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MVアグスタ・ F3 800は高級時計にも似た、特別な価値観を持つ。|試乗レポート


古くからプレミアムなスーパースポーツモデルとして定評のあったMVアグスタ。750Sアメリカの威光を継いだのはF4シリーズに他ならないが、2019年からはMVアグスタが、なんと42年ぶりに世界選手権ロードレース(Moto2)に返り咲いた事で同ミドルクラスにラインナップされているF3の存在感も俄然クローズアップされて来るのである。




REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力●MV AGUSTA 東京

◼️MVアグスタ・F3 800 .......2,222,000円 / F3 800RC(レパルト・コルセ).......2,618,000円

2020年型の新グラフィック登場(F3 800は2月、同RCは1月から発売)

アゴスティーニレッド/アゴスティーニシルバー
メタリックアビオグレー/メタリックカーボンブラック/アゴスティーニレッド


 還暦以降年代のバイク好きなら、おそらくMVアグスタのイメージは、往年の750Sアメリカが魅せてくれたド迫力な格好良さが記憶に残っていることだろう。当時はまだその“ワード”は使われていなかったが、まさに“レーサーレプリカ”そのもの。しかもそれまで培われてきた戦績はハンパ無かっただけに、憧れは膨らんでしまう。さらに付け加えると生産台数の少ない希少性を誇るプレミアムなスーパースポーツモデルだった。


 


 そんなヘリテージを受け継いで新開発されたモデルがF4であり、MVアグスタ・ブランドのフラッグシップである。特別限定モデルのF4 CLAUDIOに至ってはカーボンパーツをまとい世界限定100台で発売。価格は税別でなんと920万円であった。




 同ブランドのそんな血統を受け継ぐミドルクラス・モデルがこのF3である。


 F4は並列4気筒の998cc。対するF3は79mmと言う共通のボアサイズを持つがストロークはF4の50.9mmに対してF3は54.3mm。両方共ショートストロークタイプに違いは無いが、ボア・ストローク比はF4の1.55に対してF3は1.45へと、少しではあるがスクエアに近付いているのである。


 圧縮比も僅差ではあるが、F4は13.4対1、F3は13.3対1である。排気量と気筒数の違いはあるが、いずれも高回転高出力を追求したエンジンである事に違いはない。




 ちなみに気筒当たり4バルブは放射状レイアウトを持つ水冷DOHCの3気筒798ccで、 148hpの最高出力は13000rpmで、88Nmの最大トルクは10600rpmで発揮される。車両重量は乾燥で173kg。ここから算出されるパワーウエイトレシオは、僅か1.17kg/hpに過ぎないのである。




 なおF3シリーズの末弟にはF3 675がある。ボア・ストローク比は1.72にもなる超ショートストロークタイプ(79×45.9mm)の675ccエンジンを搭載。さらに高回転型の出力特性を誇っている。価格は2,035,000円で発売予定は3月だ。

高級時計を身に着ける感覚と似ているのかも。

 試乗&撮影車両は2019年モデル。先ずはF4譲りの外観に精悍かつ上質な雰囲気が漂っている。菱形のヘッドランプデザインを始め、その下両脇に開いたエアインレット。アッパーカウルに表現されたダイナミックなキャラクターライン等、低くコンパクトなスクーリーンも含めてデザインへのこだわりはハンパ無い。赤とシルバーのツートーンカラーもMVアグスタならではのもの。


 燃料タンクの造形も上面の両肩が左右に張り出てそれなりのボリューム感を醸す一方で、その下をえぐる事でスリムな車体へとピタリとマッチ。スマートなテールエンドへと続くフォルムは流麗である。




 跨がると両足の踵は軽く浮く程度。足つき性はごく一般的なレベルだ。片足をステップに乗せるともう片方の足は踵までピタリと地面を捉えることができ、扱いに不安は感じられない。やや低い位置にあるセパレートハンドルを握ると上体は前傾となるが、市街地走行も考慮されたようで、前方視界は下向きになり過ぎる事はない。レーシーなライディングポジションながら一般トリート走行も許容する。


 そんなスマートな車体に思わず前屈姿勢をとってみると、両腕は前述したタンクの張出し下部の凹みにピタリと沿わせることができ、マン・マシン一体で細身の姿勢が決められて、いかにも空力特性が良さそう。




 ピレリ製ディアブロ・ロッソ・コルサ(タイヤ)を履く5本スポークのキャストホイールやマルゾッキ製フロントフォークにラジアルマウントされたブレンボ製の対向4ピストン・モノブロック油圧キャリパーの装備等、吟味された贅沢な採用部品の数々も喜ばしい。


 


 そして何よりも3気筒エンジンと高回転高出力型チューニングによって発揮される快活な出力特性にワクワクさせられてしまった。


 800ccクラスながら、スロットルをワイドオープンすると回転計の表示は難なく1万rpmオーバーの世界へと飛び込んで行く。いかにもクランクマスの軽い吹き上がりは俊敏で伸びやかさも抜群。1度はサーキットを走らせたいと思えたのが正直な第一印象。 


