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インスタ映えするフェラーリは開けても閉めても最高だった【フェラーリ・ポルトフィーノ試乗記】


カリフォルニアTの後継モデルとして2018年に日本導入されたポルトフィーノ。新設計された強靭なシャシーに600㎰/760Nmを発生するV8ツインターボを搭載する。堅牢なハードトップを開けて走り出せば、そこはポルトフィーノの真骨頂だ。夜の帳が下り始めた横浜の街で佐藤久実がその走りの魅力に浸ってきた。




REPORT●佐藤久実(SATO Kumi) 


PHOTO◉篠原晃一(SHINOHARA Koichi)




※本記事は『GENROQ』2019年11月号の記事を再編集・再構成したものです。

 9月に入ると、過ぎ行く夏を惜しむ気持ちと、ようやく暑さから解放される、という気持ちが混在する。現実にはまだまだ残暑が続くが、それでも真夏よりは日差しがちょっと柔らかくなったとか、日が短くなってきたなとか、ふとした瞬間に秋の気配を感じるようになってきた。そんな初秋のある日、フェラーリ・ポルトフィーノで、身近な“小さな秋”を感じるべくドライブした。




 リトラクタブル・ハードトップを搭載したクーペコンバーチブルのポルトフィーノ。一目見た瞬間、カッコ良さ以上に美しさが際立った。フェラーリのようなスポーツカーの場合、ハイパフォーマンスを感じさせる“機能美”を備えたエクステリアは、時に威圧感を覚えるほどの存在感がある。だが、ポルトフィーノはそれとはまったく異なる、グランドツーリングカーらしい、もう少し柔らかな佇まいでありながらも強烈な“オーラ”を放っている。




 ドライバーズシートに収まった時も、ドライバーのスキルを吟味するような排他的な雰囲気はなく、むしろフレンドリーに迎えてくれているようにさえ感じられた。

 存分にオープンエアモータリングを堪能したいとなると、さすがに日中はまだ日差しがキツイ。よって、夕方からのナイトクルーズに出かけた。




 残念ながら、乗り始めは小雨がパラついていたのでクーペのまま走る。この手のクルマに乗ると、あくせくと先を急ぎたくなる悲しいサガだが、不思議と急かされない。街中をゆったりクルージングするのも苦ではない。ドライブモードはノーマルで走るが、乗り心地がすこぶる快適だ。スポーツカーでありながら、ラグジュアリーな雰囲気すら味わえる。




 乗り心地だけではない。すべての操作系がゆったりモードの走りでもピタッとドライバーの意に沿うのだ。たとえば、電動パワーステアリングのフィールも質感があり、ステアリングレスポンスも良いが、不自然なクイックさはない。600㎰/760Nmのパワーを有するが、日常シーンでこれを誇示することはなく、アクセル操作に神経質になることもない。まさしく、GTカーらしい振る舞いであり、「能ある鷹は爪を隠す」と言わんばかりだ。




 しばらくすると雨が止んだので、トップを開ける。止まらずとも、低速走行で、14秒ほどでオープンになる。途端に雨上がりの湿った空気が肌にまとわりつく。だが、走っていると重たかった空気がほんのちょっとずつ軽く、そして涼しくなっていく、そんな微妙な変化を肌で感じられるのもオープンカーならではの魅力だ。そして、キャビンに入るエアフローも少なく、優しく撫でるような風の通り具合も快適だ。




 変わったのは空気だけではない。ノーマルモードのエキゾーストサウンドの響き具合が何とも心地よい。人目を気にするほどは轟かず、加速した時など刹那的かつ控えめに存在感を示し、快適でラグジュアリーな雰囲気の中にも、スポーツカーらしい高揚感とオープンカーらしいダイレクトさを与えてくれる。

 今回は遠出したわけではなく、横浜界隈をドライブした。海越しに見るみなとみらいのキラキラしたネオンや浮かび上がる観覧車。ちょっと大げさかもしれないが、見慣れた横浜の景色にいつもと違った新鮮さがあった。ウインドウ越しに見ている景色を直接目に触れる。透明なガラスなのに、それを隔てるか否かでこんなにも感覚が違うなんて不思議だ。




 横浜の海沿いを走っていたら、ふと、ポルトフィーノを訪れた時のことを思い出した。カラフルで美しい港町の光景が今でも頭の中に思い浮かぶ。「エレガンスと気品あふれる景勝地」として世界に知られている街だが、港のあたりは素朴な雰囲気もあり、とても居心地が良かった。このクルマのネーミングの由来が少しわかったような気がする。




 ポルトフィーノは、カリフォルニアTと同じV8エンジン搭載のリトラクタブル・ハードトップで同じセグメント、つまり後継モデルとなるわけだが、ドライブしていてまったく違う雰囲気を感じる。まさに、カリフォルニアにいる時とポルトフィーノにいる時のように。何がここまで異なる雰囲気を醸し出すのか、ドライブが終わるまで答えは見つからなかった。改めてクルマのチューニングの妙を感じた。




 スポーツカーとオープンカー。かたや、パワーとスピードを追い求め、こなた、それらの呪縛から解放されオープンエアモータリングを堪能する。一見、対極にありそうだが、実はとても相性が良い。むしろその対比を1台で味わえるのが贅沢で、魅力的なのだ。フェラーリ・ポルトフィーノで初秋の夜のドライブをしながら、そんなことを再確認した。

SPECIFICATIONS


フェラーリ・ポルトフィーノ


■ボディサイズ:全長4586×全幅1938×全高1318㎜ ホイールベース:2670㎜


■車両重量:1664㎏


■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:86.5×82㎜ 総排気量:3855㏄ 最高出力:441kW(600㎰)/7500rpm 最大トルク:760Nm(78.5㎏m)/3000~5250rpm


■トランスミッション:7速DCT


■駆動方式:RWD


■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチルリンク


■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク


■タイヤサイズ(リム幅): Ⓕ245/35ZR20 (8J) Ⓡ285/35ZR20 (10J)


■パフォーマンス 最高速度:320㎞/h以上 0→100㎞/h加速:3.5秒


■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:11.7ℓ/100㎞ CO2排出量:267g/㎞


■車両本体価格:2530万円(消費税8%)
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