スバルの前デザイン部長で現在は、首都大学東京で教鞭をとる難波治教授が、MFスタッフとともに東京モーターショーを取材。デザインチェックと写真撮影をおこなった。東京モーターショーが終わって1ヶ月半。あらためて、東京モーターショーで登場した注目モデルのデザインをチェックしよう。



COMMENT & PHOTO◎難波 治(NAMBA Osamu/首都大学東京教授) まとめ◎MotorFan.jp編集部

難波教授:マツダブースのMX30です。このクルマはヨーロッパで予約受付も開始ということで、量産車です。EV量産車。これまでのマツダ・デザインとの連続感というか、関係性はどうなのかという造形です。これも魂動(Kodo)ですか。



MF:これも魂動です。



難波教授:うーん。たぶん考え方としては、これはマツダにとっての初EVです。だからこれまでの内燃エンジン車の表現と違う系列というか、違うデザインの手法で、あえてお客さまに新登場のEVを訴求しようと思ったのではないでしょうか。それはそれで、そういう戦略はアリなので、マツダがそういうようなやり方をしたってことに関してはまったく違和感はありません。でもどうでしょう? お客さまとしては、マツダっていうといま世の中に出てるような滑らかで移ろいゆく光だとか、映り込みが綺麗だとかっていうようなデザインで「マツダのデザインが綺麗」とそう思ってる人が大勢いる。そんなお客様たちにとっては「え、これもマツダ?」っていうデザインになってしまっているのではないかな、とちょっと感じますね。ある意味、MAZDA - EVに期待していた人にとっては、かなり残念なのではないでしょうか。

MF:なるほど。わかる気がします。どうしてなんでしょうか?

難波教授:このデザインそのものは、非常に、端正でまじめなデザインだと思います。だけど残念ながら、メルセデスのVISION EQSみたいな、未来感とか次世代感だとかいう表現が全然足りないです。これまでのシリーズとは違うデザインでいくっていうのはありなんだけど、もうちょっと「少し先」を感じさせてもらいたかったなというのが正直な感想です。



MF:このドアの開き方はどうですか? 昔のRX-8みたいですけど。

難波教授:なぜこのドアの開き方にしたのかはよくわかりません。普通の4ドアにして全然悪くないと思うんだけど、なんでだろう。2ドアっぽく見せる必要もまったくないと思うんですけど。そこもちょっと気にかかる所ですね。もう少し観察してみましょう。

難波 治 筑波大学芸術学群生産デザイン専攻卒業後、スズキ自動車に入社。カロッツェリア・ミケッロッティでランニングプロトの研究、SEAT中央技術センターでVW世界戦略車としての小型の開発の手法研究プロジェクトにスズキ代表デザイナーとして参加。独立後、国内外の自動車メーカーのデザイン開発研究&コンサルタント業務を開始。2008年に富士重工業のデザイン部長に就任。13年にCED(Chief Executive Designer)就任。15年10月から首都大学東京トランスポーテーションデザイン准教授。1

MF:開発主査が、くつろいだ感じの、リビングの延長のような感じっておっしゃってたんですけど。



難波教授:ベルトラインがある程度の水平感を保つというか、あまりウェッジは強くない。Aピラーも立っている。ルーフが高いというのは車内の空間性を大事にしたんだと思います。やっぱり現行のマツダの市販車は、残念ながら車内が狭いですから、閉じ込められた感じの空間性が、あまりプラスにはなってないと思います。ですので、社内的な反省もあるのかもしれませんね。反省というか、商品性の違い、狙い所の違いですね。でもMX-30にはマツダがいつも言ってる「ワクワク」という部分は感じられませんね。



MF:そうなんですよ。この綺麗な流れるラインがなんかこっちにくるといきなりカクンてなってる。とくにタイヤハウスのとことか、いきなりすごくごつい感じになっちゃうじゃないですか。



難波教授:MX-30は、サイドから見て、ヘッドランプとかノーズの先端の部分とかはマツダらしく見えます。もし、そのあたりもこれまでと違ってたらどこのメーカーのクルマだかわからなかったかもしれない。



MF:確かに。



難波教授:前にまわってみると、フロントはちゃんとマツダですね。でもこれまでのシリーズとは少し違った雰囲気にしたなっていうことはわかる。でもサイドビュー見るとつまらない。期待していた分落胆が大きい、というところです。

モーターショー会場では、MX-30の隣にモダンなソファが置かれていた

これが、そのソファ

MF:ある意味、近い将来の自動車開発は、自動運転化に向けて室内を広くしていく傾向にあるじゃないですか。そういったものを見据えているのかしら。



難波教授:いや、良く観察してみるとそうではないかもしれないですね。このMX-30を良くみるとリヤオーバーハングが短めです。先ほど観音開きのドアが開いていた時に見えていたリヤシートはとても狭そうでした。Cピラーもかなり太いしテールゲートはかなり寝ています。もしかするとフル4シーターとは言えない空間なのかもしれません。そうであれば、わざわざ外観デザインを犠牲にしてまでこのドアの方法にしたのかは納得がいきますね。ちゃんとした4ドアにするとかえってお客様の期待を裏切ることになるという判断なのではないでしょうか。しかも床下の電池が思いの外厚くて床が高くなってしまい、そのために背も高くなってしまった、と考えるとこの全体シルエットも説明ができるのかもしれませんね。



MF:なるほど



難波教授:マツダも初めてEVのパッケージレイアウトをしてみたら、簡単ではなかった、というところなのかもしれません。それでも外観デザインはマツダが表現していたエモーショナルな感動という軸の次世代版、もしくはEVとしての魂動の解釈を見せてもらいたかったなあ。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 マツダMX-30のデザインの目指すところは、「EVとしての魂動の解釈を見せてもらいたかったなぁ」 難波治教授がデザインを分析する