 特に6~7000rpmを過ぎた当たりからの加速フィーリングは強烈。その上ではさらに勢いを増し、1万rpm以上の領域でも衰えを知らぬ感覚が窺い知れる。そんなエキサイティングなハイパフォーマンスの片鱗を実用範囲の中でも楽しめるところが魅力的である。




 発進操作も3気筒特有の柔軟なトルク特性と高過ぎないギヤリングが効いて扱いは楽。渋滞路走行ではエンジンがヒート気味になることが少々気になったが、通常なら市街地やツーリング走行も難なくこなせてしまう。


 ハンドリングはどの領域でも素直なレスポンスを披露してくれ、軽快な中にも落ち着きのある挙動を示す。誰にでもとても乗りやすいと思えた。


 


 そんな一級の走りを楽しんだ後は、峠のビューポイントでひと時のクールダウン。あるいは都会やリゾートのオシャレなカフェで一服する時も、オーナーを贅沢な気分で包み込んでくれることは間違いないのである。

⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)

ご覧の通り足つき性はごく一般的レベルと言える。車体がスマートで両足の接地位置幅も少ないこともわかるだろう。


ディテール解説

ひし形レンズのヘッドランプが特徴。ウインカーはミラー部分に内蔵されている、小さめなスクリーンと堀の深いキャラクターラインによるメリハリの効いたカウルの造形も印象深い。

マルゾッキ製倒立フォークはφ43mm。ラジアルマウントされたブレンボ製油圧キャリパーは対向4ピストンのモノブロックタイプだ。

ミドルクラスの豊富なバリエーション展開に活用されている3気筒エンジンは、放射状バルブメカを持つ水冷DOHC12バルブの798cc。

ひねりを加えた5本スポークタイプで、リムサイドに赤いストライプを配した黒のアルミキャストホイールは片支持方式。ハブは中空タイプだ。ディスク径はφ220mm。

左側シングルサイドスイングアームのリヤサスペンションはZF製リザーバータンク付き。プリロードの無段階調節とダンピングも好みに調節できるフルアジャスタブルタイプが装着されている。

フロントフォークの左右をステアリングトップブリッジの下側でつまむセパレートハンドル。レーシーなスポーツモデルを象徴するポイントだ。

左側スイッチ。赤いプッシュボタンはヘンドランプ光軸の上下切り替えスイッチ。中段にホーンスイッチ、最下段にウインカースイッチを配置。左側上方にあるのがモード切り替えスイッチだ。ちなみにフロントフォーク左側は圧側のダンピング調節ができる。
フロントフォーク右側は伸び側のダンピング調節を担う。ハンドル右側スイッチは上からエンジンキルスイッチと始動用スタータースイッチ。エンジン稼動中に長押しするとエンジンマッピングの4段階切り替え用のモードスイッチになる。


異形デザインのモノクロ液晶ディスプレーメーター。エンジン回転計は左端の下方から立ち上がり右方向へブロック表示が積み重なって伸びる。右端上にはギヤポジションインジケーター。その他多彩な情報がデジタル表示される。

シートは黒と赤のセパレートタイプ。乗車定員は二人乗り仕様である。後席の細身なクッションは一段高い所に位置している。
後席のシートクッションはキーロックを解除すると前ヒンジで開ける事ができる。シート下スペースは小さいが、ETC機器ぐらいは納まりそう。


いかにもエアロダイナミクスが良さそうなテールのフィニッシュ。ウインカーとナンバープレートは共通のステーで支持されている。

◼️主要諸元◼️

エンジン形式:4ストローク DOHC 12バルブ 3気筒


総排気量:798cc


圧縮比:13.3:1


ボア×ストローク:79.0mm×54.3mm


最高出力:108kW(148hp)/13,000rpm


最大トルク:88Nm(8.97kgm)/10,600rpm


エンジンマネージメント:MVICSイグニッションシステム(MOTOR &VEHICLE INTEGRATED CONTROL SYSTEM)


 4モード(ノーマル・スポーツ・レイン・カスタム)


 8段階調節トラクションコントロールシステム


ミッション:カセット式6速コンスタントメッシュ


クラッチ:湿式多板スリッパークラッチ




全長×全幅:2,030mm×730mm


ホイールベース:1,380mm


シート高:805mm


最低地上高 120mm


始動方法:エレクトリック


タンク容量 16.5L


車両重量:173kg(乾燥重量)




フレーム:スチールパイプ・トレリスフレーム


スイングアーム:アルミニウム・シングルサイドスイングアーム


フロントサスペンション:MARZOCCHI ø43mm、フルアジャスタブル倒立フォーク


リヤサスペンション:プログレッシブ・フルアジャスタブルシングルショック


ブレーキキャリパー(前/後):brembo 4ピストン、ラジアルマウントモノブロックキャリパー/brembo 2ピストンキャリパー


ブレーキディスク(前/後):ø320mm フローティングダブル/ø220mmシングル




ホイール(前/後):アルミニウムホイール3.50″×17″/5.50″×17″


タイヤ(前/後):120/70-17 /180/55-17

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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