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〈試乗記:アウディA4 オールロードクワトロ〉もはや主役! SUVとステーションワゴンの融合


元来「SUVへの入口」として登場したオールロードクワトロ。しかし今や、コンベンショナルなステーションワゴンと、背高SUVの双方の魅力を高度に両立させた、ひとつの「定番シリーズ」として確固たる地位を築き上げている。A4として二代目となる新型オールロードクワトロは、そんな定番モデルに相応しい進化と熟成を遂げている。




TEXT●佐野弘宗(SANO Hiromune)


PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)




※本稿は2016年11月発売の「アウディA4/S4のすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

無理をしすぎていない絶妙の「寸止め感」が吉

スクエアな形状で使いやすいラゲッジルーム。左右にはネットで仕切られたスペースが設けられ、ホイールハウスの壁面にはゴムバンドが備わるなど、小さな荷物もしっかり固定できる。トノカバーはリヤゲートと連動して開閉される。こうした細かい配慮の積み重ねが、アウディをプレミアムブランドたらしめているのだろう。

 アウディがオールロードクワトロなる商品を初めて世に出したのは、1999年のことだ。99年といえば、レクサスRX(当時の日本名トヨタ・ハリアー)、メルセデス・ベンツMクラス、そしてBMW X5と、乗用モノコックボディの高級クロスオーバーSUVが一気にブレークした時期と重なる。初代オールロードクワトロはそんな潮流へのアウディからの回答でもあったが、A6アバントの既存ボディを基本的にそのまま使った初代オールロードクワトロは、失礼ながら、「過渡期ゆえの苦肉の策」と見えなくもなかった。




 実際、アウディはそのわずか数年後に、専用デザインの本格SUV(Q7やQ5)を次々とリリースした。それでも、オールロードクワトロが終わることはなかった。それどころか、元祖となったA6系にA4系の弟分まで加わり、そのA4オールロードクワトロですら、こうして二代目が出現するに至ったわけだ。




 オールロードクワトロはもはや完全に定番シリーズモノに成長した。だから、新型A4オールロードクワトロも当然のように存在して、すでに新型A4を知る目にはほぼ予想どおりの内容で登場した。本国では豊富なエンジンラインナップや電子制御可変ダンパーも用意されるようだが、日本仕様はひとまず、バランスのいい2.0ℓガソリンターボにオーソドックスな固定減衰ダンパーを組み合わせた1グレードのみとなる。




 標準の17インチホイールを履くオールロードクワトロの走りは、とても穏当で、さわやかだ。今回の取材では、A4のセダンやアバントと同じ場所で直接乗り較べることもできた。それもあって、なおのこと、セダンやアバントが地を這うように俊敏で、それに対して車高が30㎜リフトアップされたオールロードクワトロが、ゆったりと穏やかに走ることが明確に確認できたわけだ。




 クルマに詳しい読者の皆さんは「車高が上がっているんだから、そりゃ当たり前だろ!?」とおっしゃるだろう。確かにそれはまったく正しい理屈なのだが、この最新のオールロードクワトロでは、そういう当たり前の理屈が、当たり前に感じ取れるところが最大の美点でもある。

居住スペースにも泥臭さや汗臭さは一切感じられない。写真の標準フロントシートはオーソドックスなデザインだが、これがなかなか快適で疲れにくい(関連記事はP58-65)。オプションでスポーツシート仕様も選択できる。

 現代の技術では、背高グルマをまるでスポーツカーのように走らせることも不可能ではない。ほかでもないアウディの本格SUVであるQシリーズも、そんな典型例のひとつ。しかし、この新しいA4オールロードクワトロは車高の高いクルマとして無理しすぎておらず、絶妙の「寸止め感」によるA4とは明確に異なる鷹揚さがとても心地いいのだ。




 山坂道での新型オールロードクワトロは、豊かなサスストロークを惜しげもなく使いながら、ゆったり上下しながら走る。普通のA4より速やかにスッとロール姿勢に入り、タイヤもグリップ偏重型ではないから、きれいに走らせるには、操作タイミングも普通のA4と少し変える必要がある。運転席からの眺めはA4そのまま、目線の高さも一般的なステーションワゴンと大差ない。そんなこともあって、箱根の山坂道でいきなり普通のA4から乗り換えて、一発目のカーブで操作タイミングがつかめず、思わず「おっとっと」となってしまったことを告白する。ステアリングの反応と利きは、普通のA4よりワンテンポ、マイルドだ。




 各部の制御を一括可変する「アウディドライブセレクト」をイジっても、シャシー関連ではパワステのアシスト量が増減するだけなのだが、アシスト最小となる「ダイナミック」モードにすると、手に伝わる接地感がハッキリと濃厚になって、少なくとも山坂道では他モードより一体感が出て、如実に運転しやすくなるのは、地上高の高いオールロードクワトロ特有の現象で面白い。




