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ボルボXC40をBMW X2やジャガーEペイスと徹底比較! 〈欧州プレミアム・コンパクトSUV〉


ミドルクラスSUVの勢いが止まらない。どの車種も販売ボリュームが大きく、いまやブランドの顔とも言えるカテゴリーにグローバル規模で成長している。それだけに、各社はいずれも開発の力を強く注いでいる状況だ。今回はXC40のライバルと目される最新の2台とともに、比較検討を進めてみた。ステージはラフロードを含む中距離移動。個性はどのように発揮されるだろうか。




TEXT●森口将之 (Moriguchi Masayuki)


PHOTO●高橋 学 (Takahashi Manabu)

上質な走行感覚を堪能する

 ボルボXC40のボディサイズは全長4425㎜、全幅1875㎜、全高16㎜ともかく長さについては、国土も道路も狭い日本ではありがたい。しかもSUVならではの目線の高さは、実寸以上に車体を小さく感じさせてくれる。XC40を最も待ち望んでいたマーケットはこの日本かもしれない。




 でもこのクラス、つまりCセグメントのインポートプレミアムSUVは、他にも魅力的な選択肢が数多く存在しているのも事実。今年に限ってもBMWのX2、D7クロスバック、ジャガーEペイスというニューカマーが上陸しているし、それ以外にもアウディQ3、メルセデス・ベンツGLA、レンジローバー・イヴォークなどが存在する。日本車まで枠を広げれば、まもなくレクサスUXが発売予定だ。




 ボルボで初めて欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたXC40は、群雄割拠と言えるこのカテゴリーで、どんなポジションにいるのか。日本上陸の時期も近かったX2とEペイスを連れ出して検証した。せっかくコンパクトなボディを持つので、千葉の里山に向かい、狭い山道にまで踏み込んで実力をチェックした。




 取材車のグレードはXC40がT5AWD・Rデザイン、X2がXドライブ20iMスポーX、EペイスはRダイナミックHSE・P250。名前で想像できるようにどれもスポーティバージョンであり、2.0ℓ直列4気筒ターボのガソリンエンジンを横置きし、4輪を駆動するところも共通する。




 ちなみに他の2台のボディサイズは、X2が4375×1825×1535㎜、Eペイスが4410×1900×1650㎜となる。BMWはこのクラスに、より実用的なSUVのX1を持っているだけあって、特に背の低さが目立つ。Eペイスは全長と全高はXC40と同等だが、幅は少し広くなる。



ドイツ車らしいソリッドさと快適さ

BMWのXシリーズに新たに加わったモデル。オフロード性能と都会的な雰囲気という、一見相反する要素を巧みに同居させたキャラクターが魅力。低くスリークに備えたボディスタイルを備え、BMWの歴代クーペを彷彿とさせる演出も盛り込む。日本仕様はFWDの「18i」とAWDの「20i」をラインナップ、M Sport X仕様も揃える。

BMW X2 xDrive20i Mスポーツ X


▪2.0ℓターボ+8速AT


▪192㎰/280Nm


▪515万円

角・底・流で表される3台

 3台のデザインを漢字ひと文字で表せば、角・低・流となるだろうか。言うまでもなくXC40が角、X2が低、Eペイスが流だ。多くの人が最も流麗だと感じるのはEペイスだろう。スポーツクーペのFタイプの雰囲気を上手にSUVに落とし込んでいて、フェンダーやルーフの躍動的なラインが目立つ。




 それ以外をシンプルにまとめている点も好感が持てる。試乗車は精悍ブラックだったが、色によってはベイビージャガーと呼びたくなるキュートな印象になる。




 BMWで偶数数字を使った車名はクーペやカブリオレになる。確かにX2も、X1と比べるとルーフはかなり低く、しかも弧を描いている。しかしリヤゲートの傾きはEペイスほどではない。グレーのフェンダーアーチやサイドスカート、Cピラーにも装着したエンブレムなど、個性を強調するためのディテールが多いことも特徴で、Eペイスとは対照的だ。




 2台を見た後でXC40に視線を移すと、スクエアなシルエットが新鮮に映る。


240や850の現役時代を知る人間にとっては、ボルボらしさが戻ってきたと歓迎するだろうし、多くのSUVがセダンやクーペのように有機的なフォルムになっているからこそ、逆に新鮮に見える。




 ディテールへのこだわりも目を引く。バンパー、フェンダー、サイドシルなど多くのラインを台形モチーフで合わせているので統一感があるし、リヤゲートはライセンスプレートをバンパーに下ろしてパネルを強調し、クラシカルな雰囲気をもたらすという遊び心もある。




