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KTM・1290 SUPER ADVENTURE Sに試乗


KTMは、世界選手権モトクロスやダカールラリー等、オフロード系で楚を築いてきたオーストリアのブランド。同社の中でもひときは象徴的なフラッグシップモデルがこれだ。バリエーションの中ではトラベル・モデルにカテゴライズされているが、そのポテンシャルは競技車のレベルに迫る。より本格的トレールを目指す人にはフロントにスポークの21インチ・ホイールを履く同Rも用意されているのである。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

◼️KTM・1290 SUPER ADVENTURE S .......2,036,100円

1290 SUPER ADVENTURE R .......2,189,900円

 自然豊かな雄大なステージへ誘われる。そんなロマンあふれるアドベンチャー・ツアラーがブームを呼び、市場はじわじわと拡大傾向にある。KTMは古くからそんなカテゴリーを見据えた充実のモデルを手掛け、ユーザーサービスにも力を注いできた。


 ロングツアラーとしての機能性と、オフロード性能に優れるサスペンションを搭載。しかも搭載エンジンは158hpを発揮する横置き75°Vツイン。排気量は1301ccである。スラントしたノーズには高さ調節できるクリア・スクリーンを装備。燃料タンク容量は23L。テール周りにはTOURATECHのアルミトップケースやパニア搭載への備えが施されている。




 しかも驚くべきは、乾燥重量が215kgとかなり軽量に仕上げられている点にある。




 共にこのカテゴリーの市場を育ててきた両雄としてBMW R 1250 GSがあり、堂々たるフォルムとプレミアムな仕上がりが人気を呼んでいるが、KTMのキャラクターはメーカーが唄う所の“READY TO RACE”の香り。まさに走りへのエネルギーが漲っている。


 端的に言うと、ミドルクラス並の車重とトップクラスのハイパワーエンジンが組み合わせられたエネルギッシュな走りに価値ある魅力が期待できるのである。

扱いの軽さは抜群の走りを生む。

 試乗車は前19後17インチ・ホイールを履くSタイプ。前21後18インチ・ホイールのRタイプと比較すると、大きく迫力のあるフォルムもいくらか親しみやすく感じられる。


 とかく巨大なボリューム感に圧倒されるのがこの手のバイクにありがちな第一印象だが、Sの大きさは驚く程ではなかった。むしろ跨がるとスマートな車体デザインが奏功して、足つき性も不安を覚えない。ちなみにシート高はRタイプの890mmより30mm低い860 mm。


 サスペンションストロークも20mm少ない200mmだが、通常のツアラー用途として考えるなら、現実的に走るステージは舗装路メインとなるのだから、Sの方が使い勝手が良いと思えてくるのである。




 先ず印象的だったのは、車庫からの出し入れ等、押し歩き時に感じられるライダーへの負担が明らかに軽い。体格、腕力に自信を持てない筆者にとって、扱いの軽さは大いに魅力的。


 ザックリ表現すると、この手のバイクでオーバー1Lのビッグバイクなんて、自分が扱いこなすには無理があると常々思っているが、この1290スーパー・アドベンチャーSなら、「何とかなりそう」なレベルに感じられてくるのである。


 実際その車重は215kg。ミドルクラスと比較できるレベルにあるのだ。




 それでいてエンジンパワーは頼り甲斐があり、スロットルを開けた時の瞬発力は一級のものが体感できる。1.3Lと言う大排気量を感じさせない軽やかな吹き上がりは、如何にもショートストロークエンジンらしく、クランクマスも軽い。その点も扱いやすさに貢献。


 とてもパワフルで豪快な加速力を発揮できスロットルレスポンスも抜群だが、決して乱暴者ではない出力特性が魅力的なのである。


 


 ローギヤで5000rpm回した時のスピードはメーター読みで45km。このクラスのバイクとしては低めなギヤリングで、強烈な駆動トルクを誇れる事を物語っている。また6速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は3500rpm強。クルーズコントロールを効かせて快適なロングツーリングが楽しめる。




 操縦性は至って素直。当然ながら舗装路では生き生きと思い通りのラインに乗せて行くことができ、峠道でも楽しく走れる。そんな時、いわゆるスポーツ系バイクよりは、挙動に落ち着きが伴い、平然と適度なハイペースを保つことができる乗り味が、ツアラーとして心地よいのである。




 トップクラスの重量級アドベンチャー・ツアラーの中では、あきらかに軽く扱える操縦性は、本格的ダートを目指してRタイプを狙う人にも見逃せないであろう確かな価値ある魅力が感じられるのである。

⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)