 また、ターンインでの動きは前記のように速やかなのだが、その先にはしっかりと踏ん張るので、絶対的なロール量は意外に小さい。しかも、ある程度の「おっとっと」までは、スロットルを踏み増すだけで、コーナリングが自然にまとまってくれるのは優秀なAWDのおかげだ。

エンジンは最高出力252㎰と最大トルク370Nmを発生する直列4気筒2.0ℓガソリン直噴ターボで、7速DCTを組み合わせる。セダンやステーションワゴンと比べて30㎜引き上げられた車高は悪路走破性を高めるだけでなく、やや鷹揚なハンドリングも生み出している。

高速巡航時はフラット性の権化

 冒頭に新型A4オールロードクワトロを「期待どおり」と書いたが、ひとつだけ期待以上……というか、予想外の部分がある。それはクワトロ(=AWD)システムだ。




 このクルマのAWD機構も基本的には、いつものセンターデフを持つ縦置きクワトロではある。しかし、最新の「ultraテクノロジー」を謳って、センターデフとリヤデフの2ヵ所に油圧多板クラッチを追加して、路面状況に応じて後輪フリー(しかもプロペラシャフトまでフリーにする)のFF状態で走るという。それでも一般的なオンデマンド式と異なるのは、クラッチを締結すればセンターデフ付きの本格フルタイムAWDとしても作動する点で、同システムは新型A4オールロードクワトロが市販車史上初という。




 このクルマにはさらに、昨今のドイツ系DCTのお約束となっているコースティング機能(低負荷巡航時に変速機をニュートラルにする)も備わる。ただ、そうした複雑かつ徹底的な走行抵抗低減対策を、現実的に体感できるシーンは皆無に近い。とくに新クワトロについては事前知識なく試乗して、最後の最後まで「やっぱり本物のフルタイムAWDはいいなあ」と恥ずかしくも勝手に合点していたほどである。




 2.0ℓ4気筒直噴ガソリンターボという、想定通りの定番エンジンを、物足りなく思う技術オタクもいるかもしれないが、このエンジンはお世辞ぬきで素晴らしく、オールロードクワトロとのマッチングもドンピシャだ。2.0TFSIは全域でスムーズで、過給ラグはまったくといっていいほど体感できない。1500rpmも回っていればパーシャルスロットルでも強力なパンチを繰り出して、それが6500rpm超のリミットまで落ち込まない。前記の「ダイナミック」モードにするとスポーツエンジンばりにメリハリの利いた加減速となるが、これまたオールロードクワトロをリズミカルに走らせるキッカケづくりに、絶妙の役割を果たしてくれるのだ。

コックピットの意匠は基本的にはセダンやステーションワゴンと変わらない。エクステリアにはアウトドアテイストを漂わせているものの、インテリアを都会的に仕立てることが、多くの顧客の嗜好に合致しているのだろう。

 山坂道では、良くも悪くも普通のA4より鷹揚なオールロードクワトロだが、下山して高速道に乗り入れると、これぞ水を得た……の、ドンピシャの合焦感がある。




 高速での新型オールロードクワトロはフラットの権化である。左右ロール方向の動きはそれなりに柔らかなのに、前後のピッチング方向の動きは見事に抑制されており、直進メインの高速道では、まさに上空からボディが吊るされたごとくピタリと安定する。豊かなストロークと厚めのタイヤのおかげもあって、日本特有の意地悪な目地段差に対しても、ホレボレするほどの吸収力だ。




 山坂道の急激な入力では速やかにロールしたシャシーも、入力がスローな高速コーナーではロールスピードも見事に抑制されて、上屋はまさにピタリと安定。最高250㎞/hまで設定できるアダプティブクルーズコントロールや、完全自動運転一歩手前のステアリング制御もあって、新型A4オールロードクワトロは理想的な高速クルーザーでもある。




 矢のように直進して、路面不整にも乱されない……という最新オールロードクワトロの美点は、オリンピックに向けての道路工事だらけで、あちこちで路面が荒れている最近の都心でも存分に活きるはずだ。




 今回は自慢の悪路性能を試せなかったが、新型オールロードクワトロは優秀な燃費も含めて、交通インフラが整った都市交通への適性が、大幅に高まった点も大きな特徴といえる。SUVの走破性と立体駐車場にも対応するパッケージを両立したオールロードクワトロは、降雪時などの緊急時の東京でも、まさに無敵の存在となりそうである。本来は本格SUVへのつなぎにすぎなかった(?)オールロードクワトロが、本命のQシリーズ発売以降もこうして根強く売れ続けている理由には、そんなところもあるかもしれない。

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