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激戦区に投入されたラグジュアリーSUVクーペ【AUDI Q8】


近年流行のSUVはますます細分化が進んでいる。


スタイリッシュなクロスオーバーSUVはポストサルーンたるアーバンエクスプレスとして定着しているといってもいい。


アウディの最新SUV、Q8を市街地から山道まで全方位的に試した。




REPORT◉吉田拓生(Takuo Yoshida)


PHOTO◉神村 聖(Satoshi Kamimura)




※本記事は『GENROQ』2019年9月号の記事を再編集・再構成したものです。

 Qシリーズの最高峰なのだからボディが大きいのは当たり前としても、アウディQ8の最初のインパクトはサイズ感ではなく、顔のデザインにある。違和感を承知で顔にめり込ませたような若干色の明るいシングルフレームのグリルは、滑らかな粘土質の岩の中からギラリと鉄鉱石が顔を覗かせたような凄味を漂わせているのだ。一目でアウディとはわかるが、まるでコンセプトモデルかピュアEVのように前衛的といえる。




 全体のシルエットは低く設定されたルーフラインが早めに下降しはじめ、短いオーバーハングで収束する昨今流行りのSUVクーペの体をとる。各ホイールアーチに二重の縁取りがされることで、タイヤの存在感が増し、実際よりも重心が低く見える効果もある。そもそもスタイリッシュであることを一義としているアウディが、これまでSUVクーペをリリースしていなかったことは不思議なくらいだが、後発とか後追いといった事実を感じさせないほどそのスタイリングにはスキがない。




 アウディQシリーズで言えば、これまでは末っ子のQ2だけが多面体をモチーフにした一風変わったデザインを纏っていたが、それでもフロントマスクに関してはここまで大胆ではなかった。Q2はあくまで進化の過程であり、ピュアEVであるe-tronにも通じるQ8こそが未来のアウディSUVデザインの基盤となると解釈してよさそうだ。

 アウディQ8の車高は、同じVWのMLBエボ・プラットフォームを利用するQ7よりも3㎝ほど低いだけだが、リヤボディのシャープさが効いてかなり低く感じられる。実車を目の当たりにしてみると、ランボルギーニ・ウルスに近いオーラが感じられる。




 ちなみにウルスの方が117㎜も長く、21㎜も幅広く、さらには67㎜も低いので、ワイド&ローが際立っており、その迫力はまるで別物なのだが、方向性としてはウルス向きといっていい。Q8のイメージカラーであるドラゴンオレンジメタリックだと、よりランボ的な印象が強いのだが、今回の試乗車のデイトナグレーでも十分にトガッて見える。

最新アウディのデザイン言語に基づく水平基調のインパネ。デビューパッケージSラインにはアルカンターラ/レザーコンビネーションのスポーツシートが奢られる。後席も左右独立の4ゾーンエアコンを装備する。



マルチカラーアンビエントライトは夜を優雅に演出してくれる。荷室容量は605ℓで最大1755ℓを誇る。

 昨今のSUVはルーフの高さに合わせて徐々に着座位置も低くなっているようで、Aピラーの内側あたりに取っ手がないか探すようなこともなくスッと乗り込むことができる。スポーティな革巻きステアリングやその奥のフルデジタルのメーターパネルは見慣れた今どきのアウディ風。だがダッシュパネルの中央から助手席方向にかけて続くスケートリンクのような平面は前衛的なエクステリアに呼応してQ8のスペシャリティ感を盛り上げている。




 ダッシュの平面の中にインフォテインメントのディスプレイが埋め込まれており、そのすぐ下にも主に操作系を表示するためのタッチパネルディスプレイが備わって最先端のデジタルコックピットを演出している。存在感のあるダッシュや幅広のセンターコンソールで見た目に圧迫された感のあるフロントシートだが、サイズ的にはたっぷりとしており、車格に見合っている。




