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ユトリの豪華ツアラー


シリーズの上級上位機種がこれ。大きくて長い立派なフォルムが印象的。太いトルクを誇る1260ccエンジンを搭載し、悠然たる乗り味が期待できる。前後に17インチホイールを採用。1260エンデューロや弟分の950Sはフロントに19インチを装着。1260S は舗装路での快適性やスポーツライクな操縦性に重点をおく仕上がりが見逃せない。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ドゥカティ・レッド

◼️ドゥカティ・ムルティストラーダ1260S.......2,749.000円

ボルケーノ・グレイ.......2,790,000円
◼️ムルティストラーダ1260 PIKES PEAK.......3,199.000円(3kg軽い鍛造アルミホイールを装備)


 ツアラーと呼べるカテゴリーで、今や主流となっているカタチがアドベンチャー系を頂点に掲げるマルチパーパスなバイクである。オフロードへも誘える多用途性を誇る高機能ぶりは、ライダーが抱く旅への夢を大きく広げてくれる。


 ドゥカティでは現在5機種がリリースされているが、同社のフラッグシップ・エンジンと言えるテスタストレッタDVT 1260ccのLツインを搭載。DSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)と呼ばれる贅沢な電子制御式サスペンションを装備した主力モデルがこれである。




 2015年の先代DVT 1200と比較するとストロークを3.6mm 延長。ボア・ストロークは106×71 .5mm。総排気量は64ccアップの1262ccになった。13.0対1という高圧縮化も図られ、パワー・トルク共に向上。しかも吸排気系が専用チューニングされ、同エンジンの中でも常用域で太いトルクを発揮する柔軟な出力特性を誇っている。


 


 車体関係でも1200比で48mmものロング・スイングアームを採用し、ホイールベースは一気に55mm長い1585mmになった。冒頭に記した通り、前後ホイールに17インチサイズを選択。太めのピレリ製スコーピオン・トレイル2を装着しているのも特徴的である。


 ホイールトラベルは前後共に170mm。シート高は上下2段切り換え式で950Sよりも低い800/820mm。オプションで20mm高いハイシートも用意されている。


 


 ボッシュ製6軸慣性測定ユニット(IMU)の搭載による数々のハイテク電子制御デバイスを満載。坂道発進を容易にするVHC(ビークル・ホールド・コントロール)やライディング・モード選択、コーナリングABS。ウィリーコントロールやコーナリング・ライト他、最新の上級装備が奢られているのである。

高速長距離ツーリングで真価がわかる。

 試乗車を目の当たりにすると長くてドデカイ。全体的にバランスのとれた印象だった950Sと比較すると、どこか違和感を覚えたのが正直な第一印象だった。主な原因はその社格とは裏腹なフロント17インチホイールの採用とシートの低さに起因していると思う。


 跨がると、なるほど足つき性が良い。走る場所(実際の使い方)を踏まえると限りなく舗装路100%になる日本の現状とのマッチングも良く、これはこれで潔い考えだと思う。信号待ち等、日常での安心感、そのまま車体を前後に動かす時の扱いやすさも良い。狭い林道でUターンして引き返して来る様なシーンでもこれなら不安は少ないのである。


 ただ、視点の高さが下がり、アドベンチャー・ツアラー風の雰囲気は希薄になる。




 エンジンもスタイリングも全くキャラクターは異なり、元々の立ち位置は別次元にあるが、総合的に求める機能性へのアプローチでは、カワサキ・ヴェルシス1000SEに通じる乗り味と快適性が感じられた。


 但し大きく違うのは、圧倒的な軽快感である。ドゥカティの資料によれば、どのような道でも最高峰の快適性を追求した旨のコンセプトが強調されていた。ヴェルシスより20kg以上軽い。また軸距は65mmも長く、リヤの装着タイヤはワンサイズ太いのも見逃せない。




 乗り味として顕著なのは、やはり柔軟で図太く、時に大胆なパワーも引き出せる出力特性が素晴らしい。明らかに力持ちな感覚を背後に忍ばせながらの軽やかな噴き上がりは一般的な市街地走行でも快適だ。ちょっと峠を攻めるスポーツ走行でも負ける気のしないハイパフォーマンスを発揮。特にコーナー脱出時の鋭いレスポンスが心地よい。さらに言うと高速道路でもゆとりの大きなクルージング性能が気分良いのである。




 ちなみにローギヤで5000rpm回した時のスピードはメーター読みで50km/h。6速トップ100㎞/hクルージング時のエンジン回転数は約3500rpmで、同シリーズの中でも最も低い回転で心地良く走れる設定だ。


 高速を出るとワインディングロードのある山道へ誘われる。フロントに19インチホイールを履く兄弟モデルとは明らかに異なる操縦性が存分に発揮される。鋭くも軽いグッドハンドリング。いわゆるロードスポーツタイプのバイクに負けない運動性能と操る楽しさが味わえたのである。


 実用的ツアラーを求めるのなら、ある意味同シリーズ中のベストチョイスになる魅力が備わっていた。




 オプションのサイドケースやトップケースもゴツいアルミ製より、車体と同色アレンジを施こされた上品なパニアケースが方がお似合いだ。ムルティストラーダとは言え、舗装路重視の贅沢な選択肢となるモデルなのである。

⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)



