EICMA2019で発表となったBMW NEW Fシリーズ。1つはロードスタータイプのF900R、そしてもう1つがアドベンチャースポーツタイプのF900XRだ。どちらも並列2気筒エンジンを搭載するミドルレンジモデルで「スポーティなライディングの楽しさ、簡単な操作性、充実の装備オプションにより、魅力的な価値を提供」とある。

TEXT●大家伝(OYA Den)

搭載エンジンやドライブ周りはどうなった?

F900R

 BMWのミドルレンジを強化する、魅力的な2機種について紹介しよう。

 まずF900Rだが、こちらはF800Rの後継機としてお披露目された。この新しいダイナミックロードスターは正確で直感的でダイナミックであり、いつでも純粋なライディングを楽しむことができるモデル。

 いっぽうのF900XRは、S1000XRで確立されたアドベンチャースポーツのカテゴリー強化のために投入されたもの。XRが示す「スポーティさとツーリング能力の妥協のない組み合わせ」を実現するためのスペックが惜しみなく投入されている。



 この2機種には、スポーティなライディングダイナミクスのためにパフォーマンスを向上させた2気筒エンジンが搭載される。ベースとなったのは2018年にF850GSで初めて導入された、853cc/70kW(95.2PS)の直列2気筒エンジンだ。ポイントは8,500rpmで出力を77 kW(104.7PS)まで大幅にスペックアップしていることだろう。加えて92Nmの最大トルクは、全域で理想のトルクカーブを描くことにも成功している。

 性能の向上は、主にボアを2mm拡大して895ccとしたことによるところが大きい。そして鋳造ピストンから鍛造ピストンへと変更され、圧縮は13.1:1に。これに90度オフセットされたクランクシャフトを組み合わせ、点火タイミングは270/450度を採用。そのため90度Vツインエンジンと似た、パワフルかつエモーショナルなサウンドを実現している点も見逃せない。

 このエンジンにはクランクシャフトの前後に2つのカウンターウェイトシャフトを設定。これにより不要な振動を吸収し、撹拌損失を防ぐことに成功。なおドライサンプ潤滑方式を採用するが、別個のエンジンオイルタンクを持たないものとなっている。



 また、新しいエンジンドラッグトルクコントロール(MSR)とシフトアシスタントProがオプションとして設定されたこともトピックの一つだろう。電子制御されたMSRについては、突然のスロットルまたはシフトダウンの結果として後輪がスリップするのを防ぐ。標準装備のアンチホッピングクラッチは、機械的に事前設定されたしきい値から開かれ、シフトダウン時に後輪が踏み込むのを防止する効果があるが、濡れた路面でタイヤのグリップが低下した際にエンジンの抗力トルクと後輪ブレーキの同時作動とその後のスリップにより、後輪が静止摩擦限界を超える可能性がある。

 しかしMSRはこの危険を早期に検出。タイヤと路面の間の摩擦係数に応じて、スロットルバルブはドラッグトルクが補償され、後輪が静止摩擦範囲に留まるように、ミリ秒単位で開かれるため、特に滑りやすい路面での安全性が向上。

 エキストラオプションとなるシフトアシスタントProについては、クラッチを作動させることなく6速トランスミッションを素早く上下にシフトできるのが特徴だ。



 そしてF900RとF900XRには高度なライディングの楽しさと安全性のため、加えて個々のライダーの好みに適応できるようにライディングモード「レイン」と「ロード」、それにABSとASC(自動安定性制御、解除可能)が標準装備されている。

「レイン」モードではスロットルの応答がより穏やかになり、ABSとトラクションコントロールにより濡れて滑りやすくなった路面でのスリップを制御するように設定。「ロード」モードではエンジンがスロットルに最適な応答を提供し、ABSとトラクションコントロールがすべての道路で理想的なパフォーマンスを達成するように設定されている。

 オプションのダイナミックESA(電子サスペンション調整)が利用可能な場合、リアダンピングは「レイン」と「ロード」の両方でデフォルト設定の「ロード」に設定される。さらに「ダイナミック」ダンパー設定が利用可能だ。



 オプションとして「ライディングモードPro」を取り付けることも可能だ。これはダイナミックトラクションコントロールDTC、ABS Pro、ダイナミックブレーキコントロール(DBC)、およびエンジンのドラッグトルクコントロール(MSR)と組み合わせて使用できる。

 TFTディスプレイ用に追加されるコア画面(F900Rで2つ、F900XRで1つ)も加え、追加の「ダイナミック」と「ダイナミックPro」ライディングモード、ダイナミックブレーキコントロール(DBC)とドラッグトルクコントロール(MSR)が含まれる。

 ASCは必要に応じて解除可能なダイナミックトラクションコントロールDTC(ダイナミックトラクションコントロール)になるが、ABSはバンキング角度に応じてABS Proになる。

