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世界のトンデモ連結エンジン——W型の源流、UにH、Xまで


ドイツ流エンジンのなかでもユニークなフォルクスワーゲン・グループのW型エンジン。無論、W型のシリンダー・レイアウトは同グループのオリジナルというわけではない。ここではその発想の源流を探ってみよう。


ILLUSTRATION●熊谷敏直(KUMAGAI Toshinao)

「ユニーク」と位置付けられている、向かい合う狭角V型のシリンダー列をさらにV型に配置した形のフォルクスワーゲン・グループのW型エンジンだが、その「思想」の源流をたどれば、決して特殊なものではないことが理解できる。




 ガソリン、ディーゼルを問わず、今まで世の中に登場してきたエンジンのシリンダー列配置を見てみると、W型は言うに及ばず、U型、H型、Y型、X型、果ては5列扇型、逆Δ(デルタ)型とでも言うべきものまであり、それらはちゃんと実用化されてきているのだ。このようなシリンダー列配置は主に20世紀中盤あたり(特に1920~30年代が顕著)までの航空機や船舶、機関車、戦車用エンジンとしての使用が知られるが、当然、自動車(二輪車も含む)への搭載の試みもあった。




 では、なぜこのようなシリンダー列配置が試みられてきたのか? 「今さら」な感はあるが、エンジンの総排気量は「(ボア(内径)×1/2)2×π(円周率)×ストローク(行程)×シリンダー(気筒)数」で算出される。一般に排気量が大きいほど出力もトルクも上がる。従って「強力なエンジン」を手っ取り早く作ろうとすれば、既存エンジンのボアやストローク、シリンダー数を増して排気量を上げてやればよい。理屈では簡単だが、ここに「工作精度」と「材料強度」という問題が登場してくる。




 たとえば、ある直列エンジンをベースとして「強力なエンジン」を仕立て上げようと考えた場合、ボアやストロークを増やしてやるには、ある程度の精度を持った工作技術があることが前提となる。またシリンダーブロックが同じだからその増量にも物理的限界がある。ではシリンダー数を増やしてやる方はと言えば、増やした分だけ長くしたシリンダーブロックとクランクシャフトを新造する必要がある。

W型 4バンク

 2基のV型エンジンをギヤやチェーンなどで並列に連結した形式。フォルクスワーゲン・グループのW型がこれに相当。長さは短くできるが、まずは狭角V型を成立させねば、通常の市販車で想定されるエンジンルーム寸法内におさめられない。ヤマハのWGPマシン、YZR500に1982年に搭載されたV型4気筒のOW61は、この形式に分類することもできる。航空機用ではダイムラーベンツが第二次大戦中にDB601倒立V型12気筒を2基連結したDB606、同じくDB605を用いたDB610といった24気筒を製造、爆撃機で使用しているが、2基の同調や冷却問題が解決できず、稼働率は恐ろしく低かった。

W型 3バンク

 V型エンジンに1列足したような形式でクランクシャフトは1本。「真のW型」とも呼ばれる。1906年にアンザーニが作ったオートバイ用3気筒が最初だと言われる。この形式はフォルクスワーゲン・グループでも研究しており、試作18気筒エンジンがブガッティのコンセプトカーEB118やEB218に搭載された。また、1990年にはフランコ・ロッキ製作の12気筒がライフのF1マシンに搭載されている。フォルクスワーゲン・グループやライフF1チームでは、中央バンクの排気熱が両端のバンクに干渉するという問題が報告されており、どちらもこの形式には早々に見切りをつけてしまった。

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