 この形には実利面のメリットもある。前後ドアの開口部が大きいことだ。特にリヤドアは上半分が大きく開くので、車高の低いX2や6ライトのサイドウインドウを持つEペイスより明確に乗り降りしやすかった。このあたりもまたボルボらしい。


 


 インテリアは3台とも、エクステリアとのつながりを感じさせた。X2は頭上を含めて外観から想像するよりも広いが、やはり窓の狭さが気になる。昨今のSUVブームが象徴しているように、近年のクルマのトレンドはワイド&ローから脱却しつつあるのだがアウトバーンの国は依然この方向性に強いこだわりがあるようだ。




 もうひとつX2で気になったのはスイッチが多く、整理されていないこと。多くの機能をひとつのダイヤルで操るロジック、iドライブをいち早く採用したのに、そのメリットを活かしきれていないようだ。

見切りの良いスクエアなシルエット

新世代のプラットフォームを用いてクルマとして完全に新しく企画されたXC40。60/90シリーズにも共通するデザインテイスト/上質感と、スポーティ/カジュアルさを融合させた、ボルボからの新しい提案だ。日本仕様は「T4」「T5」の2種のエンジン+8速AT/AWDをラインナップ、前者はFWDも用意する。将来的にはPHEV/EVも予定している。

ボルボ XC40


T5 AWD Rデザイン


▪2.0ℓターボ+8速AT


▪252㎰/350Nm


▪539万円

三者とも2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンを搭載

 EペイスのインテリアはX2より色や素材は少なめながら、要所にしたシルバーがプレミアム感を効果的に打ち出している。センターパネルをドライバー側にチルトするのではなく、Fタイプを思わせるグリップ付きセパレーターで表現したところも目を引く。外観と同様にスポーティだ。




 この2台からXC40に乗り換えると、なぜかホッとする。水平基調の落ち着いたラインが主体で、スイッチも群を抜いて少ない。家に戻ってきたような心地よさが得られる。スポーティさではX2やEペイスのほうが上かもしれないけれど、最もモダンでクールに感じたのはこのXC40だった。




 センターのディスプレイが縦長大型であることや、センターコンソール奥のトレーでスマートフォンの非接触充電が可能であるところなど、XC40は時代の流れをいち早く取り込んでもいる。音声操作が可能なところは3台に共通するけれど、最も的確な反応を示してくれたのもまたXC40だった。




 シートの座り心地がほっこりしていて、包み込まれるような心地よさが味わえるところも、XC40のアットホーム感を盛り上げる要素のひとつ。それに比べるとEペイスの張りの強いレザーは英国らしいけれど、常に姿勢を正していないといけないような気分になる。硬めのシートに低く座るX2は、狭い窓のおかげあって、安らぎよりやる気をもたらす空間に映った。




 プレミアムブランドともなればオーディオもそれなりのレベルであってほしいところ。この点ではX2は「無印」だったのに対し、Eペイスはメリディアン、XC40はハーマンカードンを起用していた。名前で音が決まるわけではないけれど、音は音屋に任せたほうがいい。いずれも小柄ながらロングランを可能とするSUVなので、こういう面にはこだわって欲しいものだ。




 リヤシートはX2のみならずEペイスも、ルーフラインとの兼ね合いなのか低めに座る。ホイールベースはXC40が2700㎜、X2が2670㎜、Eペイスが2680㎜あるので、身長170㎝の自分にはいずれも十分な空間だが、XC40だけが高めに座るので、開放感の違いは明確だった。




 ラゲッジスペースは、容積の数字だけで見るとXC40は3台で最も小さいのだが、キャビンがスクエアなので開口部は広く、アクセスしやすい。床下収納スペースはX2も備えているけれど、フロアボードをふたつ折りにするとコンビニフックが出現するなど、ワゴンづくりの豊富な経験が活きている。


 


 3台がいずれも2.0ℓ直列4気筒ターボエンジンを横置きしていることは前に書いた。ちなみに最高出力と最大トルクは、XC40が252㎰/35.7㎏m、X2は192㎰/28.6㎏m、Eペイスは249㎰/37.2㎏mとなっている。トランスミッションはXC40とX2が8速、Eペイスは9速の、いずれもトルコン式ATだ。




 このほかXC40には同じ2.0ℓ4気筒ターボながら最高出力および最大トルクを控えめにした「T4」系があり、X2には1.5ℓ直列3気筒ターボの「18i」、Eペイスには逆にハイパワー・ビッグトルクの「P300」と、2.0ℓ4気筒ディーゼルターボの「D180」がある。

軽くて繊細な操舵感はまさにジャガー

Fペイスの小型版───とも一概に言いづらいEペイスは、ワイド&ショートのクーペライクなボディスタイルが目を引く一台。スポーツカーのようなパフォーマンスとSUVのユーティリティを兼ね備える。「P250」「P300」「D180」の3種のエンジンを、ジャガー初搭載となる9速ATと組み合わせる。駆動方式は全車AWD。