「ダイナミック」モードではスポーティな特性をさらに集中的に体験できるのが特徴となる。スロットル応答に合わせて最適に調整されたDTCおよびABS Proシステムが使用できるようになるが、後輪のリフトオフ検出は後の段階で介入。ドラッグトルクコントロール(MSR)の介入による制御も削減。ダイナミックESAが利用可能な場合のデフォルトなダンパー設定は「ダイナミック」となる。

「ダイナミックPro」モードは、特にスポーティなライダーに車両を最大限自分の要件に最適に適応させる可能性を提供する。これは3つのスロットルカーブ、3つのABS設定、4つのDTC設定によって実現。リフトオフアシスタントの無効化やすべての制御システムの介入レベルを、必要に応じて非常にスポーティなライディングスタイルに適応できることを意味している。

 ダイナミックブレーキコントロールDBCは意図しないアクセルの作動を回避することにより、困難な状況でもブレーキ時の安全性を高めてくれる。要はブレーキング中にスロットルバルブの開度を抑制し、車体が安定して制動距離が短くなるというもの。

車体周りとサスペンションの仕様は?

 F900RとF900XRには、最適な剛性、堅牢性、走行精度を実現するスチールブリッジフレームを採用。これに世界初の軽量な溶接プラスチック燃料タンクを組み合わせているが、シート下ではなく、シートとステアリングヘッドの間に配置。容量は13L(F900R)、15.5L(F900XR)とし、従来素材のタンクより約60%の軽量化も実現。たとえばXRタンクの重量はわずか2.8kgとなっている。

 視覚的に短くてスリムなリア周りに寄与するボルトオンスチール製リアフレームも新たに開発。タンデムステップ位置がライダー用ステップのサポートプレートに移されている。



 足周りは、フロントにφ43mm倒立フォークを採用。F900Rで135mm、F900XRでは170mmのホイールトラベル量を確保。対してリヤ側にはアルミ製スイングアームと油圧調整可能なショックを組み合わせ、同様にF900Rで142mm、F900XRでは172mmのホイールトラベル量となっている。ちなみにプリロードとダンピングの調整が可能だ。

 なおF900Rではホイールベースを1,518mm、ステアリングヘッドアングルを60.5°、フォークオフセットを23mmとし、ワインディングなどでのスポーティでアクティブなライディングに特化している。いっぽうF900XRではホイールベースが1,521mmとなり、ステアリングヘッドアングルは共通の60.5°、フォークオフセットを31mmとすることで、大幅にリラックスしたライディング姿勢を実現。快適性が顕著に向上し、タンデムでのツーリングやロングライドといった用途にも適応させつつ、スポーティなライディングにも過不足ないものとなっている。



 また用途に合わせた最適なサスペンションとするために、リヤにダイナミックESA(電子サスペンション調整)をオプションとして選択可能。これはリヤショックの減衰が乗車状況に応じ、ミリ秒単位で一般的な状況に自動的に調整されるというもの。安全性や快適性に関してまったく新しい次元での作動と操作を体験できる。ただ自律システムとしては動作せず、ABS / ABS ProやASCまたはDTCなどの他の制御システムと通信して作動する仕組みとなっている。



 ダンパーには「ロード」と「ダイナミック」の2つが設定され、走行中に変更することも可能。「ロード」設定はより柔らかく、より快適で長距離指向。 「ダイナミック」設定はよりタイトとなり、アスファルトでのスポーティなライディングスタイルをサポート。

 またダイナミックESAを使用すると、走行中でもハンドルのボタン操作だけでスプリングのプリロードが調整可能となる。



 F900RとF900XRのブレーキには、ABSとダイナミックブレーキライトを標準装備。ダイナミックブレーキライトとは、ブレーキ操作を背後の走行車両に効果的に知らせるというものだ。またフロントには4ピストンラジアルブレーキキャリパー×φ320mmのダブルディスクが組み合わされ、リヤにはシングルピストンフローティングキャリパー×φ265mmのシングルディスクを装備する。



 安全性を強化するさらなるコンポーネントとしてオプション設定される「ライディングモードPro」が選択でき、この仕様ではABS Proが標準となる。通常のABSよりも優れているのは作動がバンキング位置で許可されていること。

 ABS Proの利点はブレーキと乗り心地の安定性が向上することと、カーブでの優れた減速となる。特にパニック時の操作における操舵力の急激な変化が減少し、意図せずにオートバイが立ち上がることを防ぐ効果がある。



 なお「レイン」と「ロード」ライディングモードではABS Proが中~低摩擦係数での作動し、最適なブレーキ安定性のために設計。そのため規制は早い段階で始まる。

 「ダイナミック」ライディングモードではABS Proが高い摩擦係数で作動し、最適な減速が得られるように設計。そのため介入が遅く、後輪のリフト検出が減少する。

 さらに非常にスポーティなライディングのためのカスタマイズが可能な「ダイナミックプロ」ライディングモードでは、「レイン」&「ロード」用設定と「ダイナミック」用設定に加えて追加のABS設定を選択可能となる。これは後輪のABSとリフト検出が無効になり、バンキング角度機能ABS Proは使用不可となる。

