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今も変わらぬ昔懐かしい鉄馬の乗り味。ドッシリと落ち着きがある。


試乗車は、744ccエンジンを搭載するベイシックなネイキッドスポーツ『V7 Ⅲ STONE』をベースに、同社初のLEDライトを採用し新規投入された同 Night Pack。リヤフェンダーデザインもライトな感覚に刷新されている。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

◼️モトグッツィ・V7III STONE Night Pack.......1,265,000円

左からプンゲンテブルー/ルピードブラック/レビガトブロンズ

 モト・グッツィと言えばイタリアの名門。既に100 年近い歴史を積み上げてきており、現存する同国の最古参メーカーである。古い話をすればレースシーンでの輝かしい戦歴の他、大きなアウター・フライホイール(弾み車)を持つ250cc単気筒エンジンのファルコーネや、早い時期から前後連動のインテグラルブレーキを採用していた事でも有名。しかし、何と言ってもクランク軸を縦置きにレイアウトした90度V型ツインエンジンの搭載で知られている。




 縦置きと言えば、BMWやホンダ等にも例はあるが、空冷90度VツインのOHVエンジンひとすじで近年のブランドイメージを築きあげて来た。例外もあったが基本的にシャフトドライブの採用も定着。一貫した変わらぬ企業姿勢に魅力が感じられるのである。


 4輪メ-カーで例えるならボクサー(水平対向)エンジンでブランド力を築いたスバルと同様に、縦置きのVツインと言えば誰もがモト・グッツィをイメージするだろう。


 日本市場ではいつの時代でも細々と流通している感じだが、根強いファンは確実に存在し、現在は排気量が異なる2タイプのエンジンと、全8機種もの豊富なバリエーション展開を誇っている。


 


 基本的にはネイキッドスポーツの中核を成すV7 Ⅲ STONEと共通。足まわりやエンジン周辺を全てブラックアウト。彩りを添えるフロントフェンダーやタンクも渋いマット(艶消し)塗装を施しているのが特徴だ。


 それなりにボリュームのある燃料タンクにほぼフラットで長いダブルシートがマッチしたフォルムは往年のスタンダードスポーツそのものを彷彿とさせる。スチールパイプ製ダブルクレードルフレームや前後サスペンションもオーソドックスなスタイルが貫かれている。後席の着座位置も高すぎず、ピリオンステップ位置もしかりで、快適なタンデムライディング姿勢に貢献する。




 搭載エンジンは第三世代の750と言われ、従来比で10%のパワー向上を果たし、最高出力は52HP/6200rpmを発揮。最大トルクは60Nm/4900rpmを誇る。お気づきだろうが、高回転に期待するタイプではないのである。モード切り換えや任意オフもできるトラクションコントロールも備えているので雨の日も安心して走れるのである。

ドッシリと落ち着いた乗り味は堂々たる貫禄を覚える

 あっ、これ懐かしい! バイクに跨がり、早速エンジンを始動すると、車体を軽く揺さぶりながらドゥロロロンと少し悠長なサウンドが響く。ブリッピングするとロール方向に揺れを伴うものの、特に気になるレベルではない。だた、そんな挙動には懐かしさがあった。普通とはちょっと違うフィーリングに改めて新鮮な魅力を覚えたのである。


 それなりにズッシリとした手応え。鉄の塊らしい重量感や、いかにも落ち着きのあるカラーデザインも鉄馬と呼ぶに相応しい。


 一言でいうと「大人びた」感覚という表現が一番的確だと思う。何がそう感じさせてくれるのだろうか? 試乗車を走らせながら、そんな事に考えを及ばせてしまう。それほど気持ちにゆとりを感じていられる時間が長い。全体の乗り味そのものに落ち着きが伴っているのである。




 からくりはいくつかの複合的要素に関係があると思う。高回転型ではないエンジンの出力特性と、慣性マスが大きめなクランク。その位置も特に低いわけではなく、バランスとして決して低重心には感じられない。フロントには18インチサイズのホイールを採用。


 もちろんその他の要素も介在するだろうが、それら全体のバランスに、なんともしっとりとした落ち着きを伴うのである。それがグッツィらしい独特の優雅な乗り味に帰結しているのだとう思う。