車体は明らかに大柄なボリューム感を覚えるが、ご覧の通り弟分の950Sよりも足つき性が良い。踵の浮きが少なく、乗車したままバイクを後退させるのも容易に扱えた。シート高は上下調節式で、ハイ・ロー2段階が選べる。


⚫️ディテール解説

眼光鋭いフロントマスク。ヘッドランプはLED式。中央寄りの角形6眼が通常の前照灯。両端は車体がバンクした時に点灯してコーナー内側を照射するコーナリングライトだ。

センター中空アクスルの鋳造ボトムを備えるKYB製φ48mm倒立フォークを採用。ブレーキはφ330mmダブルディスクにブレンボ製M50 対向4ピストンのモノブロックキャリパーをラジアルマウント。

デスモドロミック可変バルブタイミング機構を持つテスタストレッタDVTエンジンを搭載。L型と呼ばれる横置き90度V型2気筒は、スマートな車体デザインに貢献する。

右出しツインマフラーはステンレススチール製。スイングアーム・ピボット下部に大容量チャンバーを持つ。

外からは見えないが、プログレッシブリンク機構を持つモノショック・サスペンションはフルアジャスタブル。電子制御されるDSS(ドゥカティ ・スカイフック・サスペンション)EVOが採用されている。

リヤは左側片支持のロングスイングアーム方式。中空構造の大径アクスルシャフト採用はいかにもドゥカティらしい。φ265mmnのシングルディスク・ブレーキには、ブレンボ製2ピストンのピンスライド式油圧キャリパーを装着。

ナックルガードの標準装備がアドベンチャーツアラーらしいポイント。ハンドルバーはテーパードパイプが使用されている。

多彩なコントロールをするハンドル左側スイッチ。平行に並ぶグレーのシーソースイッチは左側が各種モード変更&選択スイッチ。右側はオートクルーズ用のコントロールスイッチだ。
赤いのはエンジンキルスイッチ。その下の丸いのが始動用スタータースイッチ。最下段がイグニッションスイッチでスマートキー方式が採用されている。最上段はグリップヒーター用。


手でつまむとロックが解除され、スクリーン高は60mmの範囲で簡単に上下調節できる。
明瞭で見やすい5インチのTFTフルカラー液晶ディスプレイ。中央の赤表示はサイドスタンド警告。右の数字はギヤポジションを示す。その他多彩な情報表示がなされている。


ライディングモードの表示画面。写真は通常モードと言える「ツーリング」にある事を示し、組み込めれた各種電子デバイスの設定具合がわかる。任意に設定変更もできる。
乗車状況の簡単設定ができる画面。ハンドル左側シーソースイッチの⬇︎を長押しすると現れる。乗車人数や荷物の具合を選択すると、電子サスペンションのセッティングが自動的に調整される。


段差のある前後セパレートシート。フロントシートは取り付け位置が2段階に変更可能。写真は上段(820mm)設定だ。
バッテリーは斜めに搭載され、リレー等の電装系やDSSのユニットでぎっしり。


リヤシート下部にはETC機器(オプション)を搭載。若干のスペースが空けられている。
写真は車体後方から眺めた所。左側には12Vアクセサリー電源(但しDIN端子)。右側にはUSB接続端子が標準装備されている。


リヤシートから面一で後方に伸びるデザイン。キャリヤやトップケース・ベースになる他、タンデムライダー用のアシストグリップとしても活用できる。

ステアリングまわりを取り囲むフレームマウントのハーフカウリングを装備、タンクへと繋がる膨らみが印象的。エンジン周辺からテールエンドまではスマートなデザインだ。

◼️主要諸元◼️

シート高:800~820mm(可変式)


軸間距離 :1,585mm


乾燥重量:212kg


車両重量:235kg


燃料消費率:5.2L/100km(19.2km/L)




原動機型式:テスタストレッタDVT


原動機種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ(デスモドロミック可変バルブタイミング)


気筒数配列:L型2気筒


総排気量:1,262cc


内径×行程:106mm×71.5mm


圧縮比:13.0:1


最高出力:158ps(116kW)/9,500rpm


最大トルク:13.1kgm(128Nm)/7,500rpm


始動方式 :セルフ式




燃料タンク容量:20L(無鉛プレミアムガソリン指定)


吸気・ボッシュ製電子制御燃料噴射、φ56mm楕円スロットルボディ


排気・ステンレススチールマフラー、テルミニョーニ製カーボンファイバー・テールパイプ


点火・デュアルスパーク




1次減速比/2次減速比:1.840/2.667


クラッチ形式:湿式多板 油圧セルフサーボ/スリッパー・クラッチ機構付


変速装置/変速方式:6速


変速比:


 1速:2.466 


 2速:1.764 


 3速:1.350 


 4速:1.090 


 5速:0.958


 6速:0.880


フレーム形式:スチールパイプトレリスフレーム


キャスター/トレール:25°00′/111mm


タイヤサイズ(前/後):


 120/70 ZR17(チューブレス)/


 190/55 ZR17(チューブレス)


制動装置形式(前/後):


 油圧式ダブルディスクブレーキ(ボッシュ製コーナリングABS)


 油圧式シングルディスクブレーキ(ボッシュ製コーナリングABS)


懸架方式(前/後):テレスコピック/アルミニウム製片持ち式スイングアーム


ホイールトラベル(前/後):170mm/170mm


乗車定員 :2名

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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