メジャー通算18勝の大記録を持つジャック・ニクラスは、優れたコース設計家でもある。そのニクラスと名匠ミュアヘッドのコラボによる数少ない名コースの一つが栃木県にあるニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパンである。

ジャック・ニクラス設計の初期の傑作、栃木県ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン

16番パー4のグリーン奥からの眺め。ティからグリーンへ左にキャスケード風の流れを見て、緩やかな上りが続き、最後に流れをクロスしてグリーンへ至る。

ここで紹介する「ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン」は、コース設計者ジャック・ニクラスの初期の傑作である。



ゴルファーなら承知の通り、ニクラスは、全米アマ2回、全英オープン3回、全米オープン4回、PGA(全米プロ)5回、マスターズ6回と、メジャータイトルをアマで2回、プロで18回手に入れている。これはタイガー・ウッズでも到達不能な大記録である。ニクラスはコース設計にも、早い時期から興味を持ち、現在までに多くの名コースを世界各地に残している。



コース設計の始まりは1960(昭和35 )年代の末期、30歳頃からであった。初期の代表作は、ピート・ダイと組んで設計したサウスカロライナ州の「ハーバー・タウンGL」で、69年の開場。翌年から、ここで米国最古のゴルフ倶楽部「チャールストンGC」を偲んだPGAトーナメント「ヘリテージ・クラシック」が始まり、ニクラスの仇敵アーノルド・パーマーが初代優勝者となり一躍有名になった。



その後、ニクラスは設計パートナーを、独特の作風で名を成したデズモンド・ミュアヘッドに替えたが、このコンビは共に個性が強く妥協を許さなかった。短命で決裂したため、共同作品は5つほどしかない。この「ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン」は、ニクラスのホームコース「ミュアフィールド・ビレッジGC」と並んで、二人の代表的なそれである。その後ニクラスは設計担当にバブ・カップ、建設担当にジェイ・モーリッシュを配して、独立事務所をスタートさせる。



ミュアヘッドはケンブリッジとカナダの大学でランドスケープを学び、大型住宅開発の専門家とし て出発したが、その目玉となるゴルフコースに関心を持って転職、ユニークな形状でゴルフ界の注目を浴びた。この時期、彼はコースの勉強のため、米英の名コースを多数訪ねたが、“最もつまらないのがセント・アンドリュースのオールドコースだった”と記している。ここ「ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン」の奇抜なデザインは、このミュアヘッドの強い影響だろう。



コースは右に池のやや右ドッグレッグのパー4で始まる。グリーンは池に突き出た“ペニンシュラ” 形状、続く2番パー4は同じ池を右手に引き返す。グリーンは砲台型の“プラトウ”タイプ、しかもガード・バンカーが厳しい。最初 のパー3、5番ホールは“ハッ”と驚く段差の大きい2段グリーン。そして、次のパー3、8番はティからグリーンまでが池、「オーガスタ・ナショナルGC」の16番ホールを連想させる。



インに入って10 番パー5、11番短めのパー4、そして12番パー5は500ヤード超えの長いホール。この辺はフェアウェイの起伏が厳しくて難しい。続いて、やや上りで距離のあるパー4を過ぎると、ユニークなデザインのパー3が現れ、グリーン奥の壁が城壁の石垣を思わせる。次の15番パー4は距離があるが、打ち下ろしで息が抜ける。続く16番上りのパー4は、このコースの“シグナチャー・ ホール”で、左にカスケード状のウォーター・ハザードが現れる。このホールは、コース開場後、日本の方々で模倣された。17 番パー3は瓢箪形のグリーンへ豪快に打ち下ろす。最終パー4ホールもバンカーの配置が美しい。



ニクラスの戦略性にミュアヘッドの造形が組み合わさった名コースと言えよう。



文/大塚和徳



●栃木県ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン

・コース所在地:栃木県大田原市福原2002

・URL:http://www.nsaj-gc.com/



GOLF TODAY本誌 No.552 88ページより


日本のゴルフ聖地100

名門ゴルフ場から隠れた宝石まで、設計家の思想と誕生秘話を絡めながら日本のベストコース100を紹介する書籍「日本のゴルフ聖地100」が日本経済新聞出版社より11月26日より発売中。





日本のゴルフ聖地100

大塚和徳 著

定価:本体2,800円+税

発売日:2018年11月26日

ISBN:978-4-532-17651-8

上製/四六判/538ページ



著者・監修者プロフィール

大塚 和徳(おおつか かずのり)

ゴルフ歴史家

1934年、大分県生まれ。東京大学経済学部卒業後、第一銀行を経て帝人に入社。MBA取得後、英国ターンベリーホテルの経営、ジ・オックスフォードシャーGCの建設に携わる。海外で回ったコースは350を超え、現在は米ゴルフマガジン誌「世界ベスト100コース」の選定パネリスト。

日本の聖地100選|栃木県ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン|ジャック・ニクラス設計の初期の傑作

https://golfsapuri.com/

ゴルフサプリは「月刊GOLF TODAY」編集部監修のもとに、新しい切り口でゴルフクラブ・ギアやゴルフ場の徹底解説からスコアに伸び悩むゴルファーのための科学的で楽しいレッスン方法まで幅広い層のゴルフファンをサポートする情報サイトです。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 日本の聖地100選|栃木県ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン|ジャック・ニクラス設計の初期の傑作