ジャガー Eペイス


Rダイナミック HSE


▪2.0ℓターボ+9速AT


▪249㎰/365Nm


▪697万円

乗り心地が最も良いのはXC40

 今回の試乗車はすべてAWDで、Eペイスの日本仕様はもともと全車AWDだけなのに対し、X2は「18i」がFWD、「20i」がAWDと分けている。XC40は「T4」系であればFWDも選択可能だ。車両重量はXC40が1690㎏、X2が1620㎏、Eペイスが1890㎏と、Eペイスがやや重い。




 このスペックから予想した通り、加速はXC40が最も速く、X2は動き出しの軽さ、Eペイスは速度が乗ってからの力強さが印象的だった。パワーやトルクに余裕があるためだろう、最も静かに感じたのもXC40だった。




 音については、XC40には演出めいた要素はなく、今の4気筒として素直な響き。ボルボのブランドイメージには合っている。X2は緻密に回るが、同じBMWの直列6気筒のような特別感はない。Eペイスは加速時には英国車らしく低く太い排気音を響かせ、もっともスポーティに感じた。




 試乗車のタイヤはすべてピレリPゼロだった。かつてはスーパーカー御用達というイメージが強かったPゼロとコンパクトSUVの組み合わせに驚かされたが、3台ともスポーティバージョンなのでこのような選択になったのだろう。ただしサイズは違っており、XC40が235/50R19、X2はオプションの225/40R20。Eペイスが245/45R20だった。




 乗り心地が最も良いと感じたのはXC40だった。唯一の19インチタイヤを履き、シートはふっかりした座り心地であるうえに、CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)と名付けられた新開発プラットフォームが強靭で、足まわりがしっとり動いているのだろう。ボルボのブランドイメージに合致した、安らげる乗り心地である。




 X2は低速では段差や継ぎ目をそれなりに伝える。小柄で軽い車体に対して40扁平の20インチはオーバースペックかもしれない。快適性ではスタンダードの19インチが上回るだろう。ただしドイツ車らしく速度を上げると揺れが少なく快適になっていく。Eペイスはかつてのジャガーのような猫足はあまり感じないものの、重さが良い方向に作用して、X2より少ししなやかだった。




 X2のステアリングはBMWらしく重めで、カチッとした感触を返してくる。低めの車高と硬めの足まわりのためもあり、身のこなしはソリッド。アクセルペダルを踏み込むと後輪へのトルク配分が増え、旋回を強めながらコーナーを脱出していく。




 Eペイスもまた立ち上がりでは似たようなマナーを示す。横置きエンジンのAWDながら後輪駆動っぽい手応えだ。大きく違うのはステアリングで、軽くて繊細なタッチはにジャガー。でも慣れれば自然に扱えるし、直進安定性に問題はない。




 スポーティさでは定評のあるふたつのブランドと比べると、XC40はこの面が及ばないと思う人がいるかもしれない。しかし実際はそうではない。ここでも新世代プラットフォームであるCMAが良い仕事をしていて、穏やかさを感じさせつつ身のこなしに遅れはない、ボルボのコンパクトSUVとして絶妙な走りを演じてくれる。4輪に均等に力を伝えて曲がっていく様子からは安心感が伝わってくる。

 もうひとつのXC40の利点は狭い山道で理解できた。3台で最も車体を持つのに、いちばん扱いやすく感じたのだ。スクエアな車体が見切りしやすいのに加え、低速では上から映し出す方式の360度カメラ映像がありがたい。こういうシーンではX2の低さ、Eペイスの優美な造形はデメリットになってしまう。




 XC40を含め、このクラスのSUVは街乗りメインで開発されているのだろう。でもAWDで最低地上高にも余裕があるとなれば、キャンプなどに連れ出したくなるはず。そんなシーンでもXC40は強みを発揮することがわかった。




 撮影を終え、帰りは3台を乗り換えながら高速道路で東京を目指す。運転支援システムは3台ともに高水準で、アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱警告システム、衝突被害軽減ブレーキなどに守られながら、リラックスしてクルージングできる。




 裏返して言えば、こういう場面では加速やコーナリングを楽しむことはない。つまり運転支援システムの進歩によって、スポーティに走るシーンは相対的に少なくなっている。しかしデザインと快適性に関しては、クルージングの瞬間も重要であり続けている。




 こうした部分に目を向けると、XC40の存在感がさらに光ってくる。自動運転社会の実現はまだ先だと考えているけれど、今のボルボのクルマ造りは未来を見据えているのかもしれないと思うようになった。

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