ヤマハ YZシリーズの2019年モデルの発表会が6月下旬に行われた。今回リリースされたのはモトクロッサーとエンデューロモデルとの合計で10モデル。ここではエンジンやフレームを一新したものや、スマートフォンで燃調を調整できるものなど、注目モデルを中心に解説する。

REPORT●近田茂(CHIKATA Shigeru) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

 バイク業界、夏の到来と共に恒例となっているのが最新モトクロスマシンの発表だ。国内外の各メーカーとも次年度2019年モデルが公表される。今回ヤマハは発表会と試乗会を別開催としてたっぷり時間を割き、新製品投入にかけてきた開発陣の想いの丈や製品への理解を深めることにじっくりと力を注ぐ姿勢を示した。



 同社のコンペモデルはモトクロッサーが6機種。エンデューロマシンが4機種ある。いずれも2ストロークと4ストロークエンジンがあり、モトクロッサーの2ストロークは65、85、125、250。4ストロークが250、450。エンデューロマシンは2ストロークが125、250、4ストロークが250、450が揃えられている。ここでは今回大きく刷新されて勝利を呼ぶマシンとしてより戦闘力が高められた4機種をクローズアップしよう。

・YZ65

 2018年からラインアップに加わったジュニア用入門マシン。YZ450Fを頂点とする同シリーズの末弟である。前14、後12インチホイールを履く小粋なモデルながら本格的なポテンシャルを誇る。新設計されたセミダブルクレードルフレームにはアルミ製リヤフレームをボルトオン。

 ポイントはリンク機構を廃したモノクロス・リヤサスペンションの採用だ。小さな車体でも十分な地上高を稼ぎ、リンク機構が轍等のギャップにヒットしない事を狙っての改善である。KYB製の新開発ショックユニットが採用されボトミングもしにくい設計が成されている。フロントフォークもKYB製で、合成に優れるφ36mmの倒立式を採用。2スト64ccのエンジンは精度を高めたYPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)を装備。クランクウエブに樹脂製ウエイトを織り込みクランク室の総容量を抑え、1次圧縮を高めている。





新設計されたYZ65のクランク。ウェブに挟まれている白い樹脂はバランスをとる一方で、気密室であるクランクケース内容積を埋めることで一次圧縮を高める効果を狙っている。

リンクを廃したシンプルなモノクロス式サスペンションに採用。新開発のリザーバータンク付本格派ショックユニットは、伸び側30/圧側15段の減衰力調節が可能。ちなみにフロントフォークはそれぞれ20段アジャストできる。

・YZ85/LW

 ライダーの体格が成長すると共に次のステップとして用意されているYZ85も新型を投入。同シリーズは前17、後14インチホイールを履くYZ85と、前19、後16インチサイズのYZ85LWが選択でき、後者は大人でも十分に楽しめるサイズである。

 YPVSを採用した新設計の2スト84ccエンジンを搭載。エンジン回転数に応じて排気ポートの上部を開閉する事で排気タイミングを可変するシステムだ。その基本に変わりは無いが、部品の加工精度や制御技術が最新鋭のレベルとなったことでより扱いやすいパワーフィーリングを達成。特に中速から高速でトルク谷が無く、つながりが良くなったという。排気チャンバーも新設計され、ハイパフォーマンスの発揮に大きく貢献している。

 ワンピース構造のアウターチューブを採用した倒立式フロントフォークはφ36mm。ホイールトラベルは275mmを稼ぐ。ステムシャフトの軽量化による軽快な操縦性の他、堅牢な造りも追求された。ブレーキはウェーブタイプのディスクローター(前φ220mm、後φ190mm)を採用。ブレーキホースも高剛性タイプを採用。そしてトップブリッジにはアルミ鋳造を採用。アルミ製テーパー型のハンドルバーは前後4段階、最大27mmの範囲でポジション調節を可能としている点も見逃せない。

YZ85の新シリンダーボディ。右下に見えるのが排気チャンバーと取り付けられる排気ポート。上に見えるメカニズムがYPVSだ。

判りやすいように左側の排気ポートだけを作動させてみたところ。高回転時に排気ポート上面にシャッター(YPVS)が開くことで、排気タイミングを早める。エンジン回転に応じて適切な排気タイミングに可変できる。

