この秋には発売されると言われている夢のエンジン「SKYACTIV-X」。その燃焼室にはこれまでの量産車には装備されていないセンサーが組み込まれる。そのセンサーを人とくるまのテクノロジー展で見つけた。



TEXT&PHOTO@高根 英幸(Hideyuki TAKANE)

 SKYACTIV-Xは、従来のストイキ直噴のプラグ点火のほかに、プラグ点火で火炎球を作り、その圧力を利用して多発的に圧縮着火させるSPCCIで燃焼させるが、そのSPCCIでもストイキとスーパーリーンバーンを使い分ける。つまり3種類の燃焼モードを切り替えて運転させるのが特徴だ。そんな燃焼モードの切り替えを見極めるために、そして狙った通りの燃焼が行なわれているかを監視するために、「燃焼圧センサー」が組み込まれているのである。



 そんな燃焼圧センサーを、人とくるまのテクノロジー展で見つけた。出展していたのはシチズンファインデバイスという企業。その名から想像する通り、時計メーカーのシチズンの子会社だ。燃焼圧センサーとはどんなモノなのか、どうしてシチズンがこのセンサーを手がけるようになったのか、取材してみるとなるほどと納得させられる理由があった。



 燃焼圧センサーは、エンジンの燃焼室に取り付けて燃焼時の圧力変動を検知する。圧縮着火状態は燃焼速度が速く、圧力上昇の加速度が火花点火とはまったく異なる。同様に燃焼状態を検知するセンサーにノックセンサーがあるが、あちらはノッキング特有の周波数を検知するモノで、仕組みはもっと単純だ。



 燃焼圧センサーは受けた圧力を電流に変える圧電素子と、その電流を増幅するアンプによって構成されている。アンプはセンサーと一体型のタイプと、ハーネスでつながれる別体型がある。



「クォーツ式の時計に使われる人工水晶も圧電素子、そして時計同様小さな部品を作ることになるので、これまで培った技術が応用できそうなので挑戦することにしたんです」と説明員。



 しかし水晶ではエンジンの熱と燃焼圧には耐えるのは難しい。燃焼圧センサーに使われるのはランガサイト系の結晶でランガテイトと呼ばれる化合物。水晶より高熱に耐え、ランガサイト結晶よりも幅広い温度域で反応が安定している。



 人工的に結晶を作り上げるのは水晶のノウハウが使えると言っても、当然のことながら開発は一筋縄ではいかなかった。しかし今では、高い精度と耐久性、豊富なバリエーションを用意できるまでになったそうだ。



 さらにエンジンをアースとして使っているのがセンサーや電子部品の常識だが、実はエンジンはノイズの宝庫で、これが厄介な存在。圧電素子が発生する微小な電流を増幅して伝える燃焼圧センサーにとっては、ノイズは大敵で、いかに影響を受けないか対策するのも大変だったらしい。



 そのため現在は独立した回路をもつ絶縁型のセンサーも用意している。エンジンを開発する側にとっては、ハーネスが増えるものの、より精度が高い燃焼圧の圧力波を検知できるのは大きなメリットだろう。



 これまでの実績としては、自動車メーカーや研究機関が試験用エンジンの燃焼状態を確認するために採用したほか、船舶用のエンジンに採用された例があるだけで、まだ生産数としてはそれほど多くはないようだ。



 SKYACTIV-Xが採用する燃焼圧センサーが、このシチズンファインデバイス製となるかは不明だが今後、通常のガソリンエンジンやディーゼルエンジンでも、この燃焼圧センサーが搭載される可能性が高まる。それほどこれからのエンジンは、熱効率をギリギリまで高めるため制御を突き詰める、チャレンジングな開発が繰り広げられるからだ。

燃焼圧センサーの仕組み。表面に耐熱性の高いチップを被せ、表面の圧力を圧電素子へと伝える。圧電素子が発する微弱な電流を増幅してECUへと送る。

ランガテイト結晶と、そこから切り出された圧電結晶。圧電素子は圧力センサーのほか、振動センサーにも使われており、高い耐熱性を誇るランガサイト、ランガテイトは石英やセラミックスでは厳しい高温下での使用に適していると言われる。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 SKYACTIV-Xにも組み込まれている燃焼圧センサーは、これからの内燃エンジンに必須のセンサーとなるのか!?