日産GT-R50周年記念モデルに試乗した。2020年モデルである。R35 GT-Rは、2007年発表、つまり2008年モデルがスタートというわけだから、すでに13シーズン目ということになる。異例に長寿なスーパースポーツを450kmほどドライブしてみた。

ベースになったプレミアムエディションは1210万5720円 ボディカラーは「ワンガンブルー」ほかに、ブリリアントホワイトパール(の場合は、赤いステッカー)、アルティメイトメタルシルバー(の場合は、白いステッカー)

 個人的な話で恐縮だが、R35日産GT-Rには個人的に想い入れがある。2008年の早春にMotor Fan illustrated特別編集『日産GT-Rのテクノロジー』という1冊丸ごとGT-Rの技術だけに焦点を当てたムックを作っていたからだ。

 日本車としては異例ともいえるほどサプライヤーの協力を表に出してくれたGT-Rだったからこそ可能だった企画だった。日産広報部の協力のおかげもあって、日産&サプライヤーの70名以上のエンジニアと会い、そこに注ぎ込まれた技術についての取材をさせてもらったのだ。たとえば、

愛知機械:GR6 デュアルクラッチトランスミッション

IHI:エキマニ一体ターボチャージャー

ユニプレス:深絞り燃料タンク&サイドメンバー

カルソニックカンセイ:フロントエンド・モジュール

ビルシュタイン:ダンパー

ヨロズ:サブフレーム

ブリヂストン/ダンロップ:タイヤ

レイズ:アルミ鍛造ホイール

ブレンボ:ブレーキ

ファルテック:外装品

タチエス:シート

ポリフォニーデジタル:マルチファンクションメーター

といった具合だ。

 日産テクニカルセンター(NTC)にも通い、横浜工場で匠がエンジンを組む様子を見せてもらい、栃木工場で組み立てを見せてもらった。R35 GT-Rがどれほど前例のない開発をしたのか、「時速300kmの走行性能を保証する」のに、越えなければならなかったハードルの数々の一端を取材し、一冊にまとめられたのは幸運だった。

全長×全幅×全高:4710mm×1895mm×1370mm ホイールベース:2780mm

最小回転半径:5.7m
車重:1770kg 前軸軸重970kg 後軸軸重800kg


 とはいえ、そのR35 GT-Rの「2020年モデル」に試乗する機会があろうとは思ってもみなかった。なんといっても13シーズン目なのだ。2008年といえばポルシェ911は前の前のモデル(997型)、V8ミッドシップ・フェラーリのF8トリブートも同じく前の前のモデルF430の頃だ。ランボルギーニ・ウラカンだって先代のガヤルドだった時代だ。



 日産GT-Rだけが毎年のような技術改良を受けながらずっとほぼ同じカタチで作り続けられていたのだ。



 ときどき試乗する機会があったので、さすがに2008年モデル以来というわけではないが、2020年モデルに乗って純粋に驚いた。



 全然古臭くない。洗練されていて、運転していて楽しい。依然として素晴らしいクルマだったのだ。せっかくだから2008年2月に撮影した写真と比べながら2020年モデルの印象を紹介したい。

2008年モデル
2020年モデル




2008年モデル
2020年モデル


 ワンガンブルーに白いストライプという、ド派手なルックスは、どこへ行っても目立つこと目立つこと。子供達に人気で、高速道路で小学生に手を振られたこと数回。今どきの子供から見ても「普通じゃないなんかスゴイクルマ」に見えるのだろう。

2008年モデル

型式:VR38DETT型 排気量:3799cc ボア×ストローク:95.5×88.4mm 圧縮比:9.0 最高出力:480ps(353kW)/6400pm 最大トルク:588Nm/3200-5200rpm 燃料:プレミアム

2020年モデル 50周年記念車

型式:VR38DETT型 排気量:3799cc ボア×ストローク:95.5×88.4mm 圧縮比:9.0 最高出力:570ps(429kW)/6800pm 最大トルク:637Nm/3300-5800rpm 燃料:プレミアム

 2008年モデルも2020年モデルもエンジンの型式はVR38DETT型で変わらない。排気量も3799ccで変わらない。スペックの比較をしてみよう。



最高出力:08モデル 480ps/6400rpm 20モデル 570ps/6800rpm

最大トルク:08モデル 588Nm/3200-5200rpm 20モデル 637Nm/3300-5800rpm



 だ。出力で90ps、トルクで49Nm。これが13年の進化だ。



 08モデルでも充分以上にパワフルだったVR38DETTだが、20年モデルで感じたのは、「洗練」だ。荒々しくないが、パワフル。いつどこでどんな状態でアクセルを踏んでも大きなボディがググっと前へ出る。3.8ℓという大排気量、単気筒容積633ccが生み出すトルクはさすが。昨今のダウンサイジングターボとは同じターボで生い立ちが違う。

2020年50周年記念車 

 エンジン以上に違いを感じるのがGR6型6速デュアルクラッチトランスミッションだ。



GR6型6速DCT

1速:4.056

2速:2.301

3速:1.595

4速:1.248

5速:1.001

6速:0.796

後退:3.383

最終減速比:3.700



 という変速比はデビュー当時から変わらず。08年モデルでは変速のたびにシフトレバーの下のGR6本体内部で、「十数人の小人がカチャカチャシフトフォークを動かして変速してくれてる」感じだったのが、年を追うごとに小人の人数が減り、20年モデルではカーテンの向うに小人の影が時々うっすら見えるくらいになった。