・YZ250F

 今回は大胆なフルモデルチェンジを実施。先に進化しているYZ450Fと共通プラットフォームとなるバイラテラルビーム・フレームを採用。旧モデルに対して縦横ねじれ剛性を15%程向上させている。エンジンマウントも素材や肉厚と形状、そして位置を精査して新設計4ストロークエンジンを搭載。水冷DOHC4バルブ249ccの単気筒は、若干後傾搭載されている。吸排気ポートが新設計され、特に吸気側は鋳造後に2度も特殊加工を施すことで滑らかなポート形状を実現。バルブリフト量もアップされて吸気効率を促進、燃焼状態が改善されて強力な駆動力発揮に貢献するという。また、大容量化されたクラッチは、旧型比で7%ほど外径寸法を拡大。軽い操作性も向上しつつ、半クラッチ等、ラフな操作に対しても高い信頼性を確保。

 他にも新採用の軽量セルフスターターは、その電源にリチウムイオンバッテリーを使用し、軽量化にも寄与している。またハンドル左側には2種のエンジンマップを切り替えできるモードスイッチを設置。路面の状況等に応じて走りやすい出力特性が選択可能になった。

 もう一つの注目点がスマートフォンを活用して、エンジンセッティングを可能とする新パワーチューナー。例えばスロットル開度に対するレスポンス具合をスマートフォンの画面で可視化して、好みの状態に切り替える事が可能。レースログや故障診断、データのバックアップ等、多彩な機能が加えられている。





YZ250Fに採用されている純正ハンドル。従来よりも肉厚の薄いアルミ製のテーパータイプで、写真手前側の新型の重量はわずか547g。

レース中の再始動も容易に行なえるセルスターターを新設。軽量小型モーターを採用し取付け位置もマスの集中化を徹底。

セル始動の電源は13.2V、2.4Ahを発揮するコンパクト軽量なリチウムイオンバッテリーを搭載。もちろん走行充電されるが、極端な性能低下等時の充電には別売オプションの専用チャージャーを使用する。後方は旧型に搭載されていた一般的な鉛バッテリー。

450と同形式となったYZ250Fのアルミセミダブルクレードルフレーム。バイラテラルビームと呼ばれるタイプで、ねじれ剛性が強化された。

ひとまわりサイズアップされたクラッチ。左側が新型。8枚のフリクションプレートと1.6mm厚クラッチプレートの組み合わせ。プッシュレバーのボトムにはローラーベアリングを使用し軽い操作感も達成している。

ポート形状を刷新したシリンダーヘッドと鍛造後に独自のメカニカル加工が施された新開発ピストン。13.8対1というハイコンプレッションを実現している。もちろんクランクも新たに設計し直されている。

ミッションの変速操作を担うシフトカム。下側が新型で、何と中空構造を採用。ここまで軽量化が徹底されているのには驚かされる。

沈み込み感の少ない乗り味を目指して新開発されたKYB製フロントフォーク。気液分離タイプの倒立式。減衰バルブには微量のオイル流にも敏感に対応するリーフスプリングが新設されている。

・YZ450FX

 旧モデル比3㎏の軽量化を実現。モトクロッサーのYZ450Fと同じバイラテラルビーム・フレームを採用。サスペンション取付け部の剛性をエンデューロモデル専用チューニングし、しなやかな剛性バランスを実現したと言う。φ24mmだったフロントフォークのシリンダー径もφ25mmに拡大し、減衰用オイル流量を増加している。リヤショックもコイルスプリングをより高い披露強度を持つタイプに変更し350gの軽量化が図られた。

 搭載エンジンは、基本的にYZ450Fと共通。ボア・ストロークが97×60.8 mmという超オーバースクエアの水冷DOHC4バルブ単気筒だが、吸気系と、燃料噴射制御、そして点火マップを専用チューニング。扱いやすさと高回転域での伸びの良さが追求された。

 またマスの集中化を図りながらも8.2ℓ容量(YZ450Fは6.2ℓ)の樹脂製ガソリンタンクを採用。コンパクトな燃料ポンプをマッチすることで、増量分のスペースが確保され、自由度の高いライディングポジションと軽快な操縦性は確保されている。この他新形状の樹脂製アンダーガードをマッチ。泥対策等、エンデューロマシンに必要なタフネスぶりも強化された。





改良点はこまかな部分が多く、その進化の度合いも大きい。エンデューロモデルYZ450FXのサイドスタンドだが、右側の方が新型用。100gの軽量化の他、取付け位置を高くしハネ上げも大きく改善。走行の邪魔にならない工夫が追求されている。

情報提供元:MotorFan
記事名:「 スマホで燃調をイジれるモデルも! ヤマハYZシリーズ10車種一挙