電気システムと電子機器も気になる

F900R
F900XR




 オプション設定のヘッドライトPro(写真右)では、強力なLED照明ユニットがすべて標準装備される。メーターパネルまわりについても、新設計されたインジケーターと背面ライトにLEDテクノロジーを利用。







 夜間のライディング時における安全性は、オプションのアダプティブコーナリングライトによって保証される。LEDモジュールが追加され、曲がりくねった路面でも照明が届く。ミドルレンジでは唯一のアダプティブコーナリングライトとなるが、バンク角度に応じて、独自のリフレクターが取り付けられたメインヘッドライトの追加のLEDエレメントをオンにすることで機能する。ターニングライトはバンク角が7°(F900R)または10°(F900XR)を超え、速度が10km/hを超える速度で自動的にオンになる。その照明効果は25°のバンク角まで対応。

F900R
ライトガイド点灯


F900XR
ライトガイド点灯


 さらにヘッドライトProには、昼間のライディングライト機能を備えた象徴的なライトガイドも装備。F900Rの三日月形LEDライトガイドは、高いレベルの認識性を確保。F900XRにはヘッドライトの下端左右に印象的なLEDライトガイドがあり、XRファミリーらしさを強調するものとなっている。

 またこの2機種にはBMW Motorradの接続機能を標準装備し、比類なき情報の多様性と機能が盛り込まれた大型6.5インチカラーTFTスクリーンを搭載。グラフィックディスプレイはS1000RRに基づいており、さまざまな情報、ディスプレイの品質を踏襲。使いやすさは他に類を見ないものとなっている。

 開発サイドでは幅広い機能と情報に加えて、最高の読みやすさを実現することを重要視していたそう。たとえば左側のハンドルバーパネルにあるマルチコントローラーにより、すばやく安全で便利な画面操作が可能。

 標準状態ではスポーティなオンロードの世界に合わせた画面表示だが、オプションの「ライディングモードPro」には追加ディスプレイ(バンキング位置、減速、ラップタイマーなど)も含まれる。

 BMW Motorrad Communication Systemを搭載したスマートフォンと、ヘルメットがBluetoothを介してTFTスクリーンに接続されている場合、ライダーはメディア再生や電話機能に簡単にアクセス可能となる。

 これらの機能はアプリをインストールせずに使用できるが、無料のBMW Motorrad Connected Appを使用すれば矢印ベースのナビゲーションも使用可能となる。

 さらにオプションのインテリジェント緊急コールが使用可能な状態なら、緊急事態でのクイックヘルプが受けられる。これはシーンへの支援を可能な限り迅速に行うことを目的としたeCallシステムで、緊急事態または事故が発生した場合にインテリジェント緊急コールが自動または手動で起動されるというもの。それによってオートバイの位置データが送信されるので、事故現場の座標に対して資格のあるBMWを介してレスキューチェーンが作動する。BMWコールセンターとは日本語で問題なく通話できるが、eCallのレスキューチェーンを有効にするにはSIMカードを介した携帯電話接続が必要となる。

 オプション設定としてキーレスライドシステムも利用可能。これはすべてのロック機能を無線で簡単に有効化できるというもので、従来のロックと解除にキーを使用するという必要がない。このシステムでは車両固有の周波数で無線信号を送信し、ステアリングロック、イグニッション、フューエルフィラーフラップ、アラームシステムが車両キーに組み込まれたトランスポンダーによって制御される。

最後はイクイップメントプログラム

 新しいFシリーズには幅広いオプションを設定しているのがいかにもBMWらしい。カスタマイズするために選択できるオプションとして、「オプショナルイクイップメント」は工場での生産プロセスに統合されるもの。「オプショナルアクセサリー」はディーラーまたはユーザー自身によって取り付けられるものを指す。

 以下に豊富なオプションから選択して設定されたパッケージを紹介しておくことにする。



◎ダイナミックパッケージ

F900R:ダイナミックESA、ヘッドライトPro(適応コーナリングライト、昼間のライディングライト)

F900XR:ヘッドライトPro(適応コーナリングライト、昼間のライディングライト)、シフトアシスタントPro



◎アクティブパッケージ

F900R:シフトアシスタントPro、ライディングモードPro(DTC、MSR、DBC、ABS Pro)

F900XR:ライディングモードPro(DTC、MSR、DBC、ABS Pro)、ケースホルダー、グリップヒーター



◎コンフォートパッケージ

F900R:キーレスライド、グリップヒーター

F900XR:キーレスライド、センタースタンド、ダイナミックESA



◎ツーリングパッケージ

F900R:ナビゲーションデバイス、クルーズコントロール、センタースタンド、ケースホルダーの準備

F 900 XR:ナビゲーションデバイスの準備、クルーズコントロール





































情報提供元:MotorFan
記事名:「 BMW F900XR・F900R|アドベンチャーとネイキッドスポーツ、BMWの新型 Fシリーズが登場| EICMA2019