 100km/h巡航時のエンジン回転数は2100rpmほど。昨今では高めなのは、6速だからだ。

2008年モデル

2020年 50周年記念車

 乗り心地にも驚いた。08モデルでは、とにかく脚が固められていて、強固なボディのおかげで不快ではないものの、乗り心地はけっしていいものではなかった。当時は、「スーパースポーツとはこういうもの」と思っていた。移動の際は、ダンパーのモードを「COMF」(コンフォート)にして乗っていたが、20年モデルはNORMALでも乗り心地が悪くない。これまた「洗練」だ。



 昨今流行りの先進ドライバー支援システムを07年デビューの車に求めるのはナンセンスだ。しかし、GT-Rに乗っていると運転が楽しいので、ACC(オートクルーズ)など使いたいと思わないし、ステアリングのフィールもいいので、自動ステアしてほしいとも思わない。いまや圧倒的に少数派となった油圧パワステのしっとした感覚は、乗ってみないと味わえない美点のひとつだ。

じつは一番驚いたのはインテリア

2020年モデル 50周年記念車

 20年モデルのGT-Rに乗って(乗り込んで)一番驚いたのはインテリアの質感だ。インパネの質感もシートも20年モデルにふさわしい「いいモノ感」があった。基本の造形は新しくないが、デビューから13年も経つモデルのインテリアをここまでリファインした日産デザイン陣、内装部品メーカー、シートメーカーの手腕にちょっと感動した。



 スーパースポーツ日産GT-Rの最新モデルに乗る、と行ってもサーキットで全開走行したわけではないし、箱根のワインディングに持ち込んでスポーツ走行したわけでもない。(もしGT-Rを買ったらドライブしている時間の90%以上はこうであろうと思われる)通勤や買い物、郊外へのちょっとしたドライブをしてみた。



 それでもGT-Rはどんなときも適度な手応えがあって、クルマを意のままに動かす歓びがあった。ドライビングスキルがあればあっただけ引き出せるものが違うのだろうが、腕がなくても、それこそ初心者でもGT-Rは走る歓び、自分の操作に正確に反応してくれる快感が味わえる。

08年当時も出色の出来だったシート。もちろん20年モデルも素晴らしい。

荷物置き場にしかならいかと思いきや、身長164cm♀ドライバーなら前後に座れる。175cm♂ドライバーだと後席はかなり工夫しないと乗れない。

燃費は意外にもよかった

悪天候の首都高も走ってみた。

 しかし、08年モデルでも感じたが、GT-Rはやっぱり小さいクルマではない。全長×全幅×全高:4710mm×1895mm×1370mmは気を遣うし、50周年記念車のエアロパーツはちょっとした段差などでも慎重にならざるを得ない。最小回転半径も5.7mだから、小回りもきかない。それだけ気をつけておけば、本当に普段使いもできる。



 現実的に、もしGT-Rを手に入れられたとしても(もっとも安いピュアエディションで1063万1520円!)1台持ちになる。



 ちょっと気になるのは燃費、燃料代だ(GT-Rに乗るのに燃費なんか気にするな、という声もありましょうが)。

 今回454km走って、9.2km/ℓだった(平均速度41.8km/h)。本格的なスポーツ走行なし、渋滞ありでの数字だ。意外に悪くない。



 ちなみに50周年記念車の燃費は

燃費:WLTCモード 7.8km/ℓ

 市街地モード:5.2km/ℓ

 郊外モード:8.4km/ℓ

 高速道路モード:9.4km/ℓ



 だから、WLTCモード燃費より24%ほど良好な結果だった。



 08年モデルの燃費が10・15モードで8.2km/ℓだったから、この13年間でGT-Rは、より速く、より快適に、より燃費がよくなったのである。これを進化と言わずしてなんだろう。

2020年モデル。おそらくR35 GT-Rの「最終完成形」だ。

初期型の存在感は今見ても素敵だ。

 R35 GT-Rに2021年モデルがあるのかはわからないが、依然として(お金があったら)欲しいクルマのリストの上位にあるモデルである。いいなぁ、GT-R。

日産GT-R 50th Anniversary



全長×全幅×全高:4710mm×1895mm×1370mm

ホイールベース:2780mm

車重:1770kg

サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式

駆動方式:AWD

エンジン

形式:3.8ℓV型6気筒DOHCターボ

型式:VR38DETT型

排気量:3799cc

ボア×ストローク:95.5×88.4mm

圧縮比:9.0

最高出力:570ps(429kW)/6800pm

最大トルク:637Nm/3300-5800rpm

燃料:プレミアム

燃料タンク:74ℓ

燃費:WLTCモード 7.8km/ℓ

 市街地モード:5.2km/ℓ

 郊外モード:8.4km/ℓ

 高速道路モード:9.4km/ℓ

トランスミッション:6速DCT

車両本体価格:1351万6200円



試乗車はオプション込みで1380万2088円

情報提供元:MotorFan
記事名:「 日産GT-R 50周年記念モデル:洗練されたGT-Rを450km日常使いしてみたら、燃費は意外と悪くなかった