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「エンジニアリングなしに前衛的デザインは成り立たない」DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(後編)


DSオートモビルは12月、東京の南青山に旗艦店をオープンした。これに合わせDSのデザイン担当SVP(シニア・バイスプレジデント)、ティエリー・メトローズ氏が来日。ディレクターとしてDS各車のデザインを手がけるメトローズ氏に、DSが表現しようとしているものや、これから目指す方向などを訊いた。今回はその後編だ。




REPORT●古庄速人(Furusho Hayato)


PHOTO●宮門秀行(Miyakado Hideyuki)


「かつて、ラグジュアリーと言えばフランス車だった」DSオートモビルズ・デザイン部長インタビュー(前編)はこちら!

フランスのブランドとしての表現

—かつてフランスには航空機メーカーがたくさんあり、航空業界の先進テクノロジーを応用して自動車産業に進出する例も多かった。とくにヴォワザンなどは前衛的かつ先進的なメーカーでしたよね。こうした背景を考えると現在のDSは、フランスの自動車産業のヘリテイジをも象徴している、と言うこともできますか?




メトローズ:ヴォワザン! 私も大好きなブランドです。かつてシトロエンDSを設計したアンドレ・ルフェーブルは、その以前にヴォワザンでエンジニアとして働いていました。ですから、その指摘は実に的確だと思います。




 あまり知られていないようですが、フランスはテクノロジー大国なんです。どうしてもファッションとかそういう方面ばかりが注目されがちですが、コンコルドやTGVを思い出してください。新しい技術に躊躇することなく、むしろ積極的に取り組む国だということがわかっていただけるでしょう。




—なるほど。現在のDSが先進テクノロジーにこだわる理由が、わかった気がします。そうした背景があるから、ドイツやイギリスのブランドとは異なったプレミアム表現になるのは必然、ということでしょうか。




メトローズ:正直に言うと、プレミアムという言葉はあまり使いたくありません。DSはDSなんだ、ということを言いたい。現在はなんでもかんでもプレミアムになる時代で、プレミアムを謳うことがプレミアムじゃなくなってしまっているように感じます。




 それだったらプレミアムという言葉は使わず「DSならではの表現をしている」と言ったほうがいいと思っているんですよ。DSならではのラグジュアリーやリファインメントというものを、いかにヘリテイジという言葉に込めて伝えていくか、というのが使命と考えています。

DS3 CROSSBACK

—DSというブランドの価値はほかと比較するものではない、ということですね。




メトローズ:はい。それを目指しています。他のブランドの動きを見て対応を考えるという、相対的なことはしたくありません。私たちは私たちなのですから。だからこうした意味もあって、フランスの老舗ブランドとのコラボレーションを推進してるんです。




 たとえば10月のパリモーターショーで公開したコンセプトカー、X E-TENSE。これのパッセンジャー席の後方には、ルマリエというアトリエが作った羽細工をあしらっています。ガチョウの羽を2400枚、使っているんですよ。自動車のインテリアでこんなことをしてみたのは、私たちが初めてではないでしょうか。


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デザイナーとエンジニアの共創活動がアヴァンギャルドを生み出す

—テクノロジー面でも、フランス車には独自のメカニズムが採用されるケースが多いですよね。独自性にこだわるというのは、フランス全体の文化なのでしょうか?




メトローズ:「自分たちだけのものを作り上げることに熱心になる」という気質は、フランス全体にあるような気がしますね。DSのデザイン部門でもサプライヤーからさまざまな提案を受けますが、それをそのまま受け入れることはありません。「新しい提案を、自分たちはどのように使うか?」を考えることに労力をつぎ込みます。他と同じことはしたくありません。自分たちだけの表現をすることに喜びを感じているんです。




 またDSに限らずプジョーやシトロエンのデザインチームは、単独ではデザインを進めません。常にエンジニアリング部門をいっしょになってプロジェクトを進めています。デザイナーとエンジニアが同じフロアに集まって仕事をしているんです。




 デジタルツールや3Dプリンタを使っているグループがある一方で、そのすぐ横でフランス屈指の革細工職人たちが、革の貼り方を検討したりしている。デジタルとアナログが共存しているんです。こうしてマルチラテラル(多面的)にコミュニケーションしながらデザイン開発プロジェクトを進めるのがPSAの特徴になっています。




—デザイナーとエンジニアの距離が近いことによって、予想外の新しいアイデアが生まれることはありますか?




メトローズ:デザイナーが思いもしなかったアイデアがエンジニアからもたらされたり、その逆もあります。キャッチボールを続けることで、いいものが出来上がるという利点はありますね。組織が小規模だからできることなのかもしれませんが、こんなことができるのは世界的に見てもほかにないのではないでしょうか。




 アバンギャルドを表現するというのは、テクノロジーを抜きにしては不可能。エンジニアなしには実現できません。たとえばウェルカムヘッドライトを回転させようというアイデアはデザイナーが思いついたことですが、その際にLEDを使おうとは言っていませんでした。LEDの採用はエンジニア側からの提案だったんです。つまりデザイナーとエンジニアがお互いに刺激しあったことで、これまでなかった新しい演出が生まれたというわけです。

フォーミュラEのチームと共同デカイハチしたコンセプトカー、X E-TENSEのミニチュアカー


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これからもデザインの方向性は不変

—現在話題になっている自動運転の技術などでも、そうした独自性は表現されるでしょうか?




メトローズ:これはまったく個人的な意見なのですが、最近のモーターショーなどを見ていて危惧していることがあります。それは電動化、自動化が大きなテーマになって、どれもなんとなく無機質な電化製品のようになってきていると感じるということです。どのクルマも人間味や温かみがなくなってきている。このことにデザイナーとして危機感を覚えるし、なんだか残念な気持ちなんですよ。




—そんな中、電動スポーツのコンセプトとしてX E-TENSEを公開しました。




メトローズ:これはフォーミュラEのチームと共同で開発したもので、実際に走り、フォーミュラEマシンと同等のパフォーマンスを発揮することができるんです。つまり先進テクノロジーが備わっている。そしてフランスのサヴォアフェールの表現として羽毛をあしらい、これまで見たことのないカーデザインを作り出しました。このコンセプトカーには、DSというブランドが凝縮されていると言っていいでしょう。




 ボディが左右非対称ですから製作は大変で、2台作るぐらいの手間がかかっています。クレイモデルでボディの片側を仕上げて計測し、反対側はそのデータを反転させればいいというわけにはいきませんからね。でも無味乾燥なコンセプトカーが増えてきている中で、これは良くも悪くも「味わい」のあるものにできたと思っています。




—たしかに、とびきりラディカルなデザインです。つまりDSはこれからもアヴァンギャルドで、同時にフランスの伝統的かつ個性的なラグジュアリー表現も盛り込み続ける、ということですね。

Thierry Metroz(ティエリー・メトローズ):1963年9月21日生まれ。パリ応用美術・美術学国立高等学院卒業。2010年にグループPSAに入社し、当時はシトロエンのデザイナー部長として就任。12年よりDS Automobilesのデザイン部長を務めている。


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