 ゆったり、しっとりのリズム感と209kgの車重。「気は優しくて力持ち」的な頼れるトルクフィーリングとの相性が良く、常に穏やかな心持ちで快走できるのである。




 操縦性も素直だが、操舵レスポンスと車体挙動がクィックではない。直進でも旋回中でも程よい安定感があり、悠長に落ち着いたリズムで走れる雰囲気。それでいて峠を駆け抜けるスポーツ性も侮れない。


 もちろん悠然と走らせるのがお似合いである。走る場所を選ばず、市街地の散策から峠道を軽く攻め込む様なシーン、さらに高速クルージングも含めて、走ることが気持ち良いと感じていられる時間が長い。その点が魅力的。


 


 個性的な乗り味を高く評価できるだけではなく、このバイクを選んだ自分を褒めてやりたい気分に浸りながら、快適に走れるのである。

⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)



ご覧の通り、両足はベッタリと楽に地面を捉えることができる。シート高は770mm、車重は200kgオーバーだが足つき性に不安は感じられない。


⚫️ディテール解説

当然の流れとは言え、LEDランプとの組み合わせは、意外性をもってかえって新鮮に感じられる。ウインカーも同様にLEDタイプだ。

細いスポークデザインの黒いアルミキャストホイールにはφ320mmのシングルディスクローターをフローティングマウント。油圧キャリパーはブレンボ製異径対向4ピストンタイプだ。タイヤはピレリ製スポーツ・デーモンを履く。

今や貴重な存在と言える空冷OHVの90度Vツイン・エンジン。頭上にカムシャフトを持たないのでシリンダーヘッドのコンパクトさが際立っている。

後方に軽く跳ねあげられてフィニッシュするブラックマフラーは左右それぞれにある。駆動は右側シャフトドライブ方式だ。

リヤサスペンションは黒いスプリングを採用した2本ショックタイプ。93mmのホイールトラベルを稼ぎ出す。ブレーキディスクローターはφ260mm。2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーを採用。

光り物(クロームメッキ)パーツを廃したマット(艶消し)仕上げのハンドルまわり。いたってシンプルでスッキリしたデザインだ。

オーソドックスなハンドル左側スイッチ。ホーンボタンはいつでも押しやすいベストポジションにある。
赤いエンジンキルスイッチと黒い始動用セルスタータースイッチ。間のモードスイッチはメータの液晶表示切り替え選択に使う。


シンプルなアナログ表示式スピードメーターは、少し左側にオフセットされている。

とてもオーソドックスなダブルシート。後席が高くなるのは若干の段差でしかない、ほぼフラットなデザイン。後席も含めて二人乗りがしやすそう。
シートは一体式で脱着できる。スチールパイプのシートレール間にバッテリーやリヤフェンダーが見えるのも、どこか懐かしい雰囲気がある。


見るからにレトロな雰囲気を醸し出すテールビュー。左右に真っ直ぐ伸びたウインカーと丸型テールライトとのコンビネーションもオーソドックスな手法に見えるが、光源にはLEDランプが採用されている。
クリアレンズのテール&ストップランプだが、点灯時は複数のLEDランプが赤く光る。


◼️主要諸元◼️

エンジン:4ストローク・空冷90°V型・2気筒・OHV・2バルブ


総排気量:744 cc


ボア×ストローク:80mm×74mm


最高出力:38kW(52HP)/6,200rpm


最大トルク:60 Nm/4,900rpm


燃料供給方式:マレリ製電子制御燃料噴射システム


始動方式:セルフ式


トランスミッション:6速リターン


クラッチ:乾式単板


電子制御システム:MGCTトラクションコントロール、ABS


フレーム:高張力鋼管モジュラーダブルクレードル


サスペンション(F):Φ40㎜ 油圧式テレスコピックフォーク


サスペンション(R):油圧式ツインショックアブソーバー スプリングプリロードアジャスタブル


ホイールトラベル(F/R):130mm/93mm


ブレーキ(F):320mmステンレスシングルディスク、ブレンボ製異径対向4ピストンキャリパー


ブレーキ(R):260mmステンレスディスク、フローティング2ピストンキャリパー


全長/全幅/全高:2,185㎜/800㎜/1,110㎜


シート高:770㎜


ホイールベース:1,463mm


ホイール(F/R):2.5x18アルミダイキャスト/3.5x17アルミダイキャスト


タイヤ(F/R):100/90-18"/130/80-17"


燃料タンク容量:21L


車両重量:209kg




製造国:イタリア

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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