を保つのだが、その間、乗員は突っ張ったような足の硬さを感じることはなく、今足がどのように動いているのかを十分に把握でき、安心感を抱いていられる。要するに不自然だったり予想外だったりといった動きが少ないのだ。




 これだけのサイズがあると、リヤガラスが寝た形状であってもリヤシートの空間は十分に確保されている。後席に3人乗車しても窮屈ということはない。しかしそれでもこのQ8はリヤにふんぞり返って座るクルマではなく、自らがステアリングホイールを握って走りを楽しむクルマだ。アウディがわざわざロー&ワイドでアグレッシブなクーペルックを採用したのは、絶対的なサイズとは無関係に、このクルマを現代のラグジュアリークーペだと考えているからである。




 巨大なサイズをもつドイツ車2モデルは、方向性こそ異なるものの、それぞれがブランドの新しい提案になっていた。X7はブランドの保守性を打破するピープルムーバー、またQ8はテックオリエンテッドなブランドが放つ新世代のクーペのカタチ……という提案だ。どちらの提案も総合的な技術力の高さを感じさせるが、一方でもうパワフルでラグジュアリーなセダンやクーペを造っているだけでは満足してもらえなくなったのだという、ジャーマンブランドの危機感のあらわれにも見える。



〈SPECIFICATIONS〉アウディQ8 55 TFSIクワトロ・デビューパッケージSライン


■ボディサイズ:全長4995×全幅1995×全高1690㎜ 


ホイールベース:2995㎜ 


■車両重量:2170㎏ 


■エンジン:V型6気筒DOHCターボ 


総排気量:2994㏄ 


圧縮比:11.2 


最高出力:250kW(340㎰)/5200~6400rpm 


最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1370~4500rpm 


■トランスミッション:8速AT 


■駆動方式:AWD 


■サスペンション形式:Ⓕ&Ⓡダブルウイッシュボーン 


■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ&Ⓡ285/40R22(10J) 


■燃料消費量:10.3㎞/ℓ(JC08モード燃費) 


■車両本体価格:1122万円
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