シート高は860mm。車体がスリムで両足はバイクからそう遠くない位置に着く事ができる。ご覧の通り踵は大きく浮くが、足つき性としての不安感は少ない。


ディテール解説

個性的なヘッドランプデザイン。オシャレな盾の様なフォルムから上に続くスクリーンはスマートな仕上がり。多機能LED照明にはコーナリングランプ機能も備わっている。

φ320mmのフローティングローターをダブルで装備。ラジアルマウントされた油圧キャリパーはブレンボ製モノブロックの対向4ピストンタイプ。19インチ・ホイールは低圧鋳造処理で製造された合金キャストタイプを採用。ちなみにRモデルには21インチ・スポークホイール&オフロードタイヤが装着されている。

9.8kgと言う軽量な、クロモリ鋼管トレリスフレームに抱えられるVツインエンジンは158hpの最高出力と140Nmの最大トルクを発揮する。

ボア・ストロークが108×71mmと言うショートストロークエンジンは、横置き75度V型2気筒水冷DOHCの1301cc。

右出しのアップマフラーはそれなりのボリュームがある。マフラー上方のシート脇にはパニア装着用の専用ステー(アタッチメント)が標準装備されている。

軽量高剛性のダイキャスト製スイングアームには、WP製セミアクティブ・モノショックユニットを採用。4種のモード選択ができる。プリロードも荷重に応じて4段階に設定可能。

リヤホイールは17インチサイズ。ピレリ製Scorpion Trail IIを履く。φ267mmのフローティングローターにはブレンボ製2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーをマッチ。ちなみにRタイプは18インチ・スポークホイールだ。

両手にナックルガードを装備。黒いパイプバーハンドルはテーパードタイプだ。TFTカラー液晶ディスプレーも大きく見やすい。

ハンドル左側スイッチは、各種モード切り替え操作を担う。写真の一番上はクルーズコントロール用。中央の4キーはモード切り替えと選択用だ。
縦に三つ連なる右側ハンドルスイッチ。上からハザードスイッチ、赤のシーソースイッチがエンジンキルスイッチ&始動用スタータースイッチ。下のグレーボタンがキー代りのイグニッションスイッチ。スマートキータイプになっている。


多くの機能表示を果たすコンビネーションメーター。速度&回転計の他、トリップや燃費、航続距離等が表示されている。内部照明は、車両周辺の明るさを感知するセンサーにより自動調節される。

様々なライディングモードの切り替えもできる。エンジンマネージメントやABS、電子制御サスペンションも簡単に好みのセッティグができる。
イルミネーションは照度の自動調光の他、トンネルや夜間でも目に眩しくない反転表示も自動。ライドモードは「ストリート」にある事を示している。レッドゾーンは1万回転から。


ステアリングヘッドの前方、メーター直前の特等席には12V電源が取れるアクセサリーソケットが装備されている。
スクリーンステーの両脇にある3羽ロックダイアルを緩めるとスクリーン高が任意の高さに調節できる。蓋付き防水ポケットの中にはUSB接続端子が装備されている。


車体もシートもスリムに仕上げられている。シートクッションはセパレートタイプ。前後で少し段差がある。後席脇には堅牢なアシストグリップが装備されている。

左サイドのキー操作で先ずはリヤシートが脱着できる。次の手順でフロントシートも取り外しできる。シート下は様々な補機類でぎっしりだ。
リヤシート下にはヒューズ等が納められている。


クリアレンズを採用したテールまわりのランプはLEDタイプ。ウインカーはオレンジに、テール&ストップは赤く光る。

◼️主要諸元◼️

排気量:1301cm³


HP出力:158hp


KW出力:118kW


トルク:140Nm


デザイン:2気筒、4ストローク、75°V型


ボア:108mm


ストローク:71mm


スターター:セルスターター


潤滑:3ポンプ式オイル圧送潤滑


トランスミッション:6速


冷却:水冷


クラッチ:PASC(TM)スリッパークラッチ、油圧操作式


EMS:Keihin製EMSライドバイワイヤーおよびクルーズコントロール付き、ダブルイグニッション


CO2 EMISSIONS:129g/km


消費燃料:5.52 L/100km




フレームデザイン:クロームモリブデン鋼製チューブラースペースフレーム。パウダーコート塗装


フロントサスペンション:WP製セミアクティブサスペンション倒立Ø48mm


リアサスペンション:WP製セミアクティブモノショックサスペンション


サスペンションストローク(前/後):200mm/200mm


フロントブレーキ:Brembo製 4ピストンラジアルマウント固定式キャリパー×2、


         フローティングブレーキディスクφ320mm


リアブレーキ:Brembo製2ピストン固定式キャリパー、ブレーキディスクφ267mm


ABS:Bosch製 9ME コンバインドABS(オフロードモードを含む。解除可能)


チェーン:X-Ring 5/8 x 5/16"


キャスター角:64°


最低地上高:220mm


シート高:860mm


燃料タンク容量(約):23L


乾燥重量:215kg

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。※:写真は250 DUKE

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