 リヤシートは若干の前後スライドが可能で、荷室とスペースを分け合うことができる。このためシートを目一杯下げればリムジン的な足元スペースを享受できる。またこの手のSUVクーペの泣き所であるリヤのヘッドクリアランスも、180㎝ほどの大人でも問題なかったので、そこは全体のボディサイズが効いているのだろう。




 ラゲッジスペースも同様で、床面の高さはそれなりに高いが、605ℓもあるスペースは広大で、年を追うごとに量が増えていると思われるキャンプ道具も、リヤシートを倒すことなくちゃんと収められるはず。

グリルに埋め込まれたレーダー類。追従クルコンやレーンキープアシストなど先進安全運転支援システムが標準装備される。

 エクステリアのみならずインテリアに関しても見た目はインパクト大。それでもスペース的にはボディの大きさも手伝って不都合な箇所は見当たらない。ではQ8の走りの部分はどうなのか? 




 今回試乗したQ8 55TFSIクワトロのパワーユニットは最高出力340㎰のガソリンV6ターボに48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたもの。車重が2.15tほどあるので、パワーが溢れ出るような感じではないのだが、流れの速い都心でドライブしている限りダッシュも鋭くストレスはない。




 エンジンパワーよりも印象的なのはプログレッシブな機構を持つハンドリングだ。ステアリングの切りはじめこそジワッとやさしいが、そこから先は累進的に切れ込んでいく印象で、最初はずいぶんと違和感がある。しかも小回りするような場合にはそこに後輪操舵機構であるオールホイールステアの動きが加わるので、違和感マシマシ。だが慣れてくるとこのアンナチュラルな立ち振る舞いがQ8の斬新な見た目と符合して感じられるから面白い。




 エアサスによる乗り心地やフラットなコーナリング、前後シートにおける静粛性、そして現代車に欠かせないレーンキープも含めたACC(アダプティブクルーズコントロール)の仕上がりについても、車格や見た目の高級感に引けを取っていない。Q7やA8由来の技術でまとめているので当然といった見方もあるが、デビューしたばかりのQ8の完成度はかなり高いといっていい。

3ℓV6ターボエンジンは48Vのマイルドハイブリッドシステムと組み合わされ、アイドルストップからの復帰もスムーズに作動する。

 都会派SUV、クーペライクSUV等々、マーケティングの担当者はキャッチーで新しい世界観づくりに忙しそうだ。SUVが想像以上に流行り、一般的なスタイリングが陳腐化してしまったため、新しい何かが必要になり、それがSUVクーペの方向性に定まりつつあるのだろう。




 これは4ドアセダンから派生したスタイリッシュな4ドアクーペへの流れに似ているが、しかしSUV9の場合はクーペ的なスタイリングが、そのまま今後のSUVの本流になっていきそうな勢いを感じる。何しろ今どきのSUVで本格的なオフロードを走る人はほとんどいないし、ラゲッジスペースの角が斜めにカットされ、お洒落だから困るという人もあまりいないからである。




 今回のデビューパッケージは1100万円を越えるが、標準のQ8 55TFSIクワトロは1000万円を切る。価格的にはGLEクーペやX6といったライバルと拮抗するが、目新しさが違うのでQ8の競争力は十分と見ていいだろう。

左右をつなぐリヤランプは欧州メーカーの流行だろうか? 試乗車のデビューパッケージSラインは22インチの大径ホイールが標準となる。

SPECIFICATIONS


アウディQ8 55 TFSIデビューパッケージSライン


■ボディサイズ:全長4995×全幅1995×全高1690㎜


ホイールベース:2995㎜


■車両重量:2170㎏


■エンジン:V型6気筒DOHCターボ


総排気量:2994㏄


圧縮比:11.2 最高出力:250kW(340㎰)/5200~6400rpm


最大トルク:500Nm(51.0㎏m)/1370~4500rpm


■トランスミッション:8速AT


■駆動方式:AWD


■サスペンション形式:Ⓕ&Ⓡダブルウイッシュボーン


■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ&Ⓡ285/40R22(10J)


■燃料消費量:10.3㎞/ℓ(JC08モード燃費)


■車両本体価